それから、愛菜が働けるようになる前に松田、諸伏、伊達が次々と殉職した。
愛菜は相変わらず心配そうな顔をしていたけど、それでも私は警察官を辞めなかった。
ずっと、逃げていた。
ピピッピピッピピッ
朝。
目覚まし時計の音で目を覚ます。
なのに、身体が動かない。
起き上がれない。
仕事があるのに……
まるで金縛りにあったかのようだ。
とりあえず、恵に電話しよう……
恵が来るのを待っている間も、どうにかして動こうとしていた。
でも、仕事に行こうとすればするほど、動かなかった。
ピーンポーン
チャイムが鳴った。
鍵を開けなきゃ。
そう思った瞬間、さっきまでの頑なに動かなかった身体が嘘のようにすっと動いた。
恵に押されるように中に入った。
言われるがままにベットの上に座る。
私の発言がまずかったのか、眉間に皺を寄せながらずいっと顔をこっちに近づけた。
言いながら、ポロポロと涙がこぼれてきた。
恵は、ずっと黙って私の話を聞いてくれていた。
どうしたい?
そんなの決まってる。
愛菜のそばにいたい。
翌日、私は辞職届を出して、警察官を辞めた。
そして、米花町から、元々住んでいた場所に引っ越すことにした。
米花町をぶらぶらと歩いていると、『ポアロ』と書かれた看板が見えた。
茶髪のロングヘアの女子高生と、ストレートボブのカチューシャを付けた女子高生。
そこで掃除をしている店員らしき人と話している。
金髪で、褐色肌の。
3人とも振り返った。
そして、ポアロと大きく書かれたエプロンをつけた店員の目が大きく見開かれた。
安室?
それが降谷の偽名か。
ていうか人格変わりすぎでしょ
うわ、胡散臭。
めっちゃ笑顔じゃん。
萩原と諸伏を足して2で割ったらこんな感じかな?
偽名の方がいいかな……
降谷も、なんか正体隠してるっぽいし。
そうだった、偽名を名乗ったんだった。
反応が遅れてしまった。
中に入ると、がらんとしていた。
胡散臭い笑みを浮かべて、厨房らしきところにもどっていった。
降谷って、料理からっきしなんじゃ……?
大丈夫かな?
辞めた、と言ったとき、一瞬だけ降谷の動きが止まった。
わざと、降谷にも聞こえるくらいの声量で喋る。
いつの間にか、降谷が注文したものを全て持って来た。
まあ、聞こえるように言ったんだけど。
頬に手を当てると、指が涙で濡れた。
そう言うと、2人は顔を見合せ、席を立って私に抱きついてきた。
からになったコップの中の氷が、カランと音を立てた。
私は、幸せで満たされている。
ねぇ、萩原、私、案外やってけそうだよ。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。