【影山律side】
「じゃーん!デート!」と言って、兄さんと手を繋いでるのを見た時、僕はどんな顔をしていただろう。
久しぶりに見たあなたさんは、一瞬誰か分からなくて。
でもすぐに思い出した。
笑い方は変わってなくて、話し方も変わってない。
変わったのは何だろう……何も変わってないのかもしれない。
実は今日、学校帰りに偶然あなたさんと会った。
「この前、霊幻さんが食べてたたこ焼き屋さんを探してるんだ〜」と話された。
「ここら辺で有名なたこ焼き屋さんなら、〇〇じゃない?」と答えたら、「近かったら案内してほしいな」と言われたので、案内することにした。
たこ焼きの8分の1って結構でかくないか?とは思ったものの、あなたさんは「はいっ!」と竹串にさしたたこ焼きを僕の口の前に持ってきた。
あなたさんの腕をつかんで、たこ焼きを口に入れる。
あー、美味しい…と思って顔をあげると、
と、ちょっとニヤけてるあなたさん。
意識しろって思って腕を引いたけど、全然効いてない。
そう言ってるあなたさんだって、モテてるじゃん、って言おうとして気づいた。
「え?ほんと??恥ずかしいな!、」と言ってはにかむと、全く反対のとこをひたすらこするあなたさん。
ちょっと面白い。
あなたさんの口の端に付いてるソースを、指で取る。
そのまま舐めると、
あ、やっと照れた。
ここまでしないと照れないか、、
なんて若干怒ってるけど…
僕、あなたさんのこと落としたいと思ってるんだけどなぁ…っていうのは心にしまっておこう。
今はまだ、この関係で。
影山律の場合 end
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。