泣くことが、少ない人間だったと思う。
いや、そもそも感情表現が上手くなかった。
だって、泣いても誰も助けてくれないから。
一人で泣いたあと、目が乾燥して、喉が渇いて。
ただ水分が消耗するだけの醜い行為に、
意味があるとは到底思えなくて。
泣いて眠っても、私一人でしかないことが、
どうしようもなく辛い気がして。
だから、
泣いている時に、背中をさすられるなんて。
泣いている時に、頭を撫でられるなんて。
知らなかった。
だから、きっとそれがさらに視界を滲ませた。
散々泣きわめいた後、涙も涸れてきて、
その上優しい顔でそう聞かれれば
また羞恥心で泣いてしまいたくなりそうだった。
は、恥ずかしすぎる ……
あれだけ怒って喚いて、その後今度は泣きわめくとか。
自分から見ても情緒不安定すぎて恥ずかしいむり。
そんな恥ずかしい状況の私に
トドメ刺そうとしてくるのはなんなの??
え? と言葉を返そうとした瞬間、
夜神君は「竜崎」と呼ぶと
竜崎さんに手首を掴まれて、
夜神君に制服の上のボタンをプチプチと外される。
え?? この状況で脱がされることある? え?
そう思っていると夜神君は
上の2段のボタンを外し終えた所で手を止め、
制服を軽く引っ張り、
私の首元と鎖骨があらわになる。
それ を見た夜神君の表情は歪み、
私は先程の行動の間違いを悟る。
さっぱり私に言わせようとしてる言葉が読めない。
謝罪? …… は、彼らの性格からして違いそうだし。
それは、私が一生で一度も言うはずがなかった言葉。
言う相手がいなかったから。
言っても何も変わらないから。
言ったって、また泣いてしまうだけだから。
言っても、許されるのかな。
こんな、汚い私が、言っても。
二人の会話に、なんだか懐かしさを覚えて
笑いがこぼれる。
ゆる、されるなら。
そう言った瞬間に、
また大好きな茶色と黒色が滲んだ。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!