怖くなってきた…
何が起こってるの…?
無性に怖くなって、さっき落ちてきた階段目掛けて走っていった。
さかっちの声も耳に入らない。
知らない空間に置いてかれたような寂しさや恐怖に襲われ、ただただ怖い。
事故が起こった階段に着くが、特に変わった様子なんてない。
気を落ち着かせるため、階段の端の方に腰掛けた。
窓からくる優しい風と光が眠気を誘う。
…そういえば、大輝のことがあってから寝てなかったなぁ。
睡魔に勝てずうとうとしていると…
「…おい!大丈夫か!?」
この声は…
血相を変えて走ってきたようだった。
どうしてだろ…
怒られてるのに…嬉しい。
この感情は…幼馴染としての硬い友情から伝わる温かみ? だよね!
───あたしはバカだから…この感情の名前を知らない。
もっと早く気づいてれば…。
この先、何度も後悔することになる。
わざとらしく欠伸をかく。
…今の演技は下手だったかも。
どちらともなく、顔を見合わせ笑いあった。
やっぱ、大輝には笑顔が似合うよ。
ここからいなくなるなんて、考えられない。
やっぱり夢なんじゃないかな…って思うけど、夢ではないみたい。
頬を引っ張ってみたら…痛かったからね。
痛みからかな…?
…大粒の涙がこぼれ落ちた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!