翌日の土曜日。――デート前日。
午前練を終えていつも通りファリマへ行き、綾斗さんと話す。今日は店員さんが少なくて休憩は取れないらしく、お客さんがいない間だけレジのところで話すことになった。
なんて言うけど、ここは近くにスーパーがあるのであまり人が来なくて、ほぼずっと話してる状態。嬉しいけど、潰れちゃわないか心配だ。
「じゃあ、映画でも行こうか」
「うん!何観る?」
「んー……僕はホラー映画とか好きだけど、女の子は苦手だよね」
「う、ちょっ……と無理かな」
「あはは」
楽しそうに綾斗さんが笑う。
この一週間で知れたことは、よく笑う人だってことと。
「でも僕、ホラー以外全然観ないんだよね。だから正直他のジャンルは考えられないっていうか……どうしよう、ホラー観れる?」
「えっ、あ、が、がんば……ぅ、でもやっぱり最後まで観れる自信ない……。ごめん……」
しゅんとすると、綾斗さんが抑え切れないという風に吹き出した。
……またからかった!!
「もー、綾斗さん!」
「ごめん、落ち込むあなたちゃんが可愛くて」
このように――Sっ気のある人だってことだ。
あと、すぐ「可愛い」って言う。綾斗さんは特に意識してないのかもしれないけど、私はいつもドキドキさせられている。
年上の余裕ってやつ?悔しい……。
その時、来客メロディが鳴って、私はレジから離れた。
時間は……もうちょっと大丈夫かな。今来た人がいなくなって、もう一回綾斗さんと話したら帰ろう。
そう決めて、適当に商品棚の物を眺めながら通路をのんびり歩く。
――不意に、右手首をがしっと掴まれた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。