ピーンポーン
翔の家のチャイムを鳴らす。
今日は土曜日。
部活が終わって帰ってきてから、私は翔と久しぶりに会いたくて、私の家と隣同士の、翔の家の前に立っている。
しばらくして、翔のお母さんが出てきた。
隣の家に住んでいるというのに、会うのは本当に久しぶりだ。
翔のお母さんの明るくて元気な感じも、懐かしいなぁ。
お言葉に甘えて、私は翔の部屋に入った。
私が翔の部屋に勝手に入るなんて、よくあること。
とは言っても、もう何ヶ月も翔ん家来てなかったなぁ。
懐かしい。
私は、最近聴いている、わんわんさんが【歌ってみた】で出していたFIGHTを、口ずさんだ。
本当に、いい曲。
私の大好きな曲。
この曲を聴くと、悲しいことなんてすぐに忘れられる。
私をそのまま、優しく包み込んでくれる曲。
そして、わんわんさんの歌声が、私はとても好きだ。
すっかりわんわんさんにハマった私は、今日は、翔にわんわんさんの話をたくさんしよう!と張り切っている。
翔は、前と全然変わってない。
ちょっとバカだけど、明るい性格。
そうだった。
翔とは、こんなふうに、気を使わずに話ができるんだ。
だから、気楽で、楽しい。
親友とはちょっと違うかもしれないけど、そんなようなもんだよね。きっと。
私は精一杯に笑顔を作る。
やっぱり楽しい。
翔といると、ありのままの自分を出せるから、疲れないし、いっぱい笑って、今までの疲れも吹っ飛んじゃう。
私は、好きなことについて友達と話す機会があまりなかったので、わんわんさんのことについて翔と共有できたのが、とても嬉しい。
翔が新しく買ったゲームを見せてもらったり、お互いに、幼かった頃と同じようなことで盛り上がった。
瑠奈が家に帰った後、翔は考えた。
なんか瑠奈、やけに明るくなかったか?
面白いところで笑うのは、まぁ普通だけど、
直樹くん、だっけ?
めっちゃ好きだったみたいだし。
あんなに明るいのはおかしいよな。
強がってるんだろうな、瑠奈も。
その頃瑠奈は、家で考えていた。
翔と久しぶりに会えて良かったなぁ。
楽しかったし、嫌なことも忘れてられた。
でも、1人になると…
やっぱり浮かんできてしまう。
直樹との記憶達が。
せっかく翔と会って明るくなれたのに…
忘れたと思っても、すぐに戻ってくる記憶。
記憶喪失…なりたいなぁ。
記憶喪失になれれば、どんなに楽なんだろう。
また、思ってしまっている。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。