ここ1ヶ月、最近助手の様子がおかしい。
どうおかしいかというと、なぜかよそよそしい。
それと、動きがぎこちない。いまだって場所を覚えたはずのフラスコを取るだけのはずなのに、キョロキョロしたり、無駄な動きがいつもより多い。
と、思ってみているとこちらの方へ、片手を顔に近づながら目線を泳がせ、パタパタ早歩きで戻ってきて、私と目を合わせずに、フラスコをぐいっと渡して来た。
先程、彼女の顔は私のほほえみで確かに引き攣った。
おどおどした彼女は私と目をやっぱり合わせないで、すぐさま、
違うんですっ!!スミマセンッッ!!
と謝りまめねこのいる反対方向へあーおひるたべさせないとーっと棒読みで言いながら体をへ向けてしまった。
その時、私の中で嫌な予感が走った。
思い返せばそう感じてきた。
まず目が合わないし、口数も少ない、さっきからなんか実験の補助が雑など、あげればキリがない。
嫌われたとしても、無理はない。
自分は昔から図々しい所があるとは自覚していた。知っててやっていた。あなたくんは優しいし、まず可愛い私なら許してくれると思ったが…
そう決めた私は、彼女に優しい声色を作って、声を掛けた。
向こうは顔をこわばらせて明らかに動揺している。
あんまりにも分かりやすいから、傷つく反面、なんだかにやけそうだが、真剣に穏やかな自分を演じる。
淡々と述べると、苦悶の表情を浮かべる。だが俯き気味で返事はない。
私はずっと彼女に好意を抱いていた。
研究所でまめねこと2人きりで、その為いつしか孤独を感じ始めていたが、気づけば出会い、このような形でそばに居てくれる温かな存在であってくれた、彼女への感謝故の気持ちなのかもしれない。
だから、兎にも角にも嫌われるなんて最悪だった。
大切にするのだと、決めたのに。
互いに無言の時間はしばし3分間ほど続いた。
私が言葉を探っていると、彼女が口を開く。
嫌いじゃないのならこっちのもんだと、私は言葉をポツポツ話しだす彼女をじっと見つめる。
その瞬間顔を上げて、こちらを真っ直ぐに見つめた、その彼女の声は、徐々に私の脈を早める。
おまけに顔が赤くなってしまい、そむける。
好き、というのは必ずしも、恋愛感情だけをいうのではなく、仕事の仲間として、あるいは友人として、というだけだとも言えるから、
これはどういう事を意味する好きなのだろうか、気になる所。
彼女に優しく問いかける。
潤み始めた瞳で彼女は言葉を返す。
そう言った時、あなたくんはボロボロと泣き出した。
鼻を真っ赤にして涙を拭い続ける彼女に駆け寄る最中、
私は気がついた。
この今の行動は、
彼女の温もり対する
感謝という名のこの好意は、
愛であると。
きっと、これまでも、これからも、友愛、敬愛、親愛、形は何だとしても、私達の間には色んな温もりが生まれていけるのではないだろうか。
だとすればそれは唯一無二で代わりの効かない、
とても尊い関係性だと。
私が大切な花を抱えるように、優しく、
包み込んだ彼女が、
その内泣き止むと、私は微笑んでゆっくりつげる。
あぁ、腕の中、上目遣いで
こちらに答える彼女が愛おしい。
そっと額にキスをする。
あなたはそう言いながら明るい笑顔で私の事を抱きしめてきた。
私もそう言い抱きしめ返す。
甘い時間、平和な物語はここから始まった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!