第5話

私、結婚します⁉︎
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2018/11/09 06:53
 こ、この人なんて言ったの?
 よめ? ……ようめい? 
用命って命令するって意味だっけ?
月森姫花
月森姫花
あ、あの……私に何をさせるつもりなんですか?
も、もしかして私の体目当て⁉︎ 

お父さん! お母さん! 親不孝な私でごめんなさい!
私、この男に弄ばれ――
九条怜
九条怜
俺と結婚してもらうだけだ
――飽きたら売られちゃう……え?
月森姫花
月森姫花
結婚⁉︎
九条怜
九条怜
そうだ。簡単だろ?
月森姫花
月森姫花
簡単っ⁉︎ そそそそんなわけないじゃないですか⁉︎ まだ会って一日も経っていないのに、けけけけ結婚だなんて⁉︎
九条怜
九条怜
籍を入れるだけで、夫婦なんだから手間がかからないだろ
この人は何を言っちゃっているの⁉︎


私は状況が飲み込めずにアタフタしながら、後退りした。
とんっと背中に扉が触れた感触。それを感じたと思ったら、眼の前に外道王子がいた。
そして、逞しい右腕が私の頭を掠めて扉に伸びて――ドンッ、という音が聞こえた。
月森姫花
月森姫花
あ、え? えっと……。あの――
眼光鋭い外道王子の顔を見ながら、私は不覚にも思ってしまった。
これが世にいう《壁ドン》、
人生で一度はイケメンにやられてみたいランキングで必ず上位に入る幻のイケメン業。
儚い幻想だと思っていた《壁ドン》が体験できるなんて!
もう死んでもいい……と。
九条怜
九条怜
……お前に拒否権はない
私の頭が困惑していると、外道王子の顔が近づいてきた。
《壁ドン》からこの流れは――きすぅ⁉︎

急速に高鳴る心音。
私は混乱する心を必死に抑えながら、私は瞼をきつく閉じると――
九条怜
九条怜
偽装結婚のパートナーとして、働いてもらう
月森姫花
月森姫花
――へ?
――頭がフリーズした。
九条怜
九条怜
なにアホ面してる? 
お前はこれから俺のために働くんだから、シャッキっとしろ
私の両頬を掴んで引っ張りながら、わけのわからない事を言う外道王子。

嫌味ったらしい笑みを浮かべてくるけど……ちょっと待ってほしい。
この人はさっきなんて言ったの?
え、えっと……確か、ぎそうがどうのって言っていたような――って、頬が痛いっ⁉︎
月森姫花
月森姫花
ぱぺにぷれすぱ⁉︎(なにするんですか⁉︎)
私は外道王子の手を払い、赤くなった頬を擦りながら睨みつける。
九条怜
九条怜
偽装とはいえ、これから夫となる男の手を払うとか……教育がなってないんじゃないか?
月森姫花
月森姫花
偽装⁉︎ ……そ、それって嘘の結婚ってこと?
九条怜
九条怜
あ? なにを当たり前のことを言っている。最初からそう言っていただろ?
九条怜
九条怜
あ? なに当たり前のことを言っている。最初からそう言っていただろ?
いいえ、初耳ですよ‼︎
月森姫花
月森姫花
そ、そもそも私はまだ高校生ですよ⁉︎ 結婚なんて早すぎますし、偽装とか意味がわかりません!
九条怜
九条怜
……ここ最近、見合い話が多すぎて困っていたんだ
月森姫花
月森姫花
は、はい?
急に真剣な顔して、何を言い出すの?この人は……。
そりゃ……見合い話なんてたくさんくるでしょうよ。
私に妄想させるくらいイケメンフェイスなんだから。
九条怜
九条怜
今日も見合いだったんだが、毎回言葉攻めで泣かすのも疲れる
ま、毎回お見合い相手を泣かせているの⁉︎
さ、最低だこの人……。
九条怜
九条怜
そこでお前が俺と偽装結婚すれば、見合い話もこなくなる。
お前も借金チャラだ。
月森姫花
月森姫花
い、いや。でも
九条怜
九条怜
安心しろ。日本の法律で女は16歳から結婚できる。それにーー
外道王子の腕が伸びたと思ったら、ドンッと音が響いた。
壁ドンーーそう思ったときにはもう、外道王子の唇が私の耳元まできてーー



ーーガチャ、と音が聞こえた。
月森姫花
月森姫花
きゃ⁉︎
寄りかかっていた扉が開いた。
その瞬間、私の体が後ろへと倒れていきーー
桐ヶ谷 京也
桐ヶ谷 京也
ーーおっと! 大丈夫?
ふわっと優しく包み込まれ、漂ってくる甘い匂いが私の心を落ち着かせてくれる。そして、心にぬくもりを与えてくれるような声音に、私の目は吸い込まれていった。


赤みが少し混じった綺麗な茶髪。少し幼く見えるけど、それを最大限に引き立てる甘いマスク。
そして、優しく微笑む顔は、まさに西洋の王子様だった。

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