第78話

【番外編】闇がまだ青かった頃
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2018/05/29 21:24
制服が重い。

質素なスカートを成る可く伸ばし乍、
早朝の陽の光を浴びる。
あなた

お早う御座いますー!

.
.
ああ、お早う。今日も早いな。
あなた

学生へのいじめですよね!まだ寝よう!布団が私を離して呉れないの…っ

.
.
いつも通りだな。
あなた

反応…!淡白…!

行ってらっしゃい、との言葉に、行ってきます!と返す。


あの人の名前は知らない。
少し前から、私の通学路にある少し古びた建物の掃除をする様になった人。


仄暗い噂もあったその建物は、今では見違えるほど綺麗に!

…とまではいかないが、あの男の人の朝の掃除はご近所さんにも好評らしい。


かく言う私も、わざわざ少し早めに家を出るのは彼と話す為でもあったりする。
.
.
…あ。おい、スカートに何か付いてるぞ
あなた

え?

後ろからの声に振り返る。

ちょいちょい、と指さす動作が可愛いよ、おじさん!現役学生の私よりきっと可愛いね!
あなた

葉っぱですね!さっきショートカットしたので!

.
.
一体何処を通ったら…
あなた

真剣に考え込まないで下さい!?

家族を失い、一人ぼっちになった私を、親族の方は引き取って呉れたけれど。

家はまだ、余所者感が半端なくて、逃げる様に街に出ることも多い。


そんな時に、この人に出会った。
温かくて、素敵で、ふわふわしてて。
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.
まァ、気を付けて行け
あなた

お兄さんもですよー!おばちゃんアタックにお気を付けを!

挨拶とプラス一言二言の関係だけれど、其れが心地良い。



















あなた

お早う御座い…ま、す?

でも、ある日から突然会えなくなった。

仕事が終わったのかもしれない。
放っておいたら、この建物はまた汚くなると思うけれど。

寂しかったけれど、いつまでも彼に頼ることも出来ない!


今度あった時、凄いだろッて自慢出来るように頑張らなくちゃなのです!


男の人のいなくなったその建物は、何だか…泣いてるように見えて。
あなた

大丈夫ですよ!きっとまた掃除しに来て下さいますから!一緒に待ちましょうね!

誰にでもなく、声を掛けた。
























同時刻。


一人の男が、巨大かつ凶悪な組織から姿を消した。

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