私は寮に向かいながら、考え事をしていた。
((後で荷物はもう一度取りに行ってみよう。…あ、でも、少し遅い時間になるかも。))
それに気づいた瞬間、周りを見渡す。
かなり暗い。もうすぐ夏になるというのに。
とぼとぼと歩き続けていると、寮に着いた。
階段を上がりながら、自分の首に鍵の通った紐がかかっているのを確認する。
生徒会が毎日用意しているという、窓際の花を見てから、部屋に続く廊下にさしかかった時だった。
…私が今1番会いたがっていた人が扉の横の壁にもたれて立っていた。
相変わらず、制服の上から黒パーカーを着用していて、生徒会長にふさわしくない身なりだ。
そして、無口だ。昨日はあんなに話したのに。
私が駆け寄ると、レオはこちらに目を合わさず、私に黙ってポケットから白い封筒を取り出す。
私がレオに「今、開けていいの?」と聞いたつもりなのだが、全くの無反応なので、私も黙って開けることにした。
手紙の上部に書かれた綺麗な字列を見つめる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!