💛サイド
結局寝られなくて、布団の中でスマホをいじっているとスタッフさんから連絡が来ていた。
スタッフ(お疲れ様です。すみませんがこの動画はボツになりました。)
——この動画って……
その一文を見た瞬間、嫌な予感が胸をよぎる。
そうだ。
この動画を撮った日から、舜太以外のメンバーがどこかめんどくさくなったんだ。
ゴクリ、と喉が鳴る。
もしこの企画のせいで空気が変わったのなら——
原因を作ったやつを問い詰めるしかない。
こんなめんどくさい状況、作りやがって……!
よく思い出せ。
原因を作った犯人を。
そして問い詰めるんだ。
そう決心して、震える指で動画をタップする。
⸻
💛「今日の企画はM!LKお出かけ選抜会!今回は俺が企画者です!」
画面の中の“俺”が、やたらテンション高く笑っている。
💛「今からみんなに一緒に出かけたいメンバーを聞いていきます。そこで両想いになれたメンバー同士は、事務所が全額負担でお出かけができます!」
💛「いや〜どんなペアができるのか楽しみですね笑」
💛「メンバーには動画の企画については内緒です!楽屋内に隠しカメラを設置して、俺が一人一人に聞いていくという流れです。」
——あっ、俺かよ。
思わず顔をしかめる。
俺の企画だったのかよ。
なに笑ってんだよ、過去の俺。
いや、待て。
まだ他にも原因があるかもしれない。
💛「ではまずは勇斗からいきましょうか!」
そう宣言して、動画はスタートした。
⸻
💛「ねぇー勇斗。今大丈夫?聞きたいことあんだけど」
🩷「んー」
楽屋で台本を読んでいる勇斗の隣に腰を下ろす。
集中していた視線がゆっくりこちらに向いた。
🩷「何じんちゃん?どしたの?」
💛「勇斗はメンバーと出かけるなら誰と一緒がいい?」
🩷「はぁ?なにその質問?誰ってどうせなら皆と一緒がいいんだけど」
さすがメンバー愛の強い勇斗。
でも——
俺が知りたいのはそれじゃない。
💛「……俺は?」
少しだけ距離を詰める。
💛「俺は勇斗と2人っきりがいいなって時々思うけど、勇斗はそういう時ないの?俺と2人だけじゃ嫌?」
そう言って、わざと上目遣いをする。
🩷「えっ!じ、仁人いきなり何言うんだよ」
一気に顔を赤くする勇斗。
分かりやすく動揺してる。
——おもしろ。
調子に乗った俺は、さらに距離を詰める。
ソファに手をついて、逃げ場を塞ぐみたいに覆いかぶさる。
そのまま、目を逸らさせないように顔を近づけた。
💛「ねぇ、ほんとにメンバー全員がいいの?」
🩷「それは……」
💛「勇斗が特別に思ってる人、いないの?」
🩷「……」
💛「ねぇ勇斗。俺、勇斗のホントの気持ちが知りたいの」
ほんの少し声を落とす。
💛「勇斗の特別って、誰?」
一瞬の沈黙のあと——
🩷「仁人だよ」
はっきりとした声だった。
🩷「俺の特別は仁人。メンバーのことも大切だし愛してるけど、俺は仁人のことが一番好き。愛してるんだ」
顔を真っ赤にしながら、それでも目を逸らさずに言い切る勇斗。
——へぇ。
💛「あっ、俺ね。了解」
それだけ言って、すっと距離を取る。
残念だな勇斗。
俺は企画者だから——俺を選んだ時点で失格なんだよ。
🩷「えっ!ちょそれだけなの!?仁人、返事は?」
💛「好きって言ってくれてありがとう。台本読みの邪魔してごめんね」
🩷「いや、それは大丈夫だけど……」
まだ何か言いたげな勇斗をそのままにして立ち上がる。
俺はもう、次へ向かっていた。
🩷(今のって脈アリなのか?え〜どっちなんだよ!って今いいところだっただろ!モヤモヤさせんなよ!おいちゃんのくせに!)
⸻
💛「じゅうくん〜。起きてください」
🤍「え、何。どうしたの?じんちゃん」
楽屋のテーブルに突っ伏して寝ていた柔太朗の肩を軽く叩く。
ゆっくりと顔を上げた柔太朗は、目をこすりながらこちらを見る。
相当眠たかったのか、不機嫌そうな柔太朗。
眉が少し寄っていて、明らかに機嫌が悪そうだ。
申し訳ないがこれも仕事なんだ。許してくれ。
🤍「じんちゃん、後でじゃダメ?俺今めっちゃ眠くて」
💛「あー分かった分かった」
そう言って俺は柔太朗の腕を引っ張り、そのまま立たせてソファーへ連れていく。
半ば強引に体を引き寄せて、そのままソファーに座らせる。
🤍「じんちゃんマジなんなの……」
💛「ほらじゅうくんおいで」
俺はソファーに座りながら柔太朗に向かって両手を伸ばす。
まるで来いと言っているように。
状況が読めず困惑する柔太朗。
少し目を細めてこちらを見るが、まだ完全に状況を理解していない様子だ。寝ぼけてんのかこいつは。
💛「起こしたお詫びに俺が膝枕してあげる。自分の腕を枕にしたら腕痛むだろ」
🤍「いやいいよ!悪いし」
優しい柔太朗は俺に気を使って拒否する。
少しだけ体を引こうとするのが分かる。
💛「だーめ。柔太朗も疲れてんだからたまにはリーダーに甘えなよ」
俺はそのまま柔太朗の腕を引っ張り、逃がさないようにして自分の膝の上に寝かせる。
頭が自分の太ももに乗る感覚。
🤍「マジ恥ずいんだけど」
💛「寝る前に教えて欲しいんだけど、柔太朗はメンバーと出かけるなら誰と行きたい?太智?」
柔太朗は太智のことが好きなイメージがある。
よくかわいいって褒めてるし、太智自体明るくて良い奴だし、一緒にいると楽しいだろう。
🤍「え〜、なにその質問。悩むんだけど」
あまりにも美しい顔を少し歪ませて悩む柔太朗。
眉間にシワが寄ってる。
シワは良くないぞと思い、リラックスさせるために柔太朗の頭を優しく撫でる。
🤍「じんちゃんまじ何……サービスしすぎじゃない?怖いんだけど。あと太ももムチムチだね」
💛「うるせぇ、はやく質問に答えろ」
人がせっかくリラックスさせようとしてんのにいじりやがって。
ほかのメンバーには優しいのに俺にだけツンツンしてんだから。
🤍「……まぁ悩むけどじんちゃんかな。俺じんちゃんと過ごすの好きだしさ」
💛「なっ!俺なの?」
思わず声が上ずる。
予想外の答えに、一瞬思考が止まる。
2人続けて俺だと……これじゃお出かけ編の動画撮れないんじゃないかと不安になる。
🤍「じんちゃんよく俺のこと今みたいに甘やかしてくれるし、俺にめっちゃ甘いからさー。チョロくて扱いやすいよほんと」
黙って聞いてれば好き勝手言いやがって!
仕返しに俺は柔太朗の耳にゆっくり息を吹きかける。
わざと距離を近づけて、反応を楽しむように。
🤍「うわ、なにすんの!」
🤍「図星つかれたからっていじわるしないでよ。俺の枕のくせに」
💛「ふんっ!俺は柔太朗じゃなくてみんなに優しんだよ。メンバーにあまあまなんだからな」
🤍「……なにそれ俺は特別じゃないの?」
少し声のトーンが暗くなる。
さっきまでの軽い空気とは違って、ほんの少しだけ重さが混じる。
💛「当たり前だろ!俺はメンバー全員に優しいんだから」
深く考えずに、いつもの調子で返す。
💙「でも僕にはいじわるやん」
💛「うわっ!太智っ!ビビらせんなよ!バカ」
急に後ろから声がして、肩がびくっと跳ねる。
💙「うわー、ほんと口悪いな」
太智、声でかいって。寝ようとしてる柔太朗に悪いじゃん。
💛「ごめん柔太朗ちょっとどいて。太智の相手してくるわ」
🤍「え……なんでじんちゃんからはじめたのにだいちゃんの方行っちゃうの?」
そんな目で見るなよ。
少しだけ寂しそうな視線に、一瞬だけ引っかかる。
うるさい太智がいたら寝れないだろ。これも柔太朗のためなんだ。
💛「ごめんな〜。ほら太智こっち来い!俺たちがいたら柔太朗が寝れないだろ」
💙「仁人声でかいからな笑」
💛「太智がでかいんだよ!」
小競り合いをしながら柔太朗から離れる。
🤍「なんだよ。俺嬉しかったのに……もう寝れないじゃん」
柔太朗から離れた席で、太智と向かい合って座る。
💙「なーさっき柔太朗と何話してたん?」
じーっと、俺を見つめる太智。
逃げ場をなくすような真っ直ぐな視線に、思わず少しだけ視線を逸らしそうになる。
何年経っても太智の目って慣れない。
まん丸で大きくて、吸い込まれそうで——ほんとかわいいっていつも思う。
💙「膝枕するってどんな状況やねん。楽屋入ったらびっくりしたわ。佐野さんが機嫌悪くて何見とるんやろと思ったら仁人が柔太朗に膝枕してるし頭は撫でるし。年下に甘すぎひん?」
唇を尖らせて俺に文句を言う太智。
少し拗ねたような表情で、じっとこちらを見てくる。
太智って唇もかわいいなー。形キレイだし色つけもいい。ついじっと見てしまう。
💙「あんまり自分のこと安売りすんのは良くないで」
太智の声も好きかも。
高くて柔らかくて、耳に残る感じがする。
💙「おいー。仁人?話聞いとる?」
💙「仁人っ!」
💛「太智ってかわいいな」
つい思ったことがそのまま口に出る。
💙「はぁ?そんなんで騙されへんぞ」
💛「いや、マジでかわいいよ。俺が女の子なら太智と付き合いたい」
💙「それマジで言っとるん?」
あっ、こっち見た。
さっきよりも少し距離が近くなっていて、視線がまっすぐぶつかる。
ほんと俺の好みの顔してる。
可愛くて幼くて、でも男前で。ずるいよ……絶対好きになっちゃうよ。
——って、こんなこと考えてる場合じゃない。早く企画進めなきゃ。
💛「わかった!もう自分を安売りしないから。太智に質問。メンバーと2人で出かけるなら誰と行きたい?」
💙「いや、それよりも僕の質問に答えてよ」
💛「いや先に俺の質問に答えて。そしたら太智の質問にもちゃんと答えるよ」
💙「なんやっけ?2人っきりで出かけるならどのメンバーがいいかやっけ?」
俺は黙って頷く。
ムードメーカーな太智が誰を選ぶのか気になる。
まぁ俺はないだろうし、舜太か?勇斗か?
いや、多分勇斗だな。勇斗はよく太智に奢ってるし、太智も勇斗によく絡んでる。
💙「仁人がえぇな」
はぁ、俺???まじで?
一瞬頭が真っ白になる。
もうこれで企画ボツ確定じゃん。
ってかなんで俺なの?あんまり気が合わないじゃん、俺たち。
💙「まぁたまには仁人とふたりで出かけるのもえぇやろ。気心知れとるし、僕仁人のこと好きやし」
💛「なんだよ!太ちゃんかわいいな〜」
テンションの上がった俺は太智に抱きつく。
勢いのまま距離を詰めて、そのまま体を預けるように。
うわー、結構嬉しい!
まさか俺が選ばれるなんて、しかも太智が俺のこと好きって!
💙「で!仁人くんは女の子だったら僕と付き合いたいんですか?男の子同士はだめなんですか?」
抱きつきながら俺に質問してくる。
顔が近くて、少しだけドキッとする。
💛「いやーさすがに男同士はきついだろ。女の子だったら太智と付き合いたいな」
💙「べ、別に男同士でもえぇやろ。僕絶対仁人のこと幸せにするで」
💛「いや〜付き合いませんよ笑」
💙「なんやねん。やっぱりいじわるやん」
少し拗ねたように視線を逸らす太智。
太智と抱き合ってると、舜太が楽屋に入ってきた。
ドアが開く音と同時に空気が少し変わる。
——よし!最後は舜太だ。
俺は強引に太智から離れ、舜太に駆け寄る。
勢いよく足を踏み出したその瞬間——
💛「舜太〜」
足がもつれて、バランスを崩す。
うわー、これ顔からいくわ。最悪すぎ。
床にぶつかる未来が一瞬で頭をよぎる。
これから来る痛みに耐えるため、思わず目を瞑る。
………………あれ、全然痛くない。なんでだ?
恐る恐る目を開くと、至近距離に舜太の顔があった。
息がかかるくらいの距離で、しっかりと腕を掴まれている。
❤️「こら!じんちゃん走っちゃダメやろ!」
どうやら転びそうなところを舜太が受け止めてくれたみたいだ。
体を支えられている感覚が遅れて実感としてくる。
❤️「みんなも心配してるで!」
そう言われて周りを見ると、みんな立ち上がって俺を心配そうに見てる。
視線が一斉に集まっていて、少しだけ気まずくなる。
💛「ごめん」
❤️「俺はじんちゃんから離れへんから慌てなくても大丈夫やで」
ニコッと笑う舜太。
その優しい表情に、胸が一瞬キュッと締まる。
舜太〜めっちゃかっこいいじゃん。
俺惚れちゃうよ!
❤️「それで慌てん坊のじんちゃんは俺に何の用なん?」
💛「うん、あのさ舜太はメンバーと二人で出かけるなら誰を選ぶ?」
❤️「え〜俺?メンバー全員はだめなん?」
💛「だめ!」
少し強めに言い切る。
❤️「じゃあ!じゅうかな!洋服見て欲しい」
💛「む!」
思わず声が漏れる。
笑顔で答える舜太が少しムカつく。
さっきまでの流れで、もしかしたら舜太も俺を選ぶんじゃないかと、どこかで期待していた自分がいたからだ。
💛「柔太朗には負けるけど、俺も洋服好きだよ!それに……それに…」
うまく言葉が続かない。
❤️「じんちゃんもえぇけど、じゅうに見てもらいたいねん。ごめんな」
慰めるように、優しく頭を撫でられる。
その手のひらの温かさが、逆にじわっとくる。
💛「いいから俺にしろよ。俺は舜太がいいんだから」
気づけば、少し声が震えていた。
舜太があんまりにも優しく慰めるから、余計に悔しくなる。
❤️「え〜笑しゃーないな!じゃあやっぱじんちゃんとしとくわ」
💛「うん!!!舜太いい子だな」
一気に気分が晴れる。
顔が自然と緩んでしまうのが自分でも分かる。
舜太と両想いになれたことが嬉しくて笑顔になってしまう。
柔太朗と舜太にも固い絆があると思うけど、俺と舜太だってそれなりに絆はあると思う。
💛「よし!舜太帰るぞ!飯おごってやるよ」
❤️「えぇの!じんちゃん大好きやで〜」
気分が良くなって、そのまま一緒に帰ろうとすると——後ろから声が飛んできた。
🩷「はぁ?なんで舜太だけ誘うの?俺も一緒に行きたい!」
🤍「待って、じんちゃん!俺も行く!ってか舜太より俺の方がじんちゃんのこと大好きだよ」
💙「だから!年下に甘すぎるやろ!僕の言ったことなんも聞いとらんやん!あと僕も行くから!」
一気に後ろが騒がしくなる。
💛「だめですー!今日は舜太を独り占めしたい気分なんだよ。今日の舜太は俺のものだ!ほら行くぞ」
❤️「いやー、じんちゃんのものやないけど笑。みんなごめんな。先帰るわ」
企画は失敗に終わったけど、いつもよりメンバーと濃い絡みができて良かった!
⸻
うわ〜、俺めっちゃ満足そうな顔してるじゃん。
舜太と腕組んで出るし。
企画丸潰れなの分かってんのかよ。
結局なんでこの日からメンバーがめんどくさくなったのか分からない。
もう1回動画を見ようかと迷っていると、舜太からグループLINEが来る。
❤️(じんちゃん今なにしてるん?)
💛(今みんなのこと考えてたよ)
すぐに返信すると、すぐに既読4つつく。
みんなLINE見るのはやっ!
❤️(俺もじんちゃんのこと考えてたよ!運命やな!)
💛(はいはい、二度寝するからおやすみなさい)
もう考えてもよう分からんから現実逃避を決め込む。
はぁー、寝よ。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。