第78話

ピアーズ・ニヴァンス『守りたい理由』②
75
2025/07/06 16:47 更新







翌日。

感染の拡大は予想以上で、
避難予定だった拠点は壊滅。

代替ルートを進むBSAAの隊員たちは、
緊張を隠さず、それでも着実に前へと進んでいた。

あなたもまた、無言で歩く。

昨日より軽い荷物。

それだけで足取りはだいぶ違うはずなのに、
胸の中は不安と疲労で押しつぶされそうだった。




ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
…少し、休もう




背後から聞こえる静かな声。

振り返ると、ピアーズが少しだけ
息を切らしながら、周囲を確認していた。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
休憩、入れる。座ってていいぞ
あなた
え、でも…まだ進まないと…
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
皆も疲れてる。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
無理して倒れたら、もっと困る




それは、彼なりの“気づかい”だった。

皆のことを言いつつも、
彼の目はあなたを見ていた。



あなた
……ありがとう




木の根元に腰を下ろし、
あなたは小さくため息を吐く。

ピアーズも彼女の隣に静かに座った。




ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
…怖いか?
あなた
.....うん
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
だよな




それだけ言って、
彼は少し口元をゆるめる。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
でも、すごいと思うよ。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
こんな状況で、泣かないし、
笑って見せる。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
誰にも“助けて”って言わない
あなた
言えないだけ、だよ




ぽつりと落ちたその言葉に、
ピアーズが眉をひそめた。



あなた
英語が、ちゃんと話せたら…
あなた
もっと言えると思う。
あなた
怖い、とか、助けて、って
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
言葉がなくても、充分伝わってる。




あなたは驚いた顔で彼を見る。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
俺たちが気づけなかったのは、
君が我慢してたからだ。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
優しくて、強い人だと思った。




視線が合う。

けれど、それを長く保つことはできなかった。



あなた
…ピアーズさんは、すごいね。
あなた
みんなを守って、落ち着いてて。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
そんなことない。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
怖いさ、俺も




その静かな言葉に、
あなたは目を見開いた。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
だけど.....守りたいと
思う人がそばにいると、
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
不思議と、動ける




誰のことを指しているのか、言わなかった。

けれど、その視線の先にいるのは、
あなただけだった。



ーー



夜、仮設のテントで眠る時間になった。

隊員たちは交代で見張りに立ち、
残る者はわずかな時間で体を休める。

あなたはテントの隅にひざを抱えて
眠ろうとしていたが、
まぶたがなかなか閉じられない。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
…起きてるか?




その声に振り向くと、
ピアーズが水のボトルを持って立っていた。



あなた
…うん。
あなた
寝ようと思ったけど、
ちょっとだけ…
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
俺も同じだ




彼は遠慮がちに腰を下ろし、
そっと水を差し出した。



あなた
ありがとう…
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
冷たくはないけどな




ふと、彼の手があなたの肩に触れる。

ほんの一瞬。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
…寒くないか?
あなた
だいじょうぶ。ありがとう
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
......




数秒の沈黙。

けれど、その静けさが不思議と心地いい。

やがて、あなたがそっと口を開く。



あなた
ピアーズさんは、怖くない?
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
何度も言ってるだろ。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
怖いよ、今も
あなた
でも…ずっと前を向いてる。
あなた
すごいなって、思う




ピアーズは何かを考えるように目を伏せて、
ゆっくりと返した。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
俺は、軍人だから。
任務があるから動く。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
でも…君が“怖い”って
言ってくれる方が、
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
正直、安心する。
あなた
...どうして?
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
怖がる感情がある人間は、
ちゃんと“生きよう”とするから。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
諦めないし、投げ出さない。
あなた
......
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
君も、きっと大丈夫だ。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
ちゃんと、この先も。





その言葉に、あなたはやっと、
少しだけ目を閉じることができた。

そっと、ピアーズの肩に頭を預けて。

彼は驚いた様子で固まったが――
次第に、その体をわずかに傾けて、
彼女の頭を受け止めるように寄り添った。

静かな夜。

外ではまだ、時折呻き声のような音が響く。

けれど、テントの中だけは、
わずかでも穏やかな時間が流れていた。

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