唇が離されたときにはすでに、“そういう”気分にさせられてしまっていた。
「…侑介(ユウスケ)」
車の中で教えて貰った名前を囁いてみると、男はふっと笑って私の首元に顔を埋めた。
ダウンライトをぼんやりと眺めていると、何故か廉の姿が浮かぶ。
こんな自分を、彼は軽蔑するだろうか。
…もう、関係のない話だけど。
「…ん、や…ぁ…ッ」
首に優しく口づけられ、擽ったさに思わず身じろいだ。
薄らと目を開けると、煩わしそうにブラウスのボタンを外していく姿が見え、羞恥心が芽生えた。
「…ぼんやりしてんなよ」
「え…?」
「ちゃんと、こっちに集中してろ」
「あッ…!待って…」
肌着の裾から這入ってきた骨ばった手に、カッと顔が熱くなる。
涼しい顔をした男は「待たない」とだけ言って、下着の縁を指で持ち上げた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。