第12話

11.
92
2024/03/08 09:00




俺は、驚きを隠せなかった。


未だに信じられない。
こんなに明るい瑠久も、かつては俺と同じだったなんて。


そして、彼が話すうちに無意識に、




彼の姿が、Broooockに重なって見えた。




そんなわけないのに。


必死に否定しようとする頭。


混乱する俺を他所に、彼は自分の懐を漁る。


赤井瑠久
ねぇ、これ、見て!

彼が差し出したのは、彼の手のひらに収まるくらいの大きさの、古ぼけた猫のぬいぐるみ。


それを見た瞬間、俺の中の古い記憶が蘇る。

赤井瑠久
これね、お父さんとお母さんが昔作ってくれたんだ
赤井瑠久
お兄ちゃんはこれと似た犬のを持ってて、握ると、安心できるよって、昔言ってて……って、水季?
瑠久が、慌てたようにこちらを覗き込む。



俺の目からは、







涙が溢れていた。


赤井瑠久
水季?!水季!大丈夫?!

そう言って俺の肩を揺さぶる瑠久。





俺は、かまわずベッドから起きて、ズボンのポケットに手を突っ込む。


そこから出したものを、そのまま、瑠久に見せる。



瑠久が固まる。



俺の掌には瑠久のそれと似た雰囲気を感じさせる犬のぬいぐるみ。


赤井瑠久
え……嘘…?水……季…、それ…
世界に一対しかないそれは、自分たちの関係を俺らに理解させるのに十分すぎる代物だった。







長い間離れていた俺たちを結び続けていたその絆の糸を、俺はしっかりと握りしめた。
















夏も終わり、初秋に差し掛かった頃のその日、僕らは出会った。
風鈴(主)
閲覧ありがとうございました!
次回は明日の18:00にあとがきと
同時に公開予定です。
次回は後日談的な感じです!

お楽しみに!

プリ小説オーディオドラマ