美琴は朝弥に視線をやり、そうして、銃のトリガーを引いたときの心境を思い起こす。
朝弥に向けて、美琴は微笑んだ。
一瞬だけ彼は言葉に詰まり、そうして返答をする。
静かな夜に似つかわしくない賑やかな声が、ふたりのやり取りを遮った。
見ると、虹子が手を振りながら走ってきている。スリットの深いチャイナドレスで走っているために、たくましいふとももが際どいところまで露出していた。
彼は美琴達のところにまで走ってくると、紫のラメだらけのネイルをかかげる。確認すれば、たしかに端が僅かに欠けてしまっていた。
悲しげな声を出した虹子は、そこではっとして美琴と朝弥に双眸をやる。
鬼ヶ崎が親指で、美琴を指し示した。
彼と美琴を交互に見た虹子はきょとんとして目をしばたたき、次いで瞠目する。
笑っていた虹子が、急に真剣な面持ちになる。
肯定を受け、虹子が丸くした目を美琴に注いだ。
虹子は美琴の肩に腕をまわして密着し、頬ずりをする。
美琴は、鬼ヶ崎が冗談でそうくちにしたのだとばかり思ったのだけれども、どうやら彼は本気らしかった。
ちらりと美琴が朝弥に視線をやると、それに気付いた彼は美琴に微笑を返した。
美琴は、朝弥と虹子に頭をさげる。すると、虹子がこれまで以上に楽しげな声を出した。
朝弥は美琴に手を差し出す。
握手を求められているのだと気付くのに、少しの間があった。美琴はあわてて、朝弥と握手をする。
退魔師の仕事が危険であるのは先程の経験で痛感したけれど、それでも、朝弥と行動を共に出来る喜びを抑えることは難しかった。
今の握手にも、深い意味が込められているわけではないのは理解している。が、理解はしていてもやはり胸の鼓動は高鳴ってしまうし、体温もいくらか上昇してしまうのだった。
それに、今後は自分の努力が世界を救うだけではなく、朝弥を手助けすることにも繋がるのである。高揚するなというほうが、無理な話だろう。
頑張りたい――と、単純ではあるが、ただ純粋にそう思った。
そこまで考えて、美琴ははっとする。
笑うと、彼はその笑顔のまま倒れていった。
倒れた朝弥を、虹子が力任せに激しく揺さぶる。朝弥の頭が、まるで壊れたオモチャのようにがくがくと揺れた。
言うと、鬼ヶ崎は指輪型の通信機でさっそく連絡を取り始める。
虹子の獣じみた雄たけびは、静かな夜の街に反響して広がった。通報でもされてしまうのではないかと、美琴は気が気ではない。
そんな虹子に強く抱きしめられて、朝弥が意識を失った。出血のせいもあってか、顔色が死人のようである。
美琴は、退魔師としてのこれからの活動に、早くも不安をいだき始めた。
そして、朝弥のためにも、一刻も早い救護班の到着を祈るのであった。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。