日曜日、あの出来事が昨日だと言うのにすっかり打ち解けてお互い遠慮なく話せるような仲になった。
昨日の後味が悪かったので口直しならぬ気分直しということでゲームセンターに来て二人で対戦型の音ゲーをしている。
お互い気を使わない会話はとても気持ちがいい。
世の中みんなこんなだったらいいのに。
コンテニューするため財布を取り出そうとした時、遠くの方にクラスメイトが居るのに気がついた。
悲しいことに名前すら覚えられていなかったらしい。
いや、そんなことどうでもいい...いや良くないけども!!
少し遠いゲームセンターを選んだのだが珍しくそこにはクラスメイトが来ていた。
自分は別にいいが春川さんは音ゲーをやっているところを見られた時点でゲームオーバなのだろう。
クラスメイトがこちらに向かってこようとした瞬間反対側へ走り出す。
遅い足を頑張って走らせ必死についていく。
人気のない場所に着きしゃがみこんだ春川さんの表情は青ざめていた。
トラウマを思い出したのだろう。
私はただただ肩に手を置き、黙って一緒にいることしかできなかった。
翌日、いつも通りに学校につき教室に向かうと教室の扉の前でじっと佇んでいる春川さんの姿があった。
前に立ち扉を開ける。
それと同時に数人の視線が一気に刺さる。
...馴れない..
春川さんが来るのがいつもより遅いから待っていたのだろうか。
関係ないはずの自分まで怖くなってきて恐る恐る教室に一歩踏み出すと、
...あれ?
これは人を虐めるような態度じゃないぞ..?
あーあ..全然大丈夫じゃん。
高校生にもなったらその程度でいじめはおこらないか...
春川さんもあの様子だし私が一緒に遊びに行くことはなくなるかなー。
これが当たり前だったけど寂しいものだね。
そっとその場を立ち去ろうとした時急に腕を捕まれ、
.....友達付き合い..
また、中学の時のようにならないか、そんな不安があった。
でも...
一歩踏み出せそうな自分が居た。
縛られずに好きなことをできるようになった二人の少女は心の底から笑えていた。
Final stage
本音を弾いて偽って 𝓯𝓲𝓷
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。