遅れて、痛覚が反応しはじめる
耐えられないほどの痛み
叫びもがく私を見て彼女は笑った
まるで、玩具で遊ぶ子供のように
切り落とされた腕からはボタボタと真っ赤な血液が出続けていた
そして、何も出来ぬまま私は壁際まで追いやられた
ドンッ
遂に自分の背中に壁が迫ってきたが、運良く屋上の扉だった
必死にもがき左手でドアノブを掴んだ
ガチャ
という音がして扉が開いた
扉の向こうにいたのは他でもない、グルッぺンという男だった
彼女も驚いたのか後ろに下がり警戒する
死は免れたが…なんて悪運だ
しかし、己が生き抜くためにはこうする他ない
残された左手で裾を掴み、奴の良心に訴えかける
やけに動揺しているようだった
色々な国から実験材料として集めた被検体
そいつらが幽閉されている場所は私しか知らない
ここで私が殺されれば、そいつらを見放すことになる
中には能力持ちもいる
良い交渉材料になるはず……
しかし、次に聞こえたのは全く予想外の言葉だった
鼻で笑うように続けた
途端に、奴の耳元から機械音が鳴る
「残念だったな」
嘲笑うようにそう言った
これで全てが終わったのだ
私が作り上げてきた全てが……
全身から力が抜けた
もう、何もかもどうでもよくなってしまった
私は扉の前に立ちすくむグルッペンを背にして立ち上がる
足が勝手に彼女の方へと向かう
なぜだか彼女に目を惹かれた
逆光に照らされたその姿が、これ程まで美しいとは
思いにも寄らなかった
彼女の顔を見あげた
まるで、少女のように微笑んでいた
全てを見透かしたような、透き通ったその瞳は
舞い散る桜のようだった
その時私は、彼女が「徒桜」と呼ばれていた意味がようやく分かったような気がした
彼女が腕を振り上げた時、死への恐怖は無くなっていた
嗚呼、神様
やはりこの研究は人類に必要不可欠だったのだ
道半ばであっても、彼女のような美しい方に殺されるのなら本望
─最期に映る景色が、あなたで良かった─
To Be Continued…
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。