第4話

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2026/03/14 06:25 更新
次の日の朝。

教室に入ると、いつも通りの景色が広がっていた。

騒がしい声。
机を動かす音。
笑い声。

その中で、私は自分の席に座る。

そして、自然と隣を見る。

スビンはまだ来ていなかった。

「珍しい」

思わず呟く。

いつもは私より早く来ていることが多いのに。

「なにが?」

後ろから声がして振り向くと、ボムギュだった。

「スビンまだ来てない」

「あー」

ボムギュは少しだけ笑う。

「寂しい?」

「違う」

即答すると、ボムギュはさらに笑った。

「はいはい」

その時、教室のドアが開く。

「おはよ」

落ち着いた声。

振り向くと、スビンが立っていた。

「おはよ」

私は何も考えずにそう返す。

スビンは席に座りながら言った。

「今日早いね」

「普通だよ」

「そう?」

鞄を机に置きながら、スビンが少し首を傾げる。

その仕草が、なぜか昨日より少しだけ気になった。

……たぶん、ボムギュのせいだ。

昨日言われた言葉が、頭の端に残っている。

“気づいてないの、たぶんお前だけ”

あれ、どういう意味だったんだろう。

考えていると、スビンが私を見た。

「どうした?」

「え?」

「さっきから静か」

「そんなことない」

慌ててそう言うと、スビンは少しだけ笑った。

「嘘」

「嘘じゃない」

そう言いながら、私は軽くスビンの腕を叩く。

いつも通りのツッコミ。

でも。

その瞬間、スビンの手が私の手首を軽く掴んだ。

「痛い」

「え?」

思わず顔を上げる。

スビンは少し困ったような顔で言った。

「今ちょっと強かった」

「え、ほんと?」

慌てて手を引く。

「ごめん」

そう言うと、スビンはすぐに首を振った。

「別に怒ってない」

「でも」

「大丈夫」

その声はいつも通り穏やかだった。

なのに、なぜか少しだけ距離を感じる。

気まずくなって、私は机に視線を落とす。

すると。

ぽん、と頭に軽く触れる感覚。

驚いて顔を上げると、スビンが前を向いたまま言った。

「気にしすぎ」

「……なにそれ」

「顔に出てる」

私は少しだけむっとして言う。

「誰のせいだと思ってるの」

「俺?」

「そう」

そう言うと、スビンは小さく笑った。

その時。

「はいはい」

横からボムギュが顔を出す。

「朝からなにしてんの」

「なにもしてない」

私が言うと、ボムギュはニヤッと笑った。

「ほんと?」

そして、スビンと私を交互に見て言う。

「まあいいけどさ」

少しだけ間を置いて。

「やっぱりお前ら変だよ」

「なにが」

「距離」

そう言われて、私は首を傾げる。

「普通でしょ」

するとボムギュは肩をすくめた。

「そう思ってるならいいけど」

そう言って自分の席に戻っていく。

私はもう一度スビンを見る。

「距離って?」

聞くと、スビンは少し考えてから言った。

「……別に」

「絶対なにか思ってる」

「思ってない」

そう言ってスビンは窓の外を見る。

その横顔を見て、私は少しだけ思う。

やっぱりよく分からない。

でも。

もし本当に“変”だとしても。

私はきっと、
この距離が嫌じゃない。

むしろ——

当たり前になっていた。

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