第9話

soupⅦ
95
2017/12/23 01:46
【黒髪の館>>3-4】




俺はもう、逃げることが許されない。



そう悟ったところでまた足と手が動き出して
先程のドアを勢いよく開け始めた。
その勢いに吹っ飛ばされそうなくらいだったが、なんとか堪えて部屋に入る。

部屋には真ん中に棺桶らしいものがあるだけだった。

側面は木材に金粉を塗った様なもので、
ところどころ汚れていて、金の姿がなかった。


上の扉はガラス張りで中が透けていた。
そこから中を覗くとどうやら人が入っているらしい。
その死体の周りには赤い薔薇が敷き詰められ、
その死体の手には黒い髪の毛の束を持っている。

これがあの赤い薔薇か。
なんとも言えない美しさに言葉を失う。




…まさかと思い、わざと目を向けなかったが見ない訳にはいかない。
この死体の顔を。

___。
やはりそうだ。これは間違いなく友人の顔だ。
何故…。


大体誘われた時からおかしいと思っていたんだ。
普段は俺が花にしか興味がないからって
わざわざ廃墟に行こうだなんて誘いやしない。
なのに今回はどうしてもって土下座までしやがった。
その時から薄々違和感を感じていたんだ。



きっと彼には何かがある。

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