第28話

危険な縄張り 2
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2026/08/19 02:18 更新





「おい。」








背後から響いたその声に、




ジナの身体がビクッと震える。








恐る恐る振り返ると、そこには他校の男子生徒が一人立っていた。








「お前、何しに来たの?」




「……。」








ジナが答えられずにいると、男はジナの腕を掴んだ。




「……っ!」








そのまま、ぐいっと引っ張られる。








「ジナちゃん……。」




ソヌが手を伸ばす。




けれど、立ち上がることもできないソヌの手は、あっけなく振り解かれてしまった。








「離して下さい……。」




ジナの声は、小さく震えていた。








「俺たちの縄張りに、のこのこ入って来てさ。」




「そんなこと言っても、知らねぇよ。笑」




男はジナの腕を掴んだまま、ニヤッと笑う。








「俺たちのケンカに参加するか?」




「……え?」




男はそのまま、ジナを敷地の奥へと引っ張っていく。








「やだ……!離してっ!」








ジナは必死に腕を振りほどこうとする。




けれど、力では敵わない。








「離して!!」




必死に訴えるけれど、それでも離してもらえない。








どうしよう…っ。








ジナは、大きく息を吸い込むと、








「キャ――ッ!!」




思い切り叫んだ。












その数秒後だった。








「ジナ!?」




叫び声を聞きつけて、
ジョンウォンが建物の中から飛び出して来る。








「ジョンウォンくんっ……。」




ジナの目には、涙が浮かんでいた。








「その子を離せ!!」




ジョンウォンが強く言う。








けれど、男はジナの腕を掴んだまま離そうとしない。








「縄張りに入ってきた奴は、どうなっても知らねぇって言ったよな?」








「でも、その子は関係ない!」




ジョンウォンの声が低くなる。




「巻き込むな。」








「知らねぇよ。」




男は鼻で笑った。








その瞬間、




ジョンウォンが一気に距離を詰めた。








「……!」




男が反射的に手を離す。








「ジナ!逃げて!」




ジョンウォンが叫ぶ。








ジナは急いでその場から離れた。












けれど、ソヌのいる場所まで戻って来たところで、足が止まる。








「ソヌくん…。」




倒れたままのソヌを、置いていくことができなかった。








「僕は大丈夫だから……。」




「ジナちゃんは、外にいて。」








きっと、ソヌくんの言う通りにするべきだ。




ここは凄く危険だから。












ジナがふと後ろを振り返ると、ジョンウォンがさっきの男とやり合っていた。








ジョンウォンは相手の攻撃をかわす。




そして、勢いをつけて身体をひねりながら跳ぶと、








ドッ!








鋭い蹴りが相手に入った。








「……!?」




ジナは目を疑った。








と……飛び蹴り……?








ケンカって、拳で殴り合うものじゃないの……?








思わぬ光景に、ジナは一瞬その場に釘付けになる。




けれど、すぐにハッと我に返った。




今はそんなことを考えている場合じゃない。








ジナは後ろ髪を引かれながらも、急いで敷地の外へ出た。












工場の外にある塀に背中を預ける。








「……はぁ……。」




と息をついた。








本当は、このまま帰った方がいいんだろう。




でも、みんながまだ中にいる。








とても一人で帰ることなんてできなかった。












そのまま待っていると、




こちらへ近づいてくる足音が聞こえた。








誰……?








足音の方を見ると、




そこには、ソヌの肩を支えながら歩いてくるジョンウォンの姿があった。








「ジョンウォンくんっ、ソヌくんっ…。」








「ジナ……。」




ジョンウォンはジナの姿を確認すると、ほっとしたように息を吐いた。




「無事で良かった……。」




切なげに眉を寄せる。








「ごめん……。」




ジナは俯いた。




「来るなって言われたのに……。迷惑かけて……。」








「ううん。」




ジョンウォンは首を横に振った。




「迷惑なんかじゃない。」








そして、支えていたソヌをゆっくりと、塀にもたれるように座らせる。








「俺は、また中に戻らないといけないから。」




ジョンウォンはジナを見る。








「ジナ、ソヌの側にいてくれないかな。」




「うん。」




ジナは頷いた。




「ここにいるね。」








「ありがとう、ジナ。」




ジョンウォンは、ほんの少しだけ笑った。




「すごく助かる。」




「うん。」








「じゃあ、行ってくる。」




「うん……気を付けてね。」








ジョンウォンは頷くと、再び工場の中へと戻っていった。








その背中を見送りながら、ジナは胸の前で手を握りしめた。








どうか、みんな無事でありますように。









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