カサカサの唇や潤いの無くなった手、そして少し傷んだ髪は僕が大事にしていたあなたの物じゃなくて、こんな風にしてしまったのが自分自身だと思うと猛烈に悔やまれる。
同時に取り返しのつかない失態を犯した過去の自分を殴り倒したいし、今からできることはなんだってやろうと縋り付く気持ちでいた。
ぷっくりとした誘うような唇と、
温かくてもちもちとした手、
艶々で僕の香りがする柔らかい髪
全部が僕のせいで奪われて、その身体は細く弱々しくなっている。
"栄養失調"
なんで気付かなかったんだ、、
休暇中に帰った時、少し痩せたかなとは思ったし、何か言いたげだったあなたにちゃんと耳を傾けるべきだった。
心を落ち着かせて、この現実にしっかり向き合おうと誓った。
返事をしなくていいから、少しだけーーー
僕の言葉を聴いてほしい。
その後は全部君の言う通りにすると約束するから。
「僕は悪魔だよ。
こんなに恐ろしいことをしたのに、まだ懲りずにあなたを離したくないと思ってる。
嘘をついたんだ、小さな嘘を。
でもその、"あなたを失いたくない"ことで産まれた嘘はどんどん自分を蝕んでいって、気が付いたら本当の自分の気持ちさえわからなくなってた。
嘘は大きくなって、やがて僕を飲み込んで、完全に捕らえられて抜け出せなくなってしまった。
それが苦しくて、あなたを手放したくなくて囲い込んだくせに、耐えられなくなると目の前から排除しようとして。
あなたで埋められない穴を他の人で埋めようとしたし、自分自身を試したことで他の人を傷つけた。
真っ白な天使のふりをして、あなたを縛り付けて、挙句傷つけて、こんな風に弱らせて、もう許されなくても仕方がないと思う。
それでもまだ、あなたを失いたくないんだ。
もう二度とこの手は離さないから、どうかーー
喉の奥に引っかかる言葉が上手く声にならなくて、思わずおかしな返事をした。
僕が伝えたかった言葉をそっくりそのままあなたの唇が形どって、か細くも綺麗な声がそれを教えてくれる。
"Let me love"
付け直していたピアスが揺れると、少しだけ穴が痛んだ気がした。
ここにあるよと気付かせるように刻印が叫んだんだ。
上手く言葉にならないままにもう一度あなたを腕の中に収めた。
苦しいかもしれないけど、強く。
細くなってしまった体を壊さないように、優しく。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!