第3話

幼なじみ
139
2018/03/31 21:50
ピーンポーン

翔の家のチャイムを鳴らす。

今日は土曜日。
部活が終わって帰ってきてから、私は翔と久しぶりに会いたくて、私の家と隣同士の、翔の家の前に立っている。

しばらくして、翔のお母さんが出てきた。
翔の母
あら、瑠奈ちゃん!
久しぶり~!
翔、今出かけてるの。
上がって待っててねっ!
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
あ、ありがとうございます!
お邪魔します!
隣の家に住んでいるというのに、会うのは本当に久しぶりだ。

翔のお母さんの明るくて元気な感じも、懐かしいなぁ。
翔の母
あ、翔の部屋入ってていいと思うから、どうぞ入って!
なんてったって瑠奈ちゃんは、翔の幼なじみなんだから~♡
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
じゃあ、失礼しますね!笑
お言葉に甘えて、私は翔の部屋に入った。

私が翔の部屋に勝手に入るなんて、よくあること。

とは言っても、もう何ヶ月も翔ん家来てなかったなぁ。
懐かしい。
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
ふんふふ~ん………♪
私は、最近聴いている、わんわんさんが【歌ってみた】で出していたFIGHTを、口ずさんだ。
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
悲しい時は泣いていいんだよ♪
本当に、いい曲。
私の大好きな曲。

この曲を聴くと、悲しいことなんてすぐに忘れられる。

私をそのまま、優しく包み込んでくれる曲。

そして、わんわんさんの歌声が、私はとても好きだ。

すっかりわんわんさんにハマった私は、今日は、翔にわんわんさんの話をたくさんしよう!と張り切っている。
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
ふんふふ~ん………♪
中島 翔(なかじま かける)
よぉ瑠奈!
久しぶりだな!
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
あっ、翔、久しぶり!
翔は、前と全然変わってない。

ちょっとバカだけど、明るい性格。
中島 翔(なかじま かける)
どーした?
急に。
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
あ、いや、たまには会うのもいいかなって。
話したいこともいろいろあるし!
中島 翔(なかじま かける)
そーか!
じゃあ、いろいろ話そーぜ!
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
うん!
そうだった。
翔とは、こんなふうに、気を使わずに話ができるんだ。

だから、気楽で、楽しい。

親友とはちょっと違うかもしれないけど、そんなようなもんだよね。きっと。
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
あ、私さ、入学してすぐ、付き合い始めたじゃん?
あの、前紹介した、直樹っていう…
中島 翔(なかじま かける)
あーうん、紹介されたわ。
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
なんだけど、その…

振られちゃった!笑
中島 翔(なかじま かける)
え、
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
あっ、でも、全然大丈夫!
私は精一杯に笑顔を作る。
中島 翔(なかじま かける)
そっかぁ。 
残念だったな。
でも、まぁ、瑠奈のことだし、またイケメン見つけた~とか、言い出すんだろ?笑
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
あははっ、そうかも!
私、イケメン好きだしね!
そういう翔だって、女好きなくせに~!笑
中島 翔(なかじま かける)
そうですけど~何か~?笑
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
あはっ、相変わらずだねっ!笑
やっぱり楽しい。
翔といると、ありのままの自分を出せるから、疲れないし、いっぱい笑って、今までの疲れも吹っ飛んじゃう。
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
あっ、そうだ!
翔、わんわんさんって知ってる?
歌ってみた動画出してる人なんだけど…
中島 翔(なかじま かける)
……んー、んーっと?
わんわんさん…うーん、知らねーな。
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
そっかぁ。
でも、私最近その人にすごいハマってるんだげど、歌がめっちゃいいんだ!
中島 翔(なかじま かける)
へー、そーなんだ!
じゃあ、俺も後で聴いてみるわ!
櫻井 瑠奈(さくらい るな)
うん!ぜひぜひ!
私は、好きなことについて友達と話す機会があまりなかったので、わんわんさんのことについて翔と共有できたのが、とても嬉しい。
翔が新しく買ったゲームを見せてもらったり、お互いに、幼かった頃と同じようなことで盛り上がった。


瑠奈が家に帰った後、翔は考えた。

なんか瑠奈、やけに明るくなかったか?

面白いところで笑うのは、まぁ普通だけど、

直樹くん、だっけ?
めっちゃ好きだったみたいだし。

あんなに明るいのはおかしいよな。
強がってるんだろうな、瑠奈も。
その頃瑠奈は、家で考えていた。

翔と久しぶりに会えて良かったなぁ。

楽しかったし、嫌なことも忘れてられた。



でも、1人になると…

やっぱり浮かんできてしまう。
直樹との記憶達が。

せっかく翔と会って明るくなれたのに…

忘れたと思っても、すぐに戻ってくる記憶。


記憶喪失…なりたいなぁ。

記憶喪失になれれば、どんなに楽なんだろう。

また、思ってしまっている。

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