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第9話

8 . 味噌
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2025/09/07 17:58 更新
カント オㇿワ ヤク サㇰ ノ アランケㇷ゚ シネㇷ゚ カ イサㇺ
日が暮れる前に杉元さんが帰ってきた。
例の『脱獄王』にはまんまと逃げられた、と語っている割にはどこか満足そうだった。
アシㇼパ
ウサギを食べよう!
私達はウサギをイセポと呼んでいる。「イーッと鳴く小さいもの」という意味だ
アシㇼパ
イセポは大きさの割に食べる所が少ないからチタタㇷ゚にする
杉元
出た!チタタㇷ゚
あなた
出ましたチタタㇷ゚!
アシㇼパ
耳の軟骨も食べる。皮を剥いて他の肉や内臓と一緒にチタタㇷ゚にする!
あなた
凄い…無駄のない食べ方。
アシㇼパ
どうしてエゾウサギは耳の先だけ黒いのか…私達に伝わる昔話にこんなのがある。

___むかしむかしシカはウサギの様な足を持っていた。雪の上を早く走れるのでとてもじゃないが人間は捕まえる事が出来ない。そこでウサギがシカを騙し自分の足と取り替えた。騙されたと気付いたシカは焚き火の燃えさしをウサギにぶつけた……。
アシㇼパ
それが耳に当たって今でも黒いんだとさ。
あなた
そっかぁ…黒い模様が無ければ、こうやって私達にも捕まる事なくやり過ごせたのに、何だか勿体無い。
杉元
便利な足を手に入れても、それじゃあ意味がない…。
つまり、このお話の教訓は「欲を出さなければ逃げ回る必要もなかった」…って事だな。
あなた
アイヌの昔話って興味深いものばかりだねぇ…勉強になる!
アシㇼパ
ふふ、そうだなっ!
さて…杉元、ウサギの目玉食べて良いぞ。
杉元
イーッ!
アシㇼパ
何だその顔。目玉はその獲物を捕った男だけが食べて良いものなんだぞ。
あなた
ゥ゙…杉元さんっ、ファイトです…っ、
(ぐっ)
杉元
い…いいのぉ?……いいのぉぉ?…
杉元
…っ、ウッ、あう……オエッ
アシㇼパ
オエッ…?
アシㇼパ
うまいか?ヒンナか?
杉元
…ヒンナ…
アシㇼパ
よしよし、もう一個あるぞ〜〜
あなた
なんだこれ…。。
アシㇼパ
エゾマツタケとオシロイシメジ、去年採って干しておいたキノコ類に香辛料として刻んで干したプクサ(行者にんにく)を肉に混ぜて…これで、完成だ!
あなた
わぁ…いただきます!
杉元
いただきます!……う、うまいっ!リスより脂っこくなくてあっさりしてる!行者にんにくの臭みが食欲を増す、エゾマツタケの香りがまた…いい!
あなた
ん〜〜っ、美味しいっ!あったまる〜…
杉元
あなたの下の名前、アシㇼパさん、このままでも十分美味いんだが…味噌入れたら絶対合うんじゃないの?コレ
あなた
あ!確かにっ!!お味噌汁は日本人の定番食ですもんね!
アシㇼパ
うん?ミソってなんだ?
あなた
うーんと、話せば長くなるんだけど……
杉元
試しに入れてみようぜ
杉元さんが味噌入れを開けた次の瞬間……
アシㇼパ
うわッ…!!杉元それ…、オソマじゃないか!!
あなた
オソマ…?
杉元
オソマ?
アシㇼパ
うんこだ!
あなた
へぇ……うんこね。……ッ!?ちが、違うよアシㇼパちゃんっ!!
杉元
うんこじゃねぇよ、味噌だよ。
アシㇼパ
うんこだ!!
あなた
ちょっ、今お食事中だからっ…!
杉元
ほら、あなたの下の名前ちゃんもそう言ってるよ。うんこじゃないし美味いから食べてみろよ
アシㇼパ
わ、私にうんこを食わせる気か!!絶対食べないぞ!
あなた
だから、うん…ん゙ん゙じゃないよ〜…アシㇼパちゃん、。
このうんこ攻防戦は決着が付くことも無く、また次回へと先延ばしされた…。
___朝になり私達はいつものように囚人が罠に掛かって居ないかどうか、山の中を探索していた。
ある程度歩けばアシㇼパちゃんがヒグマの性質に付いて杉元さんを使い教えてくれた。アシㇼパちゃんのお父さんは毒矢を握りしめ自らヒグマの巣穴に入り仕留めた事。そしてアイヌの言い伝えに「ヒグマは巣穴に入って来た人間を決して殺さない」と言うのがあるのも教えてもらった。
杉元
まあ…今すぐ食わなきゃ餓死するって訳でもないし、先に進もうか。
あなた
そうですね、それに生きているヒグマはまだ見た事が無いので…どうも恐ろしくて気が進まなかったです…。。
アシㇼパ
む、そうか!あなたの下の名前はまだだったな!いつか私達が狩りをしてる所、見せてやる!
あなた
ゥ゙…、遠慮したい…。。。
軍人A
火の始末をしたばかりですね…。長靴を履いた男と、鹿皮の靴の子供…そして二人とは異なる特殊な足跡…、アイヌ猟師の親子か…?
軍人B
尾形上等兵程の男が猟師の親子にやられたとは思えんが…何か知ってるかもしれん。早めに見つけ出すか。
軍人C
ふむ、容態は?
軍人B
一度だけ意識を取り戻したきりだ。アゴが割れて離せなかったが…その際力を振り絞り指で文字を書いていた。__「ふじみ」、そして「よそもの」…。
軍人D
俺は不死身だとでも言いたかったのでしょうかねぇ…それによそ者、どちらにせよ上手く結びつかない。幸いあの怪我で死ななかったのは、まぁ運が良かった。
軍人B
いや…やっとの思いで我々に伝えたのだ。軽口のはずが無い。
軍人A
なにはともあれ、見つけ次第情報を貰う。早速行くぞ。
その頃、私達は彼らに気付く事無く呑気にヒグマの食べ方について話していたのだった……。。

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