その時、誰かが入ってきた。
くるりと後ろを振り返ると、城にいた兵士と、帽子屋の老人がいた。
「こいつが、どうしてもと言うんでな。わしはは反対したんじゃぞ。」
老人はぶつぶつと文句を言うように告げた。
「なんで、あなたがここに?」
私は兵士に尋ねたが、代わりに、「時間」が答えた。
「わしは、もともとはひとつの空間のような感じで存在していたんじゃが、それでは危ないと、君のお父さんが、この帽子屋のところに移したんじゃよ。」
「じゃあ、扉にあったあの時計のマークは…」
「君のお父さんが彫ったものだ。目印にとな。ちなみに、そこの兵士は、帽子屋の孫じゃよ。」
「孫!?」
似ても似つかない2つの顔を見比べながら私は叫んだ。
「なんだよ、悪いか。」
兵士はイラつきながら喋った。
怒った時の目つきだけは似ているようだ。
「昔はよくこの中に遊びに来たもんじゃ。」
「時間」は懐かしそうに喋った。
「でも、なんでここに来たんですか?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。