第82話

徒桜
1,673
2024/05/19 11:18 更新
シリウス
あ”あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!
遅れて、痛覚が反応しはじめる
耐えられないほどの痛み
(なまえ:名前)
あなたの名前
あはっ
(なまえ:名前)
あなたの名前
あははははっ
叫びもがく私を見て彼女は笑った
まるで、玩具で遊ぶ子供のように
切り落とされた腕からはボタボタと真っ赤な血液が出続けていた
そして、何も出来ぬまま私は壁際まで追いやられた
ドンッ
遂に自分の背中に壁が迫ってきたが、運良く屋上の扉だった
必死にもがき左手でドアノブを掴んだ
ガチャ
という音がして扉が開いた
シリウス
(これで逃げれる……!!)
???
やあ、シリウス
シリウス
……?!貴様は……!!
(なまえ:名前)
あなたの名前
?!
扉の向こうにいたのは他でもない、グルッぺンという男だった
彼女も驚いたのか後ろに下がり警戒する


死は免れたが…なんて悪運だ
シリウス
ど…どういう事だよ?!?!私はあんなの聞いてない!!!!なあ、助けてくれよ!あんたの部下なんだろ?!?!
しかし、己が生き抜くためにはこうする他ない
残された左手で裾を掴み、奴の良心に訴えかける
グルッぺン
しかしな…俺もあれを見たのは初めてだ…
グルッぺン
迂闊に動くとどうなるか…
やけに動揺しているようだった
シリウス
いいのか…?!ここで見放せば何千もの人間が囚われたままだぞ…?
色々な国から実験材料として集めた被検体
そいつらが幽閉されている場所は私しか知らない
ここで私が殺されれば、そいつらを見放すことになる
中には能力持ちもいる
良い交渉材料になるはず……



しかし、次に聞こえたのは全く予想外の言葉だった
グルッぺン
はぁ、何を言い出すかと思えば……
シリウス
……は?
鼻で笑うように続けた
グルッぺン
その事なら…
途端に、奴の耳元から機械音が鳴る
グルッぺン
…あぁ、俺だ
………了解だ、ご苦労だったな……
グルッぺン
「別棟含め全ての国民を救出した」との事だ
「残念だったな」
嘲笑うようにそう言った
これで全てが終わったのだ
私が作り上げてきた全てが……
シリウス
そん……な…
全身から力が抜けた
もう、何もかもどうでもよくなってしまった
私は扉の前に立ちすくむグルッペンを背にして立ち上がる
足が勝手に彼女の方へと向かう


なぜだか彼女に目を惹かれた
逆光に照らされたその姿が、これ程まで美しいとは
思いにも寄らなかった
(なまえ:名前)
あなたの名前
ふふ…
彼女の顔を見あげた
まるで、少女のように微笑んでいた
全てを見透かしたような、透き通ったその瞳は
舞い散る桜のようだった
その時私は、彼女が「徒桜」と呼ばれていた意味がようやく分かったような気がした
(なまえ:名前)
あなたの名前
……あはは
彼女が腕を振り上げた時、死への恐怖は無くなっていた


嗚呼、神様
やはりこの研究は人類に必要不可欠だったのだ
道半ばであっても、彼女のような美しい方に殺されるのなら本望
─最期に映る景色が、あなたで良かった─
To Be Continued…
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