第6話

第肆話 へのへのもへじ禁止の学校
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2024/12/07 13:57 更新
ある所に、学校でいじめられている少女がいた。
そのいじめの内容は本当に壮絶で、少女の心を確実に壊すものだった。
日用品も勉強道具も少女の体も少女の心も壊す、悪意と敵意と害意に満ちたおぞましいものだった。
少女は1年も経たずに自殺してしまった。
少女は呪いやオカルト、都市伝説を信じていた。
それ故にいじめられていた。
少女は自殺する前、いじめに関与したクラスメート全員に呪いを試みていた。
その呪いの人型にはへのへのもへじが使われていた。
それ以降、いじめに関与した生徒はどんどんと追い詰められていった。
精神的でなく、肉体的に。
謎の病に罹患したり、交通事故に遭ったり。
しかもそれだけでは留まらず、いつしか、へのへのもへじを描いた人間は呪われると噂になった。
それからというもの、その学校ではへのへのもへじは禁止となった。
マドカ
マドカ
っていう都市伝説!知ってますか?!
シンタ
シンタ
い、いや、聞いた事無い...。怖いな、それ...。
マドカ
マドカ
怖いんですかー?
シンタ
シンタ
い、いや!全然怖くないけどな?!
ワタル
ワタル
シンタ、声震えてるのら。
昼寝の時間が近付いてきた穏やかな午前、シンタとワタルはマドカから巷で噂の「へのへのもへじの禁止の学校」について聞いていた。
マドカ
マドカ
でもでも、ホントにあったらバズりそうですよね!
シンタ
シンタ
そ、そんなもんなのか?
ハヤテ
ハヤテ
はっ、下らねー。
マドカ
マドカ
ハヤテ!ハヤテも聞いてたんですか!
ハヤテ
ハヤテ
まぁな。
どうやら聞き耳を立てていたらしい。
ワタル
ワタル
ハヤテ...!そうなのら!都市伝説なんて噂するもんじゃないのら!
ハヤテ
ハヤテ
何でお前は嬉しそうなんだよ。
マドカ
マドカ
えー?つまんないですねー。じゃ、こうしましょう!
マドカはうきうきでスマホの画面を見せてくる。
そこに映っているのはネット掲示板の画像。
マドカ
マドカ
この!へのへのもへじが禁止の学校に!肝試しに行きましょう!
ハヤテ
ハヤテ
…はぁ?肝試し?
ワタル
ワタル
なな、何言ってるのら!あぶねーのら!
マドカ
マドカ
いやいや、基本的には普通の学校ですし。ちょーっとお邪魔して、へのへのもへじ描いてみて、検証しましょう!バズりそうですし!
シンタ
シンタ
オレは行かないからな!
マドカ
マドカ
シンタは相変わらずビビりですねぇー。
ネット掲示板では既に学校の場所まで特定されているらしい。
マドカは行く気まんまんだ。
ユズリハ
ユズリハ
マドカあんた何してんの?
マドカ
マドカ
ユズリハちゃんっ!今日一緒にこの学校行きましょう!
ユズリハ
ユズリハ
え、いきなり何?
マドカ
マドカ
実はこれこれこういう訳でして!
ユズリハ
ユズリハ
いや、ふほーしんにゅーじゃない?それ。そもそもアタシ、そーいう死んで逃げちゃうダサいヤツが出てくる怪談嫌いだし。
ユズリハはハヤテをチラリと見る。
ユズリハ
ユズリハ
で、は、ハヤテ君は、行くの?その肝試し。
ハヤテ
ハヤテ
あー…ま、下らねーけど、そういう噂は大抵嘘だって証明する良い機会だしな。行くけど何だよ?
ユズリハ
ユズリハ
じゃ、じゃあアタシも行く!
シンタ
シンタ
えぇえ?えと、じゃ、じゃあ、オレも行くぞ!ヒーローだからな!
ワタル
ワタル
すとっぷなのら!!すとっぷ!ちょっと待つのら!
ワタルが挙手をする。
ワタル
ワタル
ちょーっとだけ待ってほしーのら!ホントに!せめて明日に!
ハヤテ
ハヤテ
ハァ?いきなりどうした?
マドカ
マドカ
善は急げです!
ワタル
ワタル
あっと…。わ、分かったのら。じゃあ僕ちゃんも行くのら。
シンタ
シンタ
おぅ!じゃあ保育園の帰りに向かうか!
何やかんやワクワクしてきたらしい。
シンタはさっきまでの様子が嘘のように怖がりもしない。
ユズリハ
ユズリハ
ママには上手く言っとくわ。
ワタル
ワタル
分かったのら。じゃあそういうことで!僕ちゃんちょっとお外行ってくるのら!
ワタルは早口で切り上げるとさっさと外に出た。
何人かは外で遊んでいるが、いつもよりは少ない。
人のいない端っこに行き、周りに人の目が無いことを確認する。
ワタル
ワタル
ドッペル!いるのら?!
ドッペル
ドッペル
えぇ。いるわ。
ドッペルが何も無い所から音も無く現れた。
さながら忍者だが、ワタルは特段驚かない。
ワタル
ワタル
良かったのら!実は!
ドッペル
ドッペル
知っているわよ。へのへのもへじ禁止の学校、そこに行くのでしょう?しかもへのへのもへじを描くって。
ワタルは力強く頷く。
ワタル
ワタル
どーすればいーのらぁ…。
ドッペル
ドッペル
うーん、あそこの噂は本物だから、本当に呪われちゃうしねぇ。しかも怨霊が呪ってくるの。
ワタル
ワタル
怨霊?!あの怖い幽霊?!
ドッペル
ドッペル
そう。まぁ私も同伴するわ。
ワタル
ワタル
うー…。
ワタルは不本意のようだ。
しかし背に腹はかえられない。
ワタル
ワタル
じゃ、お願いするのら。
ドッペル
ドッペル
えぇ。愛しく大切なワタルのためだもの。何でもしてあげるわ。
ワタル
ワタル
はいはいなのら。
ドッペル
ドッペル
つれないわねぇ。軽口にのってこそ一流よ?
ドッペル
ドッペル
ま、良いわ。この噂の補填だけしておくわね。主に怨霊について。
へのへのもへじを描くと、描いた人間は皆一様に呪われる。
呪われた人間は学校から出られなくなり、そして自殺した少女に追いかけられる。
少女から逃げることは不可能で、殺されないためには別の人間に呪われて貰うしかない。
呪われてもいい、憎い、そう思う人間の1部、または写真、無い場合は呪いたい人の名前を書いた紙を渡す。
ドッペル
ドッペル
と、いうものね。
ワタル
ワタル
...。
ドッペル
ドッペル
どうしたのよ?
ワタル
ワタル
...学校ってそんなに怖い所だったのらね...。
ワタルは静かな声で言った。
ドッペルが吹いた。
ワタル
ワタル
な、何なのら!しつれーなのら!
ドッペル
ドッペル
だ、だってぇ!何かおかしくて!アハハ、私の主は可愛いわねぇ。
ワタル
ワタル
ホントに何なのら!
ワタルは両腕をブンブンと上に振る。
怒りを表しているようだ。
ドッペル
ドッペル
冗談はさておき、そろそろ彼らの所に戻ったら?
ワタル
ワタル
ま、それもそうなのら。ドッペルはどうするのら?
ドッペル
ドッペル
ひとまずはあなた達の様子を見ておきましょう。ユウ先生は無理だし…。うん、まぁ頑張るわ。
ワタル
ワタル
あ、そうだ。へのへのもへじって、シンタとアキに教えてもらったけど、そんなに怖いものだったのら?
ドッペル
ドッペル
というよりも、呪いの形代、人型に使われたから怖いというだけで、それ自体は別に。怖くも何ともないわよ。
ドッペルはワタルの手を握る。
ドッペル
ドッペル
頑張りましょうね!
ワタル
ワタル
何でドッペルまでうきうきなのら!意味分かんないのら!
ドッペル
ドッペル
え?そう?木の精じゃない?
ドッペルは頭を斜めに傾ける。
ワタル
ワタル
...?木の精?
ドッペル
ドッペル
失礼、噛みました。
ワタル
ワタル
いきなりどうしたのら?!わざとなのら?!
ドッペル
ドッペル
かみまみた!
ワタル
ワタル
ホントに何?!
ドッペル
ドッペル
物語シリーズくらい履修しておきなさいよ、つまらないわね。
ワタル
ワタル
僕ちゃん保育園児!
推奨年齢中学生から高校生の作品の履修を勧められた。
ワタルはドッペルの手を振り払う。
このままでは今すぐにでも連れて行かれかねない。
ワタル
ワタル
じゃ、僕ちゃん戻るのら!
ドッペル
ドッペル
はーい。
ドッペルは瞬きした瞬間にその姿を消した。
ダイゴロウ
ダイゴロウ
おーいっ!皆ーっ!ユウちゃん先生が呼んでるーっ!
中からダイゴロウの大きな声が聞こえる。
もう昼寝の時間らしい。
ワタル
ワタル
…僕ちゃんも戻ろ。眠くなってきたのら。
マドカ
マドカ
やって来ました!「へのへのもへじ禁止の学校」!
シンタ
シンタ
ふ、普通の学校だな?
ユズリハ
ユズリハ
当たり前でしょ。妙な噂があること以外、普通に生徒もいる学校なんだから。
ハヤテ
ハヤテ
で?どうやって校内に入るんだよ?
眼前にある学校は中々の大きさで、どうやら私立らしい。
セキリュティも高水準だろう。
ユズリハ
ユズリハ
中に入るのは無理じゃない?そもそもアタシ達関係者とかじゃないし、ふほーしんにゅーって犯罪でしょ?
ワタル
ワタル
そうなのら!犯罪なのら!だから帰るのら!
ハヤテ
ハヤテ
だから何で嬉しそうなんだよ。
マドカは学校のホームページに飛んでうーんと唸っている。
学校の職員(?)
学校の職員(?)
おーい。君達?
マドカ
マドカ
うひゃあ?!
学校の中から男性が出てきた。
何やかんや何分も校門前でうろうろしていたからだろうか、とワタルは不安になる。
シンタ
シンタ
え、えと、な、何の用だ?!
ユズリハ
ユズリハ
シンタ!あんた失礼でしょ!
学校の職員(?)
学校の職員(?)
いや良いよ。それよりどうかしたのかな?
男性はつかつかと一直線に近寄ってくる。
マドカ
マドカ
そ、その、ちょっと中に入りたくて…。
マドカは正直に言う。
ワタル
ワタル
な、なのらぁ…。
学校の職員(?)
学校の職員(?)
ん?あぁ、ワタルの友達か。
ハヤテ
ハヤテ
ワタル?こいつの知り合いか?
学校の職員(?)
学校の職員(?)
あぁそうだよ。ワタル、何しているんだい?
男性がにこやかに言うが、当の本人は理解不能で混乱しかしていない。
何よりこの男性、何とも言えない違和感がある。
既視感すら覚える違和感。
ワタル
ワタル
(この人会ったことあるのら?でも覚えが無いのら…。)
しかし折角中に入れそうなのだ。
ワタルも進んで入りたくないが、シンタやマドカと出かけるのは嫌いではないし、都市伝説と関わる時にドッペルと二人よりは怖くないだろう。
危険だが、ワタルはどうせ遅かれ早かれこの都市伝説も消さなくてはいけない身。
ここは利用させてもらい、皆で入りたい。
ワタル
ワタル
え、えーと、ちょっと皆でここの見学をしてみたくてなのら…?
シンタ
シンタ
けんがく?
マドカ
マドカ
シーッ!
学校の職員(?)
学校の職員(?)
そっかそっか。なら良いよ。ついておいで。
男性は頷く。
ユズリハ
ユズリハ
え、いいの?!ありがと!やったねハヤテ君!
ハヤテ
ハヤテ
え?あ、あぁ。
マドカ
マドカ
ありがとです!
シンタ
シンタ
なぁワタル。けんがくって何だ?どういうことだ?
ワタル
ワタル
シーなのら!
皆で男性についていく。
しかしハヤテは1人首を傾げていた。
普通こんなことあるだろうか?
何より、ここまで曖昧な理由で中に入れるだろうか?
ハヤテ
ハヤテ
(何か変だな…。それに、何とも言えない違和感もある…。)
そうは思いつつも、ここでそれを口にして台無しにするのも何だ。
そう思い黙ってついていく。
中に入っても人の姿はあまり無い。
人がいてもワタル達に何か言ってくる人はいない。
マドカ
マドカ
しかし、この後どうしますか?
マドカが小声で言う。
ユズリハ
ユズリハ
とりあえずついてく?悪い人じゃない、みたいだし。ワタル、あの人っていい人?
ワタル
ワタル
さ、さぁ?あの人覚えてないからわかんないのら。
綺麗な校舎の中を、とりあえず進んでいく。
学校の職員(?)
学校の職員(?)
ここで待っててくれるかい?ちょっと人を呼んでくるから。
いつの間にかワタル達は教室の前にいた。
マドカ
マドカ
あ、はーい。
中に入り扉を閉める。
そこは学習室らしく、空っぽの机がいくつか置いてあるだけだ。
ハヤテ
ハヤテ
で、どうするよ?へのへのもへじ、書くのか?
マドカ
マドカ
そうですね、ここで描いちゃいますか!
マドカは椅子に座る。
ユズリハ
ユズリハ
はい、紙とペン。
シンタ
シンタ
用意が良いな…。ほ、ホントにやるのか?
ユズリハ
ユズリハ
あたりまえでしょ。
マドカ
マドカ
ありがとございますユズリハちゃん!
マドカはペンを握りへのへのもへじを描き始める。
すると、扉をノックする音が聞こえた。
返事を待つことなく扉が開かれる。
ドッペル
ドッペル
こんにちはー。
ワタルは一瞬固まったが、すぐにドッペルということは分かった。
ワタル
ワタル
ど、ドッペル…?!
ドッペル
ドッペル
あなた達の案内に来たわ。ドッペルって呼ばれてるわ。是非そう呼んで頂戴。
シンタ
シンタ
そうか!オレはシンタだ!
ドッペル
ドッペル
えぇ、ワタルから聞いているわ。
ユズリハ
ユズリハ
ワタルから?また知り合い?
ワタル
ワタル
そ、んな所なのらー…。
そしてワタルは察した。
さっきの会ったことも無いやけに親切な男性。
あれはドッペルだったのかと。
そしてあの違和感の正体。
既視感すらも抱いたあの違和感は、他でもない、ワタルがドッペルと会った時と同じく、影が無かったからこその違和感。
わざわざ他人になってまでワタル達を校内に入れたらしい。
ワタル
ワタル
(何でこういう所だけ嫌に協力的なのら!)
ハヤテ
ハヤテ
じゃ、オレ達全員の名前は把握してんのか。
ドッペル
ドッペル
勿論。ところで、へのへのもへじを描こうとしていたの?
ドッペルはマドカの描いている描きかけのへのへのもへじを指さす。
マドカ
マドカ
え?!こ、これはその…。
ドッペル
ドッペル
あぁ、良いのよ。気にしないで。あの噂は私も気になっていたし。何なら検証する?
マドカ
マドカ
良いんですか?!
ワタル
ワタル
えぇー…。
ドッペルの後押しもあり、まどかはイキイキとへのへのもへじを描き、へのへのもへじが完成する。
瞬間、ワタルは背中にぞわりと冷たいものを感じた。
冷たいものが背中に触ったかのような、冷や汗が流れる重たい異質な何かがこの空間を包んだかのような。
今まで遭ってきた都市伝説に近い気配。
ハヤテ
ハヤテ
…何だ?
ユズリハ
ユズリハ
何か変な感じしなかった?こう、何とも言えない。
シンタ
シンタ
う、うん、オレもだ…。
マドカ
マドカ
え、そうですか?まぁ違和感みたいなのは感じましたけど…。
ワタル
ワタル
えぇ?それだけなのら?
どうやらワタルの感じた恐怖に近い冷たい気配はワタルしか感じなかったらしい。
ドッペル
ドッペル
来たわね。
ハヤテ
ハヤテ
?何がだよ?
ドッペル
ドッペル
呪いが、よ。
ドッペルは静かに窓の外を指差す。
ドッペル
ドッペル
見てみなさい。
ユズリハ
ユズリハ
…?
ユズリハが不審そうに窓の外を見る。
ユズリハ
ユズリハ
きゃあっ!
マドカ
マドカ
どうしましたかユズリハちゃん!
ユズリハ
ユズリハ
そ、外!外が!
マドカ
マドカ
一体何が…ってうわ!
シンタ
シンタ
な、何だこれ!学校の外が真っ暗だ!
ワタルも窓際に駆け寄り外を見る。
確かに学校の敷地外が、墨汁を煮詰め、夜を濃くしたかのように真っ暗。
暗い、黒いというよりも虚無に近い。
ワタル
ワタル
こ、これが、学校から出られない呪い…!なのらね…!
ハヤテ
ハヤテ
どうなってんだ、ここは…!!
ドッペル
ドッペル
ここはどうともしないわ。ただの怨念。それが形と力を持っただけ。立地とかは別に悪くないわ。さてワタル。
ドッペルはワタルに向き直る。
ドッペル
ドッペル
私に、どうしてほしいかしら?私にどう動いてほしい?お友達の前だもの。今日はチートデイ。特別にあなたの好きなように動いてあげる。
ユズリハ
ユズリハ
…いやそれチートデイの意味違くない?
ツッコミが入った。
しかしドッペルは気にしない。
ドッペル
ドッペル
さ、ワタル。早く決めて。もう彼女が来るわ。
彼女、それは説明されなくとも分かる。
ワタル達を呪い殺さんとする少女の怨念、怨霊だ。
ワタル
ワタル
…不本意だけどしょーがないのら。これ、何とかできるのら?
ワタルは窓の外を指差す。
ドッペルは言葉無く笑顔で頷く。
言葉にしなくても分かるでしょ、と言わんばかりだ。
ワタル
ワタル
じゃ、お願いするのら。
ドッペル
ドッペル
勿論。あなたは私のあるじ
ワタル
ワタル
あー!いーからいーから!さっさと行くのらーっ!
ワタルはドッペルを教室からグイグイと押し出す。
シンタ
シンタ
お、おい、良いのか?アイツ知り合いだろ?何があるか分かんないぞ?
ワタル
ワタル
…多分大丈夫なのら。ドッペルだし。
ユズリハ
ユズリハ
いやいやいやいや。ダメでしょ。危ないでしょ。あの人どんだけ強いのよ?
マドカ
マドカ
柔道経験者とかだったとしても止めますけどね?ホントに良いんですか?
混乱と困惑が広がっていく。
そして、その混乱を極める形でハヤテが口を挟んだ。
ハヤテ
ハヤテ
オイワタル。聴きてぇことがある。
ワタル
ワタル
ど、どうしたのら。
ハヤテ
ハヤテ
さっきの男とさっきのドッペルとかいう女、どっちもおかしかった。特に男。
シンタ
シンタ
い、いきなりどうした?ハヤテ。確かに二人共強引だったけど…。
ハヤテ
ハヤテ
あの男、影が無かった。
ワタルはドキリとした。
影が無い。
それはドッペルが人に化けるにあたって特徴となる部分。
しかしそれに気が付く人間は中々いない。
その中々人が気が付かない部分に、ハヤテは目ざとく気が付いたらしい。
ハヤテ
ハヤテ
どういうことだ?
ユズリハ
ユズリハ
か、影が…?
マドカ
マドカ
影が無い…?あ、きゅ、吸血鬼、とか…?
シンタ
シンタ
えぇ!吸血鬼?!
ワタル
ワタル
うーんと…。
ワタルは少し口ごもる。
ドッペルの存在は複雑怪奇で、そもそも言っても信じられる類のものではない。
どうやったら良いのか考えあぐねていると。
パキン!
と大きな音がどこからともなく聞こえた。
マドカ
マドカ
うぇ?!次から次へと!
ハヤテ
ハヤテ
オイ外見ろ!
シンタ
シンタ
あっ!外の黒いのが無くなってる!
見れば、先程までとは打って変わって、何とも無い穏やかな周辺住宅が見える。
ユズリハ
ユズリハ
な、何が起こってるのよ…。
ドッペル
ドッペル
良ければ私が説明してあげましょうか?あなた達、中々に可愛いしね。
ワタル
ワタル
ドッペルの可愛いは恐怖でしかないのら。一応釘刺しておくのら。皆はやめろなのら。
ドッペル
ドッペル
あらつれない。酷いわねぇ。別に良いけど。
ドッペルは音も無く教室内に立っていた。
その白い服を血まみれにして。
ドッペル
ドッペル
終わったわよ。ちゃあんともう一度殺してきた。もう大丈夫。
その姿に園児達はすっかり戦々恐々としている。
マドカ
マドカ
あ、あの、ワタル…。
ハヤテ
ハヤテ
ワタル。説明しろ。
ハヤテはワタルを見る。
これを何も説明せず、事実を隠したまま納得させるのは不可能に近い。
ワタル
ワタル
…ドッペル。
ドッペル
ドッペル
なーぁに?
ワタル
ワタル
後でお話があるのら。
ドッペル
ドッペル
そう?分かったわ。

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