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私たちカップルといえば。
LINEをすれば
『淳太くん』
『ちょっとー?』
『おーい』
『寝てるの?』
「うるさい」
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『すき』
『だいすきだよ淳太くん』
『聞いてますー?』
『淳太くーん!』
「うるさいで」
…と、まぁこんな感じ。
なのに、さっき私のスマホに入ってきた通知には、「淳太くん:すき」とあった。
一体何があったの。
いつも言わないじゃない、そんなこと。
勘違いかもしれないと思って、恐る恐る淳太くんとのトーク画面を開く。
そこには「すき」の文字。
夢じゃないんだ、これ。
それに次いで「だいすき」ときた。
おかしい。
普通のカップルなら嬉しいものだと思う。
けれど、あの淳太くんからだと考えると何かおかしい。
どう返そうか悩んでいると、また左の吹き出しが増えた。
「家行く」
の三文字。
彼が今どこにいるのかも、誰といるのかも知らない。
そんな中、私は鏡の前にいる。
軽くだけしていたメイクを直して、髪も整える。
少し離れて、全身のバランスと服をチェック。
彼に少しでも可愛いって思われるように。
『大丈夫かな、』
そうこうしてるうちにチャイムが鳴り、インターホンに淳太くんが映っていた。
『はーい!』
インターホンへ一方的にそう告げて玄関へ走った。
ドアを開けると顔を赤らめた淳太くんが、濵田さんに支えられて立っていた。
『あれ、濵田さん?ですよね?』
「覚えてくれとった?良かった〜」
『どうしたんですか、この状況』
「淳太があなたちゃんの家に連れてけって聞かんくて、」
眉を下げて困ったように笑う。
『ごめんなさい、ありがとうございます…!』
「ええねんええねん、淳太よろしくな?」
『はい!ありがとうございましたっ』
「へへっ、ほなおやすみー」
『気をつけて!おやすみなさい』
淳太くんを受け取り、手を振る濵田さんにペコっと頭を下げてドアを閉めた。
『淳太くん?靴脱いで?』
「えぇ、あなたが脱がせて?」
『もう、はやく!』
「ふふっ、ありがとう」
ゆったりとした話し方と、とろんとした瞳。
肩に手を置かせて靴を脱がせる。
くふふ、と頭の上から声が漏れている。
『よし、行くよ?』
「はぁい」
ソファーまで運ぶと私の手をぎゅうぎゅうと握っている。
視線は手にあって、私を見ては、むふふ。と笑う。
『どうしたの?』
「んー?んふふ、」
『なに?』
「だいっすきやなぁって」
左手で口を覆う。
にこにこと目尻のしわを深めている。
「なぁなぁ」
『ん?』
「こんなんいや?こんなんしたいってシラフの時にも思ってるで?俺は、」
首をこてんと傾げてそう呟く。
赤らんだ頬と少し潤んだ瞳が、彼が酔っていることを物語っていた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。