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第52話

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2024/01/24 15:52
母親
もう行くの?良かったら何泊かしていっても、私は全然構わないんだけど…
灰谷(なまえ)
灰谷あなた
いえ。大丈夫です
これで断るのは何度目だろうか。若い女性が夜中一人で出歩くことを良しとしないようで、場地母だけでなく、場地にも留まれと言われた
無用な心配は必要ない。私は自他共に認める強さを持っているし、最悪弟たちの名前を言えばいい
灰谷(なまえ)
灰谷あなた
後日御礼をさせて頂きますので、今日の所はこれで失礼させてもらいます
母親
…気をつけてね?
場地圭介
場地圭介
なんかあったら言えよ!
私のこんな無愛想な対応に、彼らはこちらを心配する言葉を掛けてくれた
正直、あんな事件があった彼らの方が気をつけるべきで、何かがあったら言うべきなのだが…
灰谷(なまえ)
灰谷あなた
(優しい人たちだな)
そんな優しい人たちに見送られながら、私は暖かく居心地のいい場地家から退出した
…あんなに暖かい場所にいたからか、来る前はそんなに寒くなかったのに、今は身が縮こまるほど寒かった
灰谷(なまえ)
灰谷あなた
……あー、行くか
時刻はもうすぐ11時を回る頃。今から店に向かえば、裏方の作業を手伝えるだろう
そう思って立ち止まってしまった足を動かし、慣れ親しんだバイト先へと向かう
この通りは数回来たことがあるので、道に迷うこともなく見覚えのある場所にまで着いた
灰谷(なまえ)
灰谷あなた
あとちょっと…
…まるで頭に霞が掛かったかのように、頭が認識する前に体は真っ直ぐに目的地へ進む
灰谷(なまえ)
灰谷あなた
ぁ…
__嗚呼。そうだ
見覚えのあった場所、そこは、私たち姉弟の思い出の場所。弟たちが13歳少年院に行った日よりも少し前…
私がバイトに明け暮れ、二人を我慢させて泣かせてしまった日から1週間後。なんとか切り詰めて、二人を連れて遊びに来ていた、三人の遊び場
……私は何をやってるんだろう
バイトが忙しくても、二人の相手は欠かさなかったし、大切な日はまる一日一緒にいた
大切な弟だから、私が守らなきゃいけないと分かっていたのに、あんなにも守りたかった二人を、自分の手で傷つけた。傷つけてしまった
誰もいない薄暗い広場に、幼い頃の私たちが笑って遊んでいる姿を見てしまって、等々涙が溢れた
灰谷(なまえ)
灰谷あなた
……ごめんなさい
伝えるべき相手はこの場にいないのに、教会で懺悔するように何度も謝罪を口にした
この様子を誰かが見ていたら、通報ものだろうなと、少しだけ気が紛れて体が軽くなった
それと同時に軽快な音が懐から鳴った。その正体は携帯で、今から向かうはずだったバイト先の先輩からだった
それに何処か酷く安心してしまって、私は過去の美しく暖かい記憶から目を逸らすように、踵を返した

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