俺は、驚きを隠せなかった。
未だに信じられない。
こんなに明るい瑠久も、かつては俺と同じだったなんて。
そして、彼が話すうちに無意識に、
彼の姿が、Broooockに重なって見えた。
そんなわけないのに。
必死に否定しようとする頭。
混乱する俺を他所に、彼は自分の懐を漁る。
彼が差し出したのは、彼の手のひらに収まるくらいの大きさの、古ぼけた猫のぬいぐるみ。
それを見た瞬間、俺の中の古い記憶が蘇る。
瑠久が、慌てたようにこちらを覗き込む。
俺の目からは、
涙が溢れていた。
そう言って俺の肩を揺さぶる瑠久。
俺は、かまわずベッドから起きて、ズボンのポケットに手を突っ込む。
そこから出したものを、そのまま、瑠久に見せる。
瑠久が固まる。
俺の掌には瑠久のそれと似た雰囲気を感じさせる犬のぬいぐるみ。
世界に一対しかないそれは、自分たちの関係を俺らに理解させるのに十分すぎる代物だった。
長い間離れていた俺たちを結び続けていたその絆の糸を、俺はしっかりと握りしめた。
夏も終わり、初秋に差し掛かった頃のその日、僕らは出会った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!