翌日。
感染の拡大は予想以上で、
避難予定だった拠点は壊滅。
代替ルートを進むBSAAの隊員たちは、
緊張を隠さず、それでも着実に前へと進んでいた。
あなたもまた、無言で歩く。
昨日より軽い荷物。
それだけで足取りはだいぶ違うはずなのに、
胸の中は不安と疲労で押しつぶされそうだった。
背後から聞こえる静かな声。
振り返ると、ピアーズが少しだけ
息を切らしながら、周囲を確認していた。
それは、彼なりの“気づかい”だった。
皆のことを言いつつも、
彼の目はあなたを見ていた。
木の根元に腰を下ろし、
あなたは小さくため息を吐く。
ピアーズも彼女の隣に静かに座った。
それだけ言って、
彼は少し口元をゆるめる。
ぽつりと落ちたその言葉に、
ピアーズが眉をひそめた。
あなたは驚いた顔で彼を見る。
視線が合う。
けれど、それを長く保つことはできなかった。
その静かな言葉に、
あなたは目を見開いた。
誰のことを指しているのか、言わなかった。
けれど、その視線の先にいるのは、
あなただけだった。
ーー
夜、仮設のテントで眠る時間になった。
隊員たちは交代で見張りに立ち、
残る者はわずかな時間で体を休める。
あなたはテントの隅にひざを抱えて
眠ろうとしていたが、
まぶたがなかなか閉じられない。
その声に振り向くと、
ピアーズが水のボトルを持って立っていた。
彼は遠慮がちに腰を下ろし、
そっと水を差し出した。
ふと、彼の手があなたの肩に触れる。
ほんの一瞬。
数秒の沈黙。
けれど、その静けさが不思議と心地いい。
やがて、あなたがそっと口を開く。
ピアーズは何かを考えるように目を伏せて、
ゆっくりと返した。
その言葉に、あなたはやっと、
少しだけ目を閉じることができた。
そっと、ピアーズの肩に頭を預けて。
彼は驚いた様子で固まったが――
次第に、その体をわずかに傾けて、
彼女の頭を受け止めるように寄り添った。
静かな夜。
外ではまだ、時折呻き声のような音が響く。
けれど、テントの中だけは、
わずかでも穏やかな時間が流れていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!