オバケの人達は小道具を使ったり簡単なメイクをしたり、準備完了。
コースはU字型になっていて、私が担当するポジションはちょうど曲がり道のところ。
つまり、一番遠いとこ。
もーヤダ…。
「まじこぇーよっ」
「大丈夫ですってー、オバケって言ってもバスケ部の誰かなんすからーっ」
道の方から声が聞こえてくる。
お、そろそろ…
あ、見えた。
町田先輩と魁くんだ。
佐々木魁(ささきかい)は同級生。
去年、あんまり驚いてくれなかったんだよね〜…。
私はばれないように二人の背後に回る。
「〜♪」
ポケットにしまったウォークマンから不気味な音楽を大音量で流しつつ、徐々に近づいていく。
ザッザッとあえて足音を立てながら。
「待って後ろから音する。」
「え?」
先輩が振り向くより先に、二人の肩に手を置く。
「ひぃぃぃぃぃ!?!?」
その瞬間、町田先輩が走って逃げ出した。
「あ、ちょ、先輩!?」
そのあとを魁くんが追う。
…。
え、早っ…。
てか今私の顔二人とも見てないよね!?
肩叩いただけだよ!?
まぁ、驚いてくれたんなら良かったんだけどさ…。
「はぁ…」
ちょっと期待外れなリアクションにガッカリしながらまた元いた茂みに戻る。
これがあと10組くらい続くんだよね…
長い。
「わぁぁぁぁっ!!!」
「きゃーっ!!!」
ふふっ。
よしっ。
真白ちゃんと長月くんの後ろ姿を見送って、また戻る。
もうこれ何組目?
数えるのを忘れてたからどのペアが最後なのか分からない。
みんないいなぁ…。
オバケより誰かと二人で回りたいなぁ。
あ、そーいえば、さっき松尾先輩と弥生先輩、ペアだった。
公認カップルは一緒に回れるんだな…。
いいなぁ。
そうやって考えた時にふと浮かぶのは秀也くんの顔だ。
「ふふっ」
それがなんだか嬉しくて、ニヤけてしまう。
来年は…ペアになりたいな。
あ、来年とは言わず、次の合宿で!
私がちゃんと告白出来たら、ね。
その御褒美に、一緒に肝試し回ってね。
「あれー…」
それにしても、次のペア遅い。
蛍光塗料で文字盤が光る腕時計を確認すると、前のペアが行ってからもう5分経ってる。
今までは3分に1組ペースで来てたのに…。
あ、もしかして終わった?
でも、ただ遅れてるだけの可能性もある。
だから下手に動けない。
ーガサッ
えっ。
不気味すぎる。
さっきも風があって、草木がザワザワ言ってて、ほんとに怖かった。
一人でこんなくらいとこ、辛い。
よく頑張った、って自分を褒めたい。
ーガサガサッッ
!?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。