第5話

辛いときは甘えさせて
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2026/02/02 04:56 更新
公演期間が終わった日の夜。
私は家に帰ると、何も言わずに凪様の背中にそっと近づき、ギュッと抱きついた。
不意を突かれて、彼女は少しだけ驚いた声を出す。
彩凪翔
彩凪翔
あなたの下の名前帰ってきたんや。
音聞こえんかったわ。
振り返ろうとしながら、柔らかく笑う。
彩凪翔
彩凪翔
抱きついてどうしたん?
甘えたさんやな。
けれど私は答えない。
そのまま彼女の背中にグリグリと頭を押し付けるようにして、ただ甘える。
様子がおかしいことに気づき、
彼女はそっと私の腕をほどいた。
ゆっくりと振り返る。
そこには、今にも泣き出しそうな顔をした私。
彩凪翔
彩凪翔
……どうしたん?
声のトーンがグッと低く、優しくなる。
彩凪翔
彩凪翔
なんかあったん?
私は唇を噛んだまま、何も言わない。
それ以上問い詰めることはせず、
彼女はただ私を抱きしめた。
大きな腕で包み込んで、背中をトントンと一定のリズムで
優しく叩く。
彩凪翔
彩凪翔
大丈夫やで。
言葉はそれだけ。
しばらくすると、あなたの下の名前の肩の力が抜けていく。
呼吸が整い、やがてスヤスヤと寝息が聞こえ始めた。
彩凪はそのまま動かず、
片手であなたの下の名前の髪を撫でながら、
そっとスマホを手に取る。
彩風に短くメッセージを送った。
しばらくして返事が届く。
『あなたの下の名前が千秋楽で台詞を忘れてしまって、
 周りがフォローしたんです。練習しすぎてほかのシー
 ンと台詞がこんがらがってしまったみたいで。
 終わった後、すごく落ち込んでいました。』
画面を見つめたまま、彩凪は小さく息を吐いた。
腕の中で眠るあなたの下の名前の額に、
そっと自分の頬を寄せる。
彩凪翔
彩凪翔
……悔しかったんやな。
小さな声で囁き、頭をゆっくり撫でる。
責める気持ちなんで、微塵もない。
どれだけ頑張ってきたかを知っているから。
彩凪翔
彩凪翔
よう頑張ったよ。
そう言って、もう一度ギュッと抱きしめる。
やがて彩凪も目を閉じた。
腕の中の温もりを確かめながら、
2人は静かな眠りに落ちていった。

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