第7話

第伍話 巣食うもの
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2024/12/16 09:01 更新
ズンと重い雰囲気で、重たい緊張。それはかつてのゆぅろぴあを彷彿とさせる程だ。
しかしゆぅろぴあでも経験したことの無い種類の、独特な雰囲気。
ユズリハ
ユズリハ
で?一から十まで説明してもらうからね。
ワタル
ワタル
あ、うん...なのら...。
ワタルとドッペル、そしてハヤテ、シンタ、マドカ、ユズリハ。
ワタルとドッペルは隣に座り、他の4人はその向かい側に座っている。
流石に学校内で話す訳にはいかず、今の時間帯は親が仕事なハヤテの家まで移動した。
その際ユズリハが影でかなり喜んでいたが、それは割愛する。
この物語は曲がりなりにも怪異譚であって、ラブコメではないのだ。
ドッペル
ドッペル
怖いわねー。笑顔大事よー?
ドッペルが茶化すように言う。
ハヤテ
ハヤテ
そういうのは良い。さっさと吐け。お前何者だ?
ドッペル
ドッペル
何者だなんて。私はドッペル。それ以上でもそれ以下でもない。
ハヤテ
ハヤテ
本当にそれしか言わねぇつもりか?何度訊いてもそれじゃねぇか。
ハヤテはワタルの方を見る。
ワタルが話せ、と無言で言っているのだ。
マドカ
マドカ
れーばいし、ってやつですか?だとしたら結構バズりそうですけど。
シンタ
シンタ
え、そんなのがいるのか?!でも何でワタル、そんな奴と知り合いなんだ?
ワタル
ワタル
ふぁ?!あー、えーと...。いや、な、成り行きで...?
唐突に話題を振られ軽くパニくる。
別にワタルも隠したい訳ではないし、むしろ共有できるなら嬉しい。
しかし最初から話して信じてもらえるだろうか。
そもそも話しても良いものだろうか。
そんなネガティブな感情ばかりが頭を駆け巡る。
ドッペル
ドッペル
霊媒師、ではないわよ。
ユズリハ
ユズリハ
ふぅん?じゃ何?
ドッペル
ドッペル
私はねぇ。ワタルの守護霊なのよ。
ハヤテ
ハヤテ
...は?
ワタル
ワタル
へ?
ワタルはドッペルの方を見て、「何を言っているんだコイツは」とでも言いたげな表情を浮かべる。
ドッペルは守護霊というよりも怨霊だ。
否、元々人でない分、怨霊よりもタチが悪い。
人を呪い、恨み、怨み、憎しみ、羨み、それを存在意義とする人間の負の遺産。
それがドッペルという都市伝説。
守護霊どころか、むしろ守護霊を駆逐していてもおかしくない種類の存在の筈だ。
ドッペル
ドッペル
人じゃないのよ。
シンタ
シンタ
お、オバケなのか?!
ドッペル
ドッペル
そうよ?
ハヤテ
ハヤテ
...そんなん、信じられると思うのか?
ドッペル
ドッペル
そう言うと思ったから黙っていたのよ。私もワタルも。それならどう証明したら納得してくらるのかしら?
ハヤテは一度押し黙る。
そう言われればその通り。
肯定材料は無いが、否定材料も無いのだ。
ワタル
ワタル
(ここはドッペルに任せておいた方がいいっぽいのら...僕ちゃん黙っておいた方がけんめーなのら...)
ドッペルは嘘八百を顔色も変えずに口にすることができる。
ワタルが下手なことを言っては台無しだ。
ハヤテ
ハヤテ
じゃあさっきの男は?ワタルも面識なかったみたいだが、どういうことだ?
ワタル
ワタル
ば、バレてたのら...!
ドッペル
ドッペル
あ、あれも守護霊。ワタルが認知してない奴。知ってる?守護霊って複数人いるのよ?
ドッペル本人だったというのについに別人扱いしてきた。
さっきの男性はまだ生きている(筈)というのに死人扱いをしだした。
ユズリハ
ユズリハ
否定、したいけど、さっきのアレの後じゃね...。
マドカ
マドカ
凄くバズりそう...!
ドッペル
ドッペル
あ、写真には映らないからね。
マドカ
マドカ
ガーン!
ちなみにこれも嘘である。
全然普通に映る。
シンタ
シンタ
お、オバケ、だけど、オレ達のこと守ってくれたし、良い奴、なのか...?
ハヤテ
ハヤテ
ま、守護霊って言ってたしな。本当なら少しは警戒をといてやっても良い。シンタ、お前はとりあえずアイツから距離取れよ。
シンタ
シンタ
何で?!
ハヤテ
ハヤテ
お前極端だろ。上手く警戒できねぇし。物理的に距離を作れ。バカなんだから。
シンタ
シンタ
オレは!バカじゃ!ねぇ!
シンタはバタバタと手を動かす。
ハヤテはそれをスルーする。
マドカ
マドカ
あれ?でも普通、そういうのって見えないものですよね?
ドッペル
ドッペル
私は特別なのよ。凄い守護霊なの。ゆぅろぴあでもカエルタマゴに気が付かれなかったくらい頭が良いのよ。
ユズリハ
ユズリハ
アンタゆぅろぴあに着いて来てたの!?あ、でもそっか、守護霊だから...。
どうやら一応、守護霊ということで納得してくれたらしい。
ワタルはほっとする。
ワタル
ワタル
(流石に都市伝説のこととかは言えないのら。僕ちゃんがドッペルと何をしてるのかも。)
ワタルも、シンタやマドカに嘘を吐きたい訳ではないし、ハヤテやユズリハを騙したい訳でもない。
ただ、都市伝説の原理や自分がやっているドッペルの手伝いは、正直に言ってワタルもあまり理解できていない。
理解できていないことは説明のしようがない、というのもある。
ドッペル
ドッペル
守護霊としての見解を述べさせてもらうなら、都市伝説には近付かない方が良いわね。人には守護霊がいることが殆どだけど、それでもどうにもできないことが殆どなんだから。
シンタ
シンタ
正直オレは2度と関わりたくない...。
ユズリハ
ユズリハ
アタシも流石にもう都市伝説は懲り懲りね。
マドカ
マドカ
まー、バズ確定の絵面ではありましたけど...。身の危険より優先できるかと言われたらそうじゃないですしね。
あの時、ワタル以外には死の危険が迫っていた。
幸いそれを自覚する前にドッペルが討伐したので大事には至らなかったが、ドッペルが、ワタルがいなければとんでもない、下手したらゆぅろぴあ以上の恐怖体験を味わっただろう。
ハヤテ
ハヤテ
...オレはまだお前のことは信用してねぇからな。
ドッペル
ドッペル
あら、私に言っているの?
ハヤテ
ハヤテ
他に誰がいるんだ?
ドッペル
ドッペル
私の親愛なるワタルかと。
ワタル
ワタル
あ、ドッペルのそれは基本的に無視していーのら。
ハヤテ
ハヤテ
分かった。
ドッペル
ドッペル
ちょっとー?私は本当にワタルのこと心から敬愛して啓蒙して親愛して友愛しているのにー。
シンタ
シンタ
何て?
ドッペル
ドッペル
えっと、敬愛して啓蒙して...
シンタ
シンタ
あ、いや良い!復唱しなくていい!
重苦しい空気から、段々と和やかな雰囲気になる。
ドッペル
ドッペル
ま!そういう訳だから。今日は解散でいい?
ユズリハ
ユズリハ
何でアンタが仕切ってんの?
マドカ
マドカ
ま、確かにいい時間ですしね。ここは解散にしましょう。
マドカは立ち上がる。
シンタ
シンタ
そ、そうだな、怖、くはないけど、今日は帰ろう。
ユズリハ
ユズリハ
ま、遅くなっちゃったらママ心配しちゃうしね。
ワタル
ワタル
そーなのらね。僕ちゃんも帰るのら。シンターまた明日なのらー。
シンタ
シンタ
おう!また明日!
ユズリハ
ユズリハ
ハヤテ君もまた明日!
ハヤテ
ハヤテ
ん。
ハヤテは手をひらと振る。
ハヤテ以外の園児は立ち上がり、玄関に向かう。
ドッペルは何故かゆっくりと立ち上がり、ハヤテの近くに行く。
そして耳元で囁く。
ハヤテ
ハヤテ
?
ドッペル
ドッペル
本当はね、気が付いても、知らないフリが1番なのよ?
ドッペル
ドッペル
ワタルが釘を刺さなかったら殺しちゃうかと思った。
やけに耳に残る声で、ねっとりと絡みつくような声色で。
低いというのに高い、しかし威圧感はあり圧迫感は無い、そんな声と話し方で。
小さな声でそれだけ言うと、にっこりと笑ってドッペルはワタルの元へと歩いて行った。
ハヤテ
ハヤテ
...あんなのが守護霊な訳ねぇだろ。
ワタル
ワタル
それじゃ、バイバイなのらー!
シンタ
シンタ
おぅ!また明日ー!
シンタは曲がり角でワタルの姿が見えなくなるまで手を振り、そして歩き出した。
シンタ
シンタ
はー、今日はビックリしたなぁー...守護霊って本当にいたんだな...。
シンタは1人、帰路について早めの速度で歩いていた。
都市伝説に関わって、守護霊(本当は都市伝説)を見て、背後が怖くなったからだ。
物音1つに反応してしまい、物陰がつい気になってしまう。
シンタ本人は認めたくないが、怖がりな性格なので、後ろを振り向きたくなる衝動を抑えてこうして帰路を急いでいるのだ。
シンタ
シンタ
マドカとワタルとユズリハと別れるまでは、全然平気だったのに...。1人になったら急に怖くなってきた...。
シンタは忙しなく辺りを見回す。
普段は気にならないものも、夕暮れ時になってしまうとつい気になる。
気にもとめない家、風景、道の模様。
日常の中で意識から外れるものばかりが目に入る。
そしてそんな中、ふと、シンタの視界に気になる物が入り込んだ。
およそ無視ができない不思議な存在感をまとって、シンタの足を止めた。
シンタ
シンタ
神社?こんな所にあったっけ...。
小さな雑木林。
その入口辺りにある、ボロボロの神社。
荘厳な気配も、騒然とする威厳もなく、全てが色褪せてしまっている。
立派だったのだろう鳥居も、お社も、すっかり寂れ、世界から取り残されたかのような有様だ。
いつも通っているというのに、今まで全く気が付かなかった。
シンタ
シンタ
ハイジンジャってやつか...。神様も悲しいだろうな...。
ボロボロなのと夕暮れ時なのも相まって、かなり不気味に見えてくる。
実際、昼間でも不気味だし怖いだろう。
この廃神社はそれ程までに、何かとんでもないものを抱え込んでいるように見える。
しかしシンタは心優しい子供。
その不気味さと恐怖よりも、同情と慈悲が勝った。
シンタ
シンタ
ちょっと近付いてみるか...。
シンタは時間を気にしつつ、廃神社の鳥居を潜る。
ひやりと首筋が冷たくなった。
先程、数時間前にワタルが感じた感覚と似たもの。
しかしシンタにはそんなことは分からず、脊髄をやすりで触られたかのような感覚に戸惑うだけだ。
その瞬間、シンタは感じたことの無い息苦しさを感じた。
シンタ
シンタ
うっ!?げほ、ごほ...!な、何、だ、これ...げほ、あぐっ...。
体から力が抜け、その場に倒れる。
受け身すら取ることもできず、ただ藻掻く。
カナタなら、この感覚を「溺れている」と思うだろう。
シンタは喉に、とてつもなく冷たい液体のようなものを感じた。
冷たい水を飲み、しかし足りず、気管、そして肺にまでそれは入ってくる。
ふと、何かの気配を感じた。
人のようで人ではない、形の無い何か。
シンタ
シンタ
げほ、ごほ...。な、何なん、だよ...!
もがき苦しみながらも、その気配のする方を必死に見る。
しかし、それを視界に入れる前にシンタの意識は遠のき、視界もぼやけてしまった。
シンタの意識が途切れる寸前、辛うじて見えたのは。
おぞましい、おどろおどろしい、圧倒的で理不尽な。
人の形を取らない黒い何かだった。
ワタル
ワタル
おはよーなのらー。
ワタルは保育園の入口で大きな声を上げた。
ダイゴロウ
ダイゴロウ
あっ、おはよーワタルー。
ワタル
ワタル
おはよーなのら。シンタもう来てるのら?
シンタ
シンタ
来てるぞ!おはようワタル!
シンタが保育園の建物の奥から出てくる。
マモル
マモル
ワタル君!おはようございます!
ワタル
ワタル
おはよーなのらマモル!
マドカ
マドカ
あ、おはようございます。そーいえば、ワタル。昨日の守護霊さんって今来てます?
ワタル
ワタル
そ、それはこっちで話すのら!
マモル
マモル
守護霊?
ワタル
ワタル
何でもないのら!
ワタルはそそくさとマドカを外に連れ出す。
ワタル
ワタル
で、何なのら?
マドカ
マドカ
実は、この間から密かで有名になっている心霊スポットがあって!
ワタル
ワタル
無しなのら。ドッペルは連れてかないしついて行かないのら。
マドカ
マドカ
えぇーっ!いいじゃないですか!ケチ!
ワタル
ワタル
昨日ドッペルに怒られたの忘れたのら?!危ないのら!
マドカ
マドカ
でも割と安全らしいですし!結構な人が生きて帰っているそうで!
ワタル
ワタル
ぜーったいダメなのら。
ワタルは首をブンブン振る。
そもそもドッペルはワタル以外を守ろうとしない。
そんなリスキーなことはできない。
マドカ
マドカ
もーヒドイですねー。ま、仕方ないです。ワタルと守護霊さんと行くのは諦めます。
ワタル
ワタル
それでいーのら。あーいうのは関わらない方がいいのら。
ワタルはやっと安堵する。
マドカは渋々といった様子でワタルから離れ、そして何かを思い付いたようにシンタの所へと向かった。
マドカ
マドカ
シンター。今日保育園が終わった後暇ですか?
シンタ
シンタ
うぇ?何だ?暇だぞ?
マドカ
マドカ
じゃあ今日ちょっと行きたい所があるんですけど!
マドカが行きたがっている心霊スポットは、このようないわくがある。
そこはとある一軒家だ。
そこは大人が入ると呪われるという。
過去は大家族が住んでいたが、そこの住民はある日突然皆殺しにされた。
原因不明、正体不明で、他殺かすらも分かっていない。
マドカ
マドカ
何か、子供は入っても大丈夫らしいですよ!
シンタ
シンタ
いや、怖いんだけど...?
マドカ
マドカ
えっ怖いんですか?
シンタ
シンタ
いや怖くはないけどな!全然!
マドカ
マドカ
じゃあ行けますね!
シンタ
シンタ
おう!
何度も同じ手でのせられるシンタだった。
ハヤテ
ハヤテ
お前ら、何話してるんだ?
シンタ
シンタ
お、ハヤテ!実は今マドカと心霊スポットに行くって話を...
マドカ
マドカ
あーー!何でもないです!じゃ!シンタこっちに!
マドカは不審そうに見るハヤテの視線から逃げるようにシンタの手を引っ張り、ハヤテから遠ざける。
シンタ
シンタ
何だ?マドカ。
マドカ
マドカ
良いですか!バレないようにして下さい!絶対止められるから!
シンタ
シンタ
?おう。分かった!
マドカ
マドカ
やってきました「呪いの空き家」!
シンタ
シンタ
ふ、雰囲気あるな...。
2人は小さな一軒家の前に立っていた。
雑草に囲まれ、全体が汚れ、家としては既に機能しないだろう場所。
既に辺りは薄暗い。
遙か向こうにオレンジに染まった空が見える。
お互いの親にお互いの家に泊まるからと嘘を吐いてこの時間に来たのだ。
肝試しするには充分すぎる雰囲気。
シンタ
シンタ
それで?どうするんだ?
マドカ
マドカ
中に入るのは住居不法侵入罪なので、裏庭に行きましょう。裏庭があるらしいので。
シンタ
シンタ
じゅーきょ...?
マドカ
マドカ
何でもないです、行きましょ!
マドカとシンタは歩き出し、家の裏まで回る。
雑草が生い茂る道を進むと、1つの井戸が見えてきた。
マドカ
マドカ
あ、ありました!あの井戸!
シンタ
シンタ
あ、あれか...。何かザワザワするな...何か、こう、体の奥が変な感じだ...。
マドカ
マドカ
え?そうですか?
マドカはどんどん近づいて行く。
そして落ちないように気を付けながら中を覗いた。
シンタ
シンタ
何してるんだマドカ!危ないだろ!
マドカ
マドカ
大丈夫ですよ。浅い井戸みたいですし。あれ、中に何か、人形の家みたいなのが...。
シンタ
シンタ
っ...!!マドカ!こっちだ!
シンタはマドカに駆け寄り引っ張る。
そのまま後ろに下がらせる。
マドカ
マドカ
何ですかいきなり!怖がるにしたってもっとマシな怖がり方がありますよ!
シンタ
シンタ
な、何か、おかしいぞ、ここ!それに、何か...。
シンタ
シンタ
ね、眠く...
シンタ
シンタ
なって...。
シンタの体から力が抜け、マドカの方へ倒れ込む。
マドカ
マドカ
し、シンタ?!どうしたんですか?!
マドカは倒れたシンタを揺さぶる。
シンタはその両目を閉じ、全身の筋肉を弛緩させている。
要は眠っている。
マドカは試しにシンタの頭を軽く叩いてみる。
しかしシンタの意識は戻らず、小さな寝息を立てている。
マドカが井戸の方を見ると、ガシャン、と音が鳴り響いた。
マドカ
マドカ
今度は何!?
井戸の中からガシャンガシャンと金属同士がぶつかり合うような音が響き続ける。
井戸の中から金属の塊が這い出ようとしてきているかのように。
マドカ
マドカ
シンタ!こんな所で寝ないで!起きて下さい!
シンタは答えない。
深い眠りについてしまったかのようにこんこんと眠っている。
井戸から何かが這い出してくる。
それはゆっくりと少しずつ全身を井戸から引っ張り出すような動きで、それが機械的な動きなのがまた恐怖を煽る。
マドカ
マドカ
お、落ち武者...?
その全容を把握したマドカは1人そう呟く。
井戸から出てきたのは、全身を鎧で固めた鎧武者だ。
ただ首が無く、首があるべき所に何も無い。
マドカが瞬きした時には、既に目の前にいた。
マドカ
マドカ
えっ。
マドカとシンタの方に手を伸ばし、引きずり込もうとしているのは一目瞭然。
しかしマドカはシンタを置いて逃げようとは思えなかった。
だからマドカは、シンタの手をぎゅっと握った。
目も瞑り、覚悟を決めた。
鎧武者は、いつまで経ってもマドカとシンタに手を出さなかった。
マドカが恐る恐る目を開けると、鎧武者は腕を失くしている。
マドカ
マドカ
さ、さっきから何が起こって...。
シンタ
シンタ
う...。
シンタが呻く。
すると、シンタの体から黒い霧状の何かが零れ出た。
零れ、溢れ、飛び出した。
その霧は水のような動きで鎧武者に絡みつくと、反抗も抵抗も許さず、鎧武者を食い尽くした。
本当に比喩抜きで、喰らい尽くした。
口なんて無い筈なのに。
そして鎧武者が完全に姿を消すと、その霧もまた、シンタの中へと収まった。
シンタ
シンタ
...あれ?オレ...。
マドカ
マドカ
し、シンタ、一体どうしたんですか...。
その空間に、もう、シンタの中の怪物の腹を満たすものは存在しなかった。
作者
作者
予想以上に長くなりました!すみません!この話は有名な都市伝説を元にしていますが、1部改変もしていますのでご了承ください!

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