第9話

エピローグ
463
2019/10/20 12:33
朝食を作っていると、突然左肩に何かが乗ってきた。
はよ。何作ってんの?
あなた

おはよ。んー、いろいろ。もうちょっと待ってて

りょーかーい。ここでもいい?
あなた

ここで待つってこと?危ないからダメです

えー
駄々をこねる子供のような声を出したと思えば、ふと気付いたように言う。
そういえば、今日あれだな。あの日だ
あなた

……数年前から答えさせようとするの好きだよね。なに?何の日?

今日は、お前が高校生の時に嫌だって言った“嫉妬記念日”
あなた

……ああ、あの日か

思い出したくないから言わないでと言ったのに、遊は相当この時のことが嬉しかったのか毎年必ず話題に出してくる。まぁそれは他の日もだけど。

遊の雰囲気がすぐにも歌い出しそうな上機嫌になる。
勉強教えてって控えめに言ってたけどぜったい対抗心だよなー、まじ可愛かった
あなた

それ、ほんと黒歴史だから。忘れてまじで

基本的にあなた関連はなんでも憶えてんだけどなー俺。忘れるの難しい
あなた

そこを頑張るの、ほら学年4位だったでしょいけるよ!

んー……!
っはは、憶えてるなあ
遊の穏やかな笑い声を聞いて、自然と口から笑みが漏れた。
じゃ、俺そろそろあっち行って待っとくわ
あなた

はーい

肩から重みがなくなり、行くのだろうと思ったが、何故か、するりと右肩の方に腕を回してくる。

彼を振り向くと、視線が合う前に唇を重ねられた。
今日も可愛いな。愛してるよ
甘く微笑むと、遊はキッチンを出ていって後方にあるダイニングへ向かっていく。

私はお玉を持っていない左手で顔を覆った。
あなた

……もう……




鷹羽遊。夫になった彼は――ますます、愛が重い。

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