第7話

〜雷〜 二口堅治(Lv2)
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2021/07/29 11:32


先生「……x=5√21になる、これを③の式に代入して……」



夏休みの補習。1週間の期間中に3日以上行くことが義務付けられていて、今日はその最終日。






どの日も全員授業は上の空だったけど、今日に限ってはその理由が違った。



いつもは机に伏せるか、下を見てスマホをいじってるであるはずのみんなの意識は、窓の外に________






ゴロゴロゴロッ!!





男子「うおぁぁあっ!笑」

「やべーっ!でけぇの落ちたな笑」





……そう。滝のような大雨と鳴り止まない雷が、みんなの意識を窓の外に向けていた。







………もう、本当に心臓に悪い……



こんなことなら、行ける日の内に行っといて、最後まで補習引っ張らなきゃ良かった…。






先生「おーい。集中できないのは分かるが、今は授業だぞー」



男子「せんせーっ!大雨警報出たら、俺たち全員帰れますか?」


先生「バカ野郎!こんな大雨の中で先生たちが帰らすと思うか!?」



男子「ちぇーっ、ケチ〜…」





先生は男子たちに呆れながらも「ほら、続きからいくぞ。次に、この式を…」と説明を続行。






もう、授業集中できるレベルじゃない…。



ゴロゴロと地の底から鳴り響くような雷鳴に、ビクッと肩を震わせ、その度に心臓が止まりそうで“恐怖”という単語が頭を支配していた。








二口「先生ー」




私の後ろの方から声があがる。



先生「お、二口質問か?珍しいな笑」


二口「ちょっと気分悪いんで、保健室行ってきまーす。」


先生「おいっ!」



二口と先生のやり取りに、クラスが爆笑する。



二口「あ、あと…ちょっと1人じゃ行けなさそうなんで、あなたさんに着いてきてほしいんですけど、」



あなた「え……私?」




ただの冗談だと思っていた事に、自分が巻き込まれて、思ってもみない展開に椅子の上で固まる。




二口「ほら、行くぞ。」



あなた「え、ちょっ……!」





そのまま腕を掴まれて、引っ張られながら教室を出る。



教室からは「ひゅーひゅー」とはやし立てる男子の声と、「ウソでしょ…!?」とキャーキャー悲鳴を叫ぶ女子の声で騒がしくなった。













ガラッ







二口「お、先生居ないじゃん。ラッキー」


あなた「そりゃ、夏休みだし…保健室の先生も休みでしょ。」


私のド正論を二口は「確かになー」と軽く受け流すと、「よっと」と言ってカーテンの奥にあったベットに腰掛けた。



あなた「……で、私は何であんたのサボりの共犯になんなきゃいけなかった訳?」


二口「え、1人より2人の方が怖くないとか言うじゃん。」


あなた「だから、何で私なのって話!戻ったら女子になんて言われるか……」



補習は2クラス合同だから、今まで関わりがなかった隣のクラスの女子も混じってたから…



あの悲鳴を聞く限り、戻ったらただじゃ済まないかもな…





と、そんなことを考えてると、







ピカッ




雷の光がさっきよりも眩しくて、短い間隔の後、すぐに雷鳴が響いてくる。




あなた「……っ、」



二口「ビビりかよ笑」


私のしゃがみこむ様子を上から見下ろして、笑いながらからかってくる。


いつもなら、「上から目線ムカつくー」とか言って、「どうせ立っててもお前チビだから見下ろしてるし、」って言い合いになって……




けど、今はそんな余裕がないくらい、私はキャパオーバーしていた。








二口「……」




しばらく、雷鳴は聞こえなくなって、なんとか落ち着くために深呼吸を繰り返す。


と同時に無言になっていた二口も気になって、私は顔を上げた。



あなた「…二口、どうかs________」






その瞬間、私はさっきよりも強く腕を引かれ、上半身を屈ませた二口の胸の中に、すっぽりと収まった。






あなた「え///ちょっ……二口!離して_______」






二口「…いいから。……言ったじゃん俺、“1人より2人の方が怖くない”って…」






……もしかして二口、私が雷に怖がってるのに気づいてた…?




二口「素直に甘えときゃ、可愛いのにさ。」


そう言う二口の声は、今までに聞いた事ないほど低くて、落ち着いてて、大人びてて。





こんな二口、知らない………





雷の恐怖よりも、今まで知らなかった同級生の一面に対して、知らないうちに身体が震えていた。






二口「まだ怖ぇの?笑」


あなた「……そんなことない。」


二口「…今更なに強がってんだよ笑」



そう独り言を呟きながら、私の腰に撫でるような手つきで腕を回して、さらにギュッと私を抱きしめる。






………こいつは、こういう事に慣れてるって分かってるのに。



どうしようもなく心臓がうるさくて、鳴り止まなくて、








……と、それは私だけでなく、私の左肩辺りから伝わる、私の心音より速いペースでドクドク鳴ってるのが分かった。




あなた「………二口の方が、心臓うるさい…」



二口「……っお前…、//」






「言ってくれるじゃん…」とボソッと呟く声が耳に入ってきて、瞬間、二口が後ろに倒れ込んだせいで、私はそのまま前のめりになってベットに飛び込む形となっていた。





ベットに倒れ込んでも二口は背中に回した腕を離してくれなくて、






そのまま二口は私を抱きしめたまま転がって、私の上に乗るような体制へと変える。




あなた「ふ、たくち……っ…?///」


二口「…もう、逃げ場ないけど?」




そう言って、二口はいつもの何か企んでそうな怪しげな笑みを貼り付ける。









徐々に距離が近づくその唇から……逃れる道はどこにもなかった。




























…………………………!作者より!……………………………






皆さんの所は大雨や雷、大丈夫でしたか?




このネタを思いついたのは、沙羽のtalkroomにてコメ欄で雨や雷の様子の実況中継をしていた時…





私が実体験した、かなりの雷の恐怖を思い出して書いてました…(ほとんど後半イチャコラで、雷に怖がる要素無かったけど笑)








この後、………多分、明日の朝になっちゃうけど、同じ〜雷〜テーマで、別キャラver.作ろうかと思ってます!





誰が来るかは、投稿されてからのお楽しみ〜!!











……あ、この作品『放課後』がお約束なのに、授業中の描写になってしまった。





まぁ、夏休みの補習なので、無理やりのこじつけだけど『授業がない時=放課後タイム』ってことにしといて?笑









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