殺人現場なんて言うのは全然狂気的なものではなくて。
鮮やかな赤色が飛び散る訳でもなく、かといって赤黒い液体が散乱するわけでもない。
ただ、濁った体液がアスファルトに染みる。
どれだけ慕われている人でも、どれだけ好きだった人でも、見せ場なんか当然訪れずに人知れず死んでいく。
事切れる、だの人生に終止符を打つ、だの、あくまでその表現が似合うのは架空の話。実際、死ぬという現象は死ぬという言葉でしか表すことが出来ないのだろうと悟り、プライドだけ肥大化する。
「強くいろよ」なんて頭をなけなしの力で叩く号泣イベントはない。息を引き取る寸前まで、死に抗い続けて、自分が死ぬことを信じることが出来ないまま、死んだことにすら気付かず今も足掻いているかのよう。
戸籍から1つ名前がなくなる。街の掲示板の張り紙も変えられた。
俺は、父親があの組織に殺されたという事実だけしか知らない。
遺体も見るに堪えないものだと、面会はなかった。
親戚の訃報が届いた時も、知らせの時点で感情的になる事はなかった。でも、その遺体に目を合わせた瞬間に、事実が脳裏を巡って、涙を誘い出す。
だから俺は父親を亡くしたことに未だ悲しみを感じていない。
どこか常に、後ろめたさを感じている。何かしなくちゃの呪縛。向き合わないといけないのに、向き合うことすらもできない。その大きな違和感は、ぼやけていつの日かの思い出に被さる。
何の変哲もない自家用車に2人揺られる。
“同い年だし!” なんて言われたけど、
この剣持刀也も実はそんなに叶さんに信頼されていないんじゃないかなあ、なんて思ってみたり。
会話も特になく、3駅位跨いだ繁華街の裏に下ろされる。遠くからでも見られる大きなビル。都市の騒がしさに掻き乱されて、冷静にその最上階は焦っているように思えた。
KEEP OUTと書かれるテープを潜る。
なんか偉い人にでもなった気分。
☆100⤴︎ ありがとうございます😀
これからも末永くよろしくお願いします












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。