あれから5ヶ月。
アレムとは常に一緒にいるくらい仲良くなったが、
フラムとの関係は修復できていない。
なんなら前よりも酷くなっている。
前まではフラムがいないと不安で寂しくて怖かった。
でもアレムと友人になってからアレムがフラムの代わりのようになり、段々と不安や恐怖は克服してきていた。アレムにはとても感謝している。
いつまでもフラムに頼っている訳にはいかないと、あえて少し離れることにしたのだが、離れすぎてしまった。
意外にも彼女の心はデリケートで、僕は知らず知らずの間に傷つけてしまっていたのだろう。
謝りたいが、フラムは謝る時間もくれない。
もう、修復不可能なのかもしれない...
アレムは少し...馬鹿なのか、ありえないことを真剣な顔で提案してくる。
背後から聞こえた重低音にハッとする。
分かってはいたし、自分でも望んでいた事だが少し残念に思ってしまった。
バサバサとはためくローブを名残惜しく見送った。
と思ったのだが、セブルスさんはピタッと止まり、こちらへ引き返してきた。
そう僕に告げると、セブルスさんは再び自分の席へと向かっていった。
食事が始まっても暫くセブルスさんの優しさに浸っていた。
明日、2人きりで話してみよう。
時間は作ってもらうものではなく、作るもの。
ですよね。セブルスさん。
すぐさまローブに袖を通し、大広間へ走っていった。
いつもの席の隣は空席のまま。
フラムと関係が崩れ始めてから、食事が喉を通らなくなった。それだけでなく、味も感じられない。
誰よりも食べることが大好きな僕にとっては苦痛だ。
朝食を取り終え、クィディッチの練習場へ直行する。
幸い、フラムは片付けをしている最中だった。
分かっているつもりだった。
でも、分かってなかったんだ。
君は僕のことを。
僕は君のことを。
そうしてすれ違っていた。
互いに「知って」はいたのに。
全てが分かった今、申し訳なさと怒りが湧いてきた。
僕よりも少し小さなその体を優しく抱き締めた。
お互いに抱きしめあってから数十秒。
外からなにか声が聞こえた。
テントから影が動いた。
テントの裏の影はアレムだった。
恐らく僕たちのことが心配で隠れて聞いていたのだろう。行儀の悪い子だ。
涙と鼻水でグチョグチョな顔で僕達にハグしてきたアレムは、なにか僕たちに言っているがもはや聞き取れない。
その日は僕の絶叫がホグワーツ内に響き渡った。
翌日の夜、僕はセブルスさんに感謝と謝罪を伝えに彼の部屋の前に立っていた。
数分後、入れという言葉もなく、扉が開かれた。
唐突に現れた黒い物に引き寄せられ思考が停止する。
目の前の暗闇は暖かい。
そこで気づく。
もしやセブルスさんに抱き締められてる...?
ということは目の前の暗闇はセブルスさんのお胸……
駄目だ。頭がクラクラしてきた。鼻血出ないかな。
どうにか理性をつなぎ止め、尋ねる。
離すために緩められるはずのセブルスさんの腕は再びきつくこちらへ引き寄せされる。
そのせいで不覚にもみっともない声を出してしまった。
セブルスさんの腕が少しだけ緩められた。
今、僕は部屋の扉にもたれて座っているセブルスさんに抱き締められている。扉は閉められて。
おまけに頭をセブルスさんの胸に押し付けられている為、何も見えない。まるで少女漫画の一コマだ。
なんだか今日はしおらしいというか、いつもの堂々とした立ち振る舞いが全くもって見られない。
何かあったのだろうか。
このまま帰ろうかと思ったのだが、セブルスさんの部屋に入ってからずっと気になっていることがある。
それを聞かなければ帰れない。
いつにもなく気弱で謝罪も多い。
僕の声に最初、気づかなかった。
僕が言うまで抱き締めている事にさえ気づかない。
自分の胸に僕の顔を埋め、周りや自分の表情を見えなくさせる。
それに、扉を開けた時に見えたセブルスさんの顔。
……そして血の匂い。
嫌な予感がする。
セブルスさんが閉心術を常時かけられていない。
何よりの証拠が見つかってしまった。
そう言うと、ようやくセブルスさんは僕を解放し、部屋の奥へと向かっていった。
数分後、戻ってきたセブルスさんの顔は扉を開けた時よりも少し穏やかな表情へと変わっていた。
目は腫れたままだが。
きっとセブルスさんはさっきどういう顔をしていたのか、今自分がどんな酷い顔をしているのか全くもってわかっていないのだろうな。
……僕の中の保護欲が掻き立てられた。
おやおや、案外気にしてるな。
そんなところも愛いな…
寮への道のりでセブルスさんと沢山の話をした。
いつもなら僕が一方的に話し続けるのだが、そのときはセブルスさんも時々話に乗っかってくれた。
いつも通りセブルスさんにメロメロな僕のままでいたが、内心嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
今夜でセブルスさんとの距離が少しでも縮まったならいいのだが。明日に期待...かな。
アレムと僕は寝起きの為、ふらふらと着替えながら大広間へ向かった。
昨晩セブルスさんに朝食貰ってもいいか聞いたけど、結局答えてくれなかった。
...沈黙はYESと捉えていいよな。
そんな話をしていると、やっと大広間へ着いた。
ちょうどダンブルドアが話すところだったので、僕は目の見えないアレムと急いで席に着いた。
それからダンブルドアの話が終わり、朝食の時間になった。
いつも通り僕は周りの肉を食べ尽くし、腹八分目までも行かずに終わってしまった。
一応目の前に食事があるかと言ったらあるのだが、これ以上食べたらみんなの分がなくなってしまうため、普段はこれくらいで終わりにしている。
しかし今日は少し多く食べられる。……かも。
セブルスさんの方を見ると予想通り手が止まっている。
これは頂けるチャンス……
ウキウキしながらセブルスさんの元へと行く。
マクゴナガル先生の魔法で椅子が飛んできた。
その後もセブルスさんの食事を奪っ...頂いて毎日お腹いっぱいになることが出来た。
セブルスさんの近くに居られてご飯も食べられるなんて幸せがすぎる……♡
しかし幸せはそう長く続かない。
それは4年生になってすぐの事だった。
ガゴンッ
バンッ
ガラガラ
バチバチ
何事かと思うほどの大きな音。
建物がどんどん崩れていき、ホグワーツ内にいる先生は片手で収まるほどしか居ない。
生徒達の恐怖の叫びが絶えず、外に行くにつれて声は消えていく。……死んでいる。
……セブルスさんの姿が見当たらない。
周りの声や音が先程とは比べ物にならないほど大きくなった。
皆は大広間へ駆け込み、震えている。
遺書を書き始めるもの。
神に祈るもの。
錯乱しておかしくなってしまうもの。
誰1人、見当たらない生徒や先生を助けに行く者はいなかった。
マクゴナガル先生の手を無理やり振りほどいた。
僕の魔力は生まれつきとても多い。
だから多くの魔力を消費する魔法も小さな頃から使えた。
そう。僕は強い。
決闘で負けたことは無い。
先生相手でも張り合えた。
皆を守ることが出来る。
そのために戦い勝つことも。
闇の魔術も使った事がある。
大広間に結界を張った。
僕を除いて。
そう一言、そしてセブルスさんの元へ走り出した。
激しい閃光が飛び交う。
特に緑色が目立つのは、先生達が押されている証拠だろう。
外に出て見えた光景はまるで鮮やかに描かれたピカソのゲルニカのようだ。
教員と死喰人の数は全く釣り合っていない。
1生徒が来たところで状況が変わるとは到底思えなかった。しかし、僕は今のホグワーツ内で1番強い。
恐らく教員と死喰人を互角に張り合わせるくらいのことは出来る。
死喰人はアバダケダブラを使う。そのため防御は出来ない。……すべきは攻撃のみ。
セブルスさんは何処に...
セブルスさんの後ろから死喰人が殺しにかかっていた。
闇の魔術は闇に堕ちた者のみが使う恐ろしい魔術。
いや、違う。
守りたいものを守る者が使うのだ。
杖先から出た緑色の閃光は見事に死喰人へ命中。
また1人殺しに来た死喰人を操り、飛んでいる死喰人にぶつける。流れ星のように死喰人が落ちてゆく。
落ちた死喰人共をすかさずインカーセラスで拘束し、殺す。
確実に死喰人の数は減っていっている。
僕の目的はセブルスさんを守ること。
セブルスさんだって味方が増えて嬉しいはずだ。
何故、彼は僕を逃がそうとするんだろうか。
教師としてならば、今は戦場なのだから関係ない。
とにかく、守ってみせる。
相手の腕を切り裂き、杖を奪う。
奪った杖を折り、首に自分の杖を突きつける。
段々と閃光が見えなくなってきた。
瓦礫の音もしない。
目の前にいるルシウスとセブルスさんの声、そして生き残っている死喰人の呻き声だけが聞こえる。
ルシウスに対して僕は何故かイライラしていた。
その怒りをぶつけるかのように微かに息のある死喰人へ呪文を放つ。
最後にセブルスさんへ何か耳打ちしたようだが、何を言ったのかは聞き取れなかった。
ただ、その言葉がセブルスさんを弱らせてしまう事であるのは分かった。
最後の魔法は相手に届かなかった。
自分の体を見てみると、ローブが血塗れになり切り裂かれていた。
セブルスさんを守ることに必死で自分の痛みを感じていなかったみたいだ。
セブルスさんをおぶって大広間へ向かう。
今まで真剣に受けとって貰えなかった思いを今ここで伝えなければと思った。
もしかしたらこれで最後かもしれない。
後悔を残して死にたくない。
セブルスさんに愛を知って欲しい。
まだセブルスさんとデートもできていないのになぁ...
セブルスさんの声が聞こえない。
息も...
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
意識が遠のく。
セブルスさんと一緒なら、このまま死んでも良いかな
そこで僕は瞼を下ろした。
あら、あらあら。何だか早く書けました。
めちゃ急いでたので見るに堪えないかもしれません。
すみません。
ルシウスの口調が本当に苦手で全然ルシウスじゃなくなってしまいました。申し訳ないです。
多分次回結ばれます。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。