公演期間に入ってから、私の毎日は一気に忙しくなった。
朝早く出て、帰るのはいつも夜遅く。
クタクタで玄関の扉を開けると、
部屋には温かい匂いが残っている。
テーブルの上には用意されたご飯。
そしてソファには、毛布をかけた凪様が座ったまま眠っていた。
胸がキュッとなる。
最近忙しさに追われて、キスすらしばらくしていなかった
ことを思い出す。
私は音を立てないようにそっと近づいた。
起こさないように慎重に顔を近づけて、
眠っている彼女の唇に軽くキスを落とす。
それだけで胸がいっぱいになって思わず、
と小さく笑ってしまった。
その瞬間。
彼女の声がして、私はビクッと跳ねる。
彼女はゆっくり目を開けて、眠たそうに笑った。
私はムッとして、頬をプクッと膨らませる。
その反応が可愛くて、彩凪は完全に目が覚めた。
あなたの下の名前の手首を優しく引いて、
何度も何度もキスを落とす。
額、頬、唇に。
私は抵抗しようとするけど、力が入らない。
気づけば耳まで真っ赤になっていた。
それを見た彼女は、心底楽しそうに笑う。
私は顔を隠そうとするが、彼女は離してくれない。
ギュッと抱きしめて囁く。
私はそっと腕を回し、彼女の首元に顔を埋めた。
舞台の外でも、忙しい日々でも、ここが帰る場所。
そのことを確かめるように、2人はしばらく離れなかった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。