第6話

day 5
56
2017/12/04 22:26 更新
11月中旬。

やりたいことリストの一つ目をやりにきた。

「ディズニーーーッ!!!」

「おい。落ち着け。」

乃愛流は入場ゲートを通って中へ入るなり、思いっきり叫んだ。
はしゃいでいる乃愛流を見て、ルシフェルはげんなりしている。
乃愛流はやりたいことリストを書いた後、退職届も書いて後日会社に提出した。
理由は正直に書くことができず、実家に戻るためと書いた。
同僚や先輩、後輩、いろんな人にお疲れ様とか寂しくなるなどと声をかけられたが、部長からは特に心配された。
異動の件で悩んだ末の決断だと思われていたのだ。
こんなにたくさんの人が気にかけてくれて、いい職場だったと胸が熱くなった。

残された時間を充分に楽しんで過ごせるくらいの退職金をもらい、やりたいことの一つ目を達成するため、ディズニーランドへやって来た。
「はしゃぎすぎだ。もう少し静かにできないのか。」

「無理。」

乃愛流はげんなりしているルシフェルに満面の笑みで答えた。

「あとで疲れたなどと言っても、俺は何もしないからな。」

「いいよ。自分でちゃんと歩くから。それより、ほら。これ。」

乃愛流はルシフェルをぐいぐい引っ張って、帽子やカチューシャが売られているワゴンに来た。
ルシフェルにミッキーの帽子をかぶせようとするが、頭に届かない。

「…ルイ、身長いくつ?」

「180くらいだ。」

「…ちょっとしゃがんで。」

乃愛流はルシフェルを人前ではルイと呼ぶことにした。
しゃがんだルシフェルの頭に帽子をかぶせる。

「ふふっ、いいね。」

「…今、笑っただろう。」

「思ったより似合うよ。私、このカチューシャにしようかな。」

乃愛流はピンクのリボンのカチューシャを手に取った。
ルシフェルはそれを見て、赤のリボンのカチューシャを差し出す。

「それなら、この色の方が似合う。」

「じゃあ、そっちにする。」

会計を済ませて、さっそく身につけた。
まっすぐ進んで行くと、シンデレラ城が見えた。

「ルイ!写真撮ろう!」

乃愛流はかばんから自撮り棒を取り出して、スマホをセットし、ルシフェルを引き寄せた。

「ほら、笑って。」

乃愛流にせっつかれたルシフェルは、仕方なく笑顔を作った。
カシャッと音が鳴る。
撮った写真を確認した乃愛流は、それをルシフェルにも見せた。

「見て、ルイ!きれいに撮れた!」

乃愛流の無邪気な笑顔につられて、ルシフェルも自然と笑顔になる。
そこへ、キャストが近づいてきて声をかけられた。

「写真お撮りしましょうか?」

「お願いします!」

乃愛流はキャストにスマホを渡して、ルシフェルと並んだ。

「どうぞ。」

「ありがとうございます。」

スマホを受け取って、写真を見る。

「ルイの笑顔がさっきより自然でいい。」

「それは良かった。」

乃愛流がルシフェルを見ると、ルシフェルは照れ隠しに片手で口もとを覆った。
少し赤くなっているルシフェルを見て、乃愛流は嬉しそうに笑った。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、バスに乗る時間が近づいていた。

「そろそろ出るぞ。バスに間に合わなくなる。」

「もう?まだ遊び足りない。」

不満そうな顔をする乃愛流を見て、ルシフェルは呆れ顔になる。

「何を言ってる。充分はしゃいだだろ。ほら、帰るぞ。」

ルシフェルに手を引かれて、2人はゲートを出た。

「…また来たいな。」

乃愛流のつぶやきが聞こえたのか、ルシフェルは乃愛流に一瞬視線を向ける。

「また来ればいい。仕方ないから、もう一度くらい付き合ってやる。」

予想もしていなかったルシフェルの答えに、乃愛流は目を見張った。

「…本当?」

「一度だけだからな。」

「じゃあ、絶対また来ようね。」

「ああ。」

乃愛流はルシフェルの背中を見ながら、嬉しそうに微笑んだ。
絶対にまた来ることができると信じていた。

プリ小説オーディオドラマ