夜が明け私達は早速罠を仕掛けにクチャ(仮小屋)を後にした。
私達が仕掛けた罠にハマったのは…ウサギではなく入れ墨の囚人だった。
私とアシㇼパちゃんに嫌な事を言ってきたこの坊主頭の囚人さん…第一印象が最悪過ぎた。
私はともかくアシㇼパちゃんを悪く言うのは許さない、言い返すのは怖いけどどうも納得がいかず入れ墨を模写しているアシㇼパちゃんのすぐ傍に居た私は思わず立ち上がり…
メギメギメギッ…
この時何故ここまで憤っていたのか…杉元さんがまだ戦争へ行く前の村で皆と過ごしていた話を後に聞いた。杉元さんの言う惚れた女はその村に居た『梅子』さんと言う人で杉元さんの親友である【寅次】さんと結婚したと言う話も聞かされた。
胸が苦しくなって切なくて、杉元さんの優しさや時々垣間見える猟奇的部分にも納得がいく程だった。戦争は人を変える…私は戦争を学校の教科書や修学旅行等で観る映像程度の知識だけだった為か現代を生きている我々の甘さが今はもどかしく感じた。
あまりにも囚人さんが何も吐かない為、ある程度入れ墨を写した所で各自飽きてしまったのか…はたまた一人目で上手く?いったせいか気を緩めてしまった。
そう…この時私達は狩りに集中していて気が付かなかった。
この男が白石由竹であると同時に『脱獄王』の異名を持つ天才脱獄犯だと言うことに。
『脱獄王』白石の投獄のきっかけは強盗だった。しかし今となれば幾度と無く脱獄を繰り返した為強盗での懲役をはるかに上回る程の罪を重ねていた。
彼の脱獄は様々で関節を安易に脱臼させられる特異体質を生かし鉄格子を外した狭い視察孔を抜け出したり、不意に捕まったとしても拘束を解ける様に自身の体に針金や釘を埋め込むなどして隠し持っているなどしてその場をやり過ごして居た。
そして現在…私達がウサギに夢中になってる最中、口内から包まれたカミソリを吐き出せば器用に使って固く結んだ手首の拘束は簡単に切り離されてしまっていた。
パァァーーーーン
ニプㇱ フㇺ とは、アイヌ語で『木が裂ける音』を意味する。強烈な気温低下によって樹木の水分が凍結し、幹が凍裂する現象である…。
マイナス30℃の猛烈な寒気が 山の上から杉元達に襲い掛かる音であった…。
アシㇼパちゃんの腹の虫が鳴り止まず私が丁度なだめていた時、彼等は川に落ち危うく二人まとめて低体温症で死ぬ所だった…と言う話はまた今度…。。
無事生存出来た二人は私達が腹ペコだとつゆ知らず暖を取りながらのっぺら坊について話していたらしい。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。