町から家へのいつもの帰り道。
小さな細い道。
この道は家に帰るには回り道になっている。
あの日、事故で死ぬと思われた俺は一人の女の子に助けられた。
咲葉という、魔法を使う吸血鬼に。
深い森の奥だった。
彼女は月を背にして黒い影となっていた。
俺は、その影と彼女の口に光る牙を見て、恐ろしくなって逃げだしてしまった。
今思えばきっと、何かがはじまる気がしていたんだろう。
俺は、彼女の顔を忘れたことはない。
優しそうで、きれいで、澄んだ瞳。
あの魔女は、俺の最短帰り道のそばに住んでいるらしい。
だからわざと遠回りをする。
逢わないように
俺と彼女が再び出会うとき…
それは”終わり”のシナリオの始まりだから
『会いたい』なんて、『触れたい』なんて、『話したい』なんて、思わない。
彼女らにとって食料である俺と、人に害を与えるかもしれない彼女が「出会う」
それが”終わり”なんだから。
残酷だ、なんて世界を罵ったってこの運命は変わらない。
…あぁ
《 人 間 と 吸 血 鬼 》なんだ……












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。