第3話

皆んなが好きな私の父
4
2024/07/04 23:56
(なまえ)
あなた
給食で生き延びる
今でもあまりないだろうが私は給食のある幼稚園に通っていた。毎日、喘息以外の日は給食だけが命綱だった。


具のないスパゲッティを昨夜ありつけた。

母方の祖父は沖電気の創始者の一人で仲間を殴ってクビになり、軍事用電気製品を作り財を成した成金であった。
そんな祖父には妾が6人いた。
その一人のロシア人とのハーフであった妙子が祖母だった。

そんな祖父の援助があるから通えている私学の幼稚園だった。

母は主婦、父は京急電鉄で線路の整備士をしていた。

私が生まれる前は自衛官だったらしい。

ただ父は容姿端麗で人たらしであった。
仕事よりもキャバレーで警察官なんだと嘘をついていた。

ほとんど家にいなかった。

父の家庭環境はあまり聞かされていない。
3人兄弟の末っ子で甘やかされて育った人だと母は言っていた。

父は自分そっくりの私を自慢げに連れて歩いていた。
だが風呂にも入れてもらったこともなく、
タバコ屋と近所の大きな公園を手を繋いで歩くくらいだった。

息を吐くように嘘をつく父だけど大好きだった。

父が何に浪費していたかは、よく分からない。
嘘の為の身の回りの品だろうと思う。
理髪代、スーツ、時計、

後から聞いた借金はそんな物だけではない多額の物だった。

父は金のある母方の実家によく行っていた。
一家全滅の風邪のなかでも一人一人に焼いたネギを首に巻いて回ったこともあった。

父は母の兄の経営する会社の社員に保険証を借り、
その人の名前でサラ金に借金するという事までした。

伯父は石橋が捕まるとマズイと方々のサラ金業者に現金を持って返済して回ったという。

ネギ巻いたくらいでなんて気前がいいかと思うが上田家は皆、石橋が大好きだった。

上田家とは母の実家。石橋とは父の姓である。

せっかく伯父が返済したのも束の間でまた督促の電話だけでなく家にもヤクザのような取り立て屋がくるようになった。

母は伯父の会社のルート営業を始め更にエイボンレディも始めた。

父は仕事に行かなくなって昼間、母のいない間に寝て夜街に繰り出すという生活をしていた。

母のいない時間に父と散歩に行くのは楽しくて幸せだった。



プリ小説オーディオドラマ