⚠️9.の続きです。引き続き重ためです。
養親はね、とっても優しかったの。
だけど、少しだけ、本当の家族との記憶があるせいで。
少ししかないせいで。
ずっと、それに縋ってた。
どうせならいっそ、本当の家族の記憶なんか、無ければ。
何度もそう思った。
だけど、その度に、昔の記憶が。
家族との幸せな記憶が。
消しちゃダメだ。って
忘れちゃダメだ。って
言ってくるんだ。
忘れるべきか、忘れないべきか。
どっちが正しいかわかんなくて、昔はずっと塞ぎ込んでた。
そんな僕に目をつけた奴らがいたんだ。
こいつはいじめやすそうって。
だから、低学年の頃とかはずっといじめられてた。
僕は自分が悪いとは思わなかったけど、否定されることは辛かった。
誰かに相談したくて、でも怖くて誰にも言えなくて、僕は益々暗くなった。
でも、そんな僕を助けてくれた子がいた。
同じクラスで、僕の唯一の話友達だった子。
その子が気づいてくれたおかげで、僕は相談できた。
初めて救われた時、思ったの。
僕も同じことをしたいって。
ひどいことをされても相談できない子を見つけて、助けたいって。
いじめられ始めたあとの水季はね、あの頃の僕と同じ目をしてた。
自分を否定され続けて、誰かに話したくて、でも怖くて……そんな目。
ずっと、助けたかった。
だから………
おそくなってごめんね、水季。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!