コナンが帰った後。
ポアロには再び穏やかな時間が流れていた。
食器を片付けながら、
安室はふと窓の外へ視線を向ける。
ガラス越しに見える本屋の店内では、
あなたの偽名の下の名前(カタカナ推奨)が相変わらず本を読んでいた。
コナンの言葉を思い出す。
───人と距離を取るのが上手い。
確かにそうかもしれない。
組織でもそうだった。
誰かと必要以上に親しくなることはない。
任務以外で連絡を取ることもほとんどない。
ベルモットだけは例外のようだが。
聞いた話によるとロゼは、
幼い頃から組織で育った人間らしい。
だからこそ。
安室には時々分からなくなる。
彼女は本当に組織を信じているのか。
それとも───
考えかけたところで。
スマートフォンが震えた。
視線を落とすと、
送信者は見慣れた名前だった。
ジン。
短く息を吐く。
画面を開くと、
送られてきたのは次の任務の集合場所と時間。
それだけだった。
小さく呟く。
だが。
続いて届いたメッセージを見て、
安室の眉がわずかに動いた。
『ロゼと組め』
数秒。
無言。
そして小さく笑う。
ロゼとは最近何度か
共同任務を組まされている。
理由は分からない。
実力を試されているのか。
それとも別の意図があるのか。
どちらにせよ、断る理由はない。
安室はスマートフォンをしまう。
そして再び窓の外を見た。
道路の向こう。
本を読む銀髪の女性。
何を考えているのか分からない顔。
組織でも。
本屋でも。
同じように見えるその横顔に、
安室は少しだけ目を細めた。
そんな独り言には、もちろん
返事が返ってくることはなかった。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。