あなたの家へ移動中
あなたの家にて
口をへの字にし、手で埃をはらうかのようにする五条さん
ギシギシと床が軋むみ、音が鳴る。
蜘蛛の巣も張っており、まるでお化け屋敷のような雰囲気の中、慎重に奥へと進む。
ギィ…、と音を立て、開く扉。
どんな部屋かと五条さんと二人で扉から覗く。
現物を見ることで、霧がかかっていたような幼少期の記憶を、鮮明に思い出す。
懐かしいものがどんどん見つかり、気分が向上するのが、自分でもわかる。
小さな机の上に乗っていた、ひとつの写真。
そこには、私の両親であろう2人と、幼少期の私。だと思われる3人が写っていた。
写真をまじまじと見ていると、五条さんが言った。
ワクワクした気持ちが、何が出てくるのか、という少しの不安と恐怖心に変わる。
さっきの部屋を出て、再び軋む廊下を歩く。
2つ目の部屋を見つけ、入ってみる。
真ん中に置いてある、大きなダブルベットや、周りの家具を見るに、おそらく両親2人の部屋だと思った。
だが…、
乾いた血、ビリビリに裂けたベッド。床に落ちた小物。
一体何があったのだろう。だが、"何か"があり、恐らくそれが原因で2人は死んだ。ということだけは、嫌でも頭に浮かんできた。
密室だったこともあり、生臭い血の匂いが鼻につく。
こんな部屋になった当時のことを想像すると、とても胸が痛くなる
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。