⚠️暴言等の要素があります。ご注意ください。
皆の予定を合わせるのは思いのほか大変で、結局、全員の予定が合ったのは、夏休みの終盤だった。
最初は、かなり先だなと思っていたその日も、宿題をやって、家でゴロゴロして、時々瑠久と会って……そんなことを繰り返している間に、すぐに来てしまった。
当日は、遅れてはいけないと思い、少し余裕を持って家を出る。
もうすぐ目的地に着く。
もう既に集まっていたであろう友達の、後ろ姿が見える。
数人で、談笑しているようで、まだ、俺には気づいていないみたい。
その中に、瑠久はいなかった。
俺は彼が時間にルーズだというのを、この夏休みで思い知った。
なので、特に気にしなかった。
どうせなら、後ろから驚かしてやろうと、彼らの背後に忍び寄る。
その時、彼らの会話が聞こえてきた。
信じたくない。
聞き間違えようのない声。
つい先程まで、友人だと思っていた声。
誰にも気づかれない内に、そっと引き返す。
姿が見えなくなったら、全力で家まで走る。
もう何も考えたくない。
結局俺は、誰にも愛されてなかったんだな。
家に帰ると、部屋に直行、ベットに突っ伏す。
養父母は働きに出ているため、俺の行いを咎める人なんて、誰もいなかった。
静かに、声を押し殺して泣く。
俺のポケットの中で震える電話。
開くと、画面には
「瑠久」
の文字。
そっと電話を切り、
と、メッセージを送る。
そんな彼の返信を確認し、スマホの電源を切る。
ここ最近で、俺は変われたのかなって思ってた。
皆と、仲良くなれたって思ってた。
けど、違った。
皆が好きだったのは瑠久だけで、なぜか瑠久に好かれてる俺のことを、疎ましくさえ思っていたんだ。
……………………もう……
誰も信じらんないや
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。