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第1話

生スグリと生ゼイユだーーー!!!!
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2024/04/01 17:19
―エリアゼロの出来事から1ヶ月後。

ポケモン図鑑を開いていた私は、最初のページから最後までスライドをさせながら、番号の抜けがないことを確認した。
…うん、ない。絶対に、ない。

あなた
やっと図鑑埋まったぁー!!
―ドサッ

そして地に倒れた。
目の前に広がる青空に浮かんだ雲を見ながら、「長かった…長い道のりだった…」とボソボソ呟いた。

なんという達成感だろう。
攻略サイトも見られない今、前世から微かに残る記憶と試行錯誤を重ね、ようやく、図鑑が埋まったのだ。
あなた
(準伝説…レホール先生の依頼ではあったけど、ほんとによかったのかなぁ…)
最後に捕まえたのは準伝説達だった。
レホール先生の授業の単位を取った際に依頼されたもの。
封印はストーリー進行中に見つけるたびにちょこちょこ抜いてたんだけどね。
これも封印の剣がどこにあるかわからなくて、かなり手こずった。
あなた
(よし!次のさっそく特訓…)
次にやるのは育成と特訓。
せっかく全部のポケモンを手に入れたからにはやるしかない。
ガチパはできあがってるけれど、いつネモに抜かされるかわからないから。

身体を起こしたその時、スマホロトムから着信音が鳴り響いた。
あなた
おうっ!?
予想していなかった音に声を上げつつ着信を取ると、
聞き覚えのある声がスマホロトムから聞こえてきた。
ジニア
どおもあなたさん、ジニアです
あなた
えぁ、ジニア先生?
ジニア先生だ。
ちょうど図鑑が埋まった報告もしたかったし、ナイスタイミング!
あなた
ジニア先生聞いてください聞いてください!
ジニア
ん?どうしました?
図鑑が埋まり達成感からか、声が上ずる。
あなた
なんとなんと!図鑑、埋まっちゃいましたー!
ドヤ顔を見せたいところだが、目の前にいないのが残念でならない。
ジニア
おお!ついに!おめでとうございます〜!そしたら後で職員室来てください。ごほうび準備して待ってますねぇ〜
あなた
やったー!
きっともらえるのは“ひかるおまもり”だろう。
色違いポケモンに出会いやすくなるのは嬉しいことだ。

そこで私は、ジニア先生から連絡をもらっていたことを思い出した。
あなた
あ、そうだすみません、用事あって電話くださったんですよね?
ジニア
あ、そうそう。宝さがし中すみませえん。じつはアカデミーでは、毎年この時期に他校と合同で林間学校を実施しているのですが…
あなた
…ん?(もしや…)
なんか、聞いた…いや、見たことのある台詞。

まさか、まさか、
ジニア
な、なんと!あなたさんがそのメンバーに選ばれましたあ!
あなた
…………やっぱり……!!
ずっと好きだったゲームの世界。

でも、私の最推しのキャラにはまだ出会えてなくて。

やっと

やっと会えるのだ。
あなた
待っててねスグリぃぃーーー!!!!
そう、スグリに!
目の前に広がる田園地帯。
サラサラと優しい風が、私の三つ編みをなびかせた。
あなた
ほぁ〜…
つい声が漏れる。
ジニア先生から電話をもらってすぐ学校に戻った私は、ストーリー通りブライア先生と出会った。

そして翌日にはキタカミの里に訪れていたのだった。
生徒
やっと着いたー!
生徒
飛行機とバス座りっぱなしで、お尻が痛いわ…
林間学校で一緒になった生徒たちが口々に言葉を漏らす。
確かに、飛行機とバスを乗り継いでここまで来たのだ。私も身体がバキバキになっていた。
ブライア
ハハハ!長旅ご苦労さま!みんなそろっているかね?
全員
はーい!!!
生徒たちが元気に返事をする。私も声を揃えた。

が、内心はこんな感じ。
あなた
(スグリとゼイユに会えるスグリとゼイユに会えるスグリとゼイユに会える)
私の頭の中はスグリとゼイユで満たされていた。
あなた
(DLC版ずっと待ってたんだよねぇ〜図鑑埋めもクリアして新しいパーティ作ろうと思ってたタイミングだったし!ちょうどいいからキタカミでも図鑑埋めして…うわ、ヤンヤンマとかいるじゃん!もう捕まえたい…)
ブライア
あなたくん、ちょっといいかな?
あなた
はいっ!?
急に声をかけられ、身体がビクつく。
つい我を忘れていた。

振り向くとそこには、ブライア先生が私をにっこり笑顔で見下ろしていた。(実物はゲームで見るより美しい…!)
ブライア
ハハハ!さっそくポケモンに心奪われているね!後でゲットしに行くといい!
あなた
あ…アハハハ…どうも、ブライア先生……
話を聞いてなかったことがバレていらっしゃる。
さすが先生だ。
ブライア
だがその前に頼み事があるんだが、いいかな?
あなた
…頼み事ですか?
ブライア
少し具合が悪い生徒がいてね…私たちの到着をこの先、スイリョクタウン公民館の管理人さんまで知らせてくれるかな?体調不良の生徒がいることも伝えてくれるとありがたいよ
あぁ、そういえばそんな話あったな。
少しずつストーリーを思い出していく。

生まれてから15年。
前世の記憶はゲームのことしか覚えてないし、やりこんだから割と覚えている方だと思ってる。
あなた
わかりました。ライドポケモンでひとっ走りしてきちゃいますね!
ブライア
うん、頼もしいね。私は彼のお世話をするのでよろしくお願いするよ
あなた
はぁーい!
手を上げ、私はスイリョクタウンがある方へ走り出した。
あなた
ん〜自然が気持ちいい!コライドーン!
そしてコライドンをモンスターボールから出し、背中にまたがる。
あなた
よっと
頭をゆるりと撫で、「走れー」と言った。
それがまずかった。
コライドン
アギャー!
あなた
ちょまっ、速っ、ぎゃーーーーーっっっ!!!!!!
とにかく風を切る。
コライドンも気持ちいいんだろう。いつもよりもはちゃめちゃに速い。
ちょっと息がしづらい。少しだけ後悔した。
あなた
あんた…ハァッ…飛ばしすぎ…
コライドン
アギャ?
スイリョクタウンの入口付近に辿り着いた私は、コライドンから降りて息を整えた。
あなた
アギャ?じゃないんですけど…とりあえず、ありがと
そしてコライドンをボールへ戻し、髪を整える。
村の人をびっくりさせないよう、ここからは一人で歩いていくことにした。

すると、公民館であろう建物の目の前に2つの影が立っているのが見えた。
あなた
(…もしや)
???
あっ、ねーちゃん!あれあれ!
聞き覚え…じゃない。見覚えのある声。
まだ声変わりもしていない、少年らしい声で
その持ち主を見つけ、
あなた
(ふぁぁぁあああぁぁぁ!!!!!!!)
心の中で大発狂した。
あなた
(うおあぁぁぉスグリとゼイユーーー!!!!)
内心ご乱心状態の私だが、表情を作るのは慣れている。
あなた
…こんにちは〜!
私は2人に駆け寄り、ニッコリと微笑んだ。
(な…生スグリと生ゼイユだーーー!!!!わぁぁぁぁ会いたかったよぉぉぉぉぉスグリ可愛すぎなんだけどゼイユ美人すぎなんだけどなんなの?この2人ビジュよすぎん?)」
あなた
(な…生スグリと生ゼイユだーーー!!!!わぁぁぁぁ会いたかったよぉぉぉぉぉスグリ可愛すぎなんだけどゼイユ美人すぎなんだけどなんなの?この2人ビジュよすぎん?)
生で見る2人は本当に顔立ちが整っていて、スグリは可愛らしくゼイユは本当に本当に美人だった。
ゼイユ
あんたがパルデア地方の…アカデミーの生徒ってやつ?
あなた
(イヤァァァー!!話しかけられてるーー!!!もう好きです!!!!)
そうです。あなた方は?
あくまで表情は穏やかに、ね。
スグリ
かっこいい…
ゼイユ
スグリ、だまって
あなた
(イヤァァァあんたは可愛いよ!!!可愛すぎるよ!!てかちっさ!!だ、抱きしめたい…)
これ以上私を乱さないで欲しい。
ハァハァしてしまう。
ゼイユ
あたしはゼイユ。残念だけど、よそ者はスイリョクタウンに入れてあげないの
あなた
(ふへへ…初期のイジワルなゼイユも好きです…)
それは困りましたね…どうしたら入れて頂けますか?
首を少し傾げ、ニッと笑って見せた。
わかってるよ。戦うんでしょ?
ゼイユ
…どうしても入りたいなら、あたしと勝負しなきゃダメ
予想通り。というかストーリー通りだ。
そんなゼイユの言葉を聞き、ゼイユの背中に隠れていたスグリはひょこっと顔だけを出して言った。
スグリ
ね、ねーちゃん、戦いだけいじわる…
あなた
(“いじわる”だって!!!単語なのに可愛いっっ!!何それ!!!)
もう本当に存在が全てが神がかってます。

ありがとう!!転生!!
ゼイユ
スグ、うるさい。弟は無視していいから
スグリ
うぅぅ…
ゼイユ
それじゃ、位置につきなさい
そして強制イベント開始。
ゼイユの手持ちは覚えてるけど、DLC序盤だもんね。弱いのはわかってる。

でも敢えてガチパで牽制しようと思ってガチパで揃えてきた。
私は最低な人間だ。でも手を抜くなんて失礼だもんねっっ!!
あなた
…わかりました。やりましょう
あくまで「しょーがねーな」感を出してみた。カッコつけてます。すみません。

そして私は位置につく。移動などで身体もガチガチになってたし、ちょうどいいのかもしれない。

位置についた私は、いつもの“ルーティン”を行う。
両方のつま先をトントンと地面にそれぞれならし、グローブをキュッと締め直した。
スグリがそんな私を見てる気がする。なんかキラキラした目で見られてる気がする。
が、今は目の前のゼイユだ。
あなた
(さ、てと…)
ゼイユ
たっぷり遊んであげる
あなた
(ありがとうございまぁすッッ!!!!)
お願いします!!
ゼイユ
いけポチエナ!
あなた
ニンフィア!君に決めた!
繰り出されたのはポチエナ。レベルは高そうだ。

でも、
ゼイユ
ようこそキタカミへ…まずは土の味を噛みしめなさい
あなた
勝ったらちゃんと…入れてくださいね!
私が負けるなんて、ありえないのだ。
勝負はあっけなくついた。
もちろん私の圧倒的勝利。
あなた
…私の勝ち、ですね!
最後の勝負の決め台詞はいつもこれ。
だって現実は、ゲームと違って締まりがないから。
スグリ
わやじゃ!ねーちゃんに勝っちまったー!
あなた
(いや驚き方可愛すぎかよ)
ゼイユ
…何なのよ、あんた
驚くスグリと、手を震わせながら視線を落とすゼイユ。
私はへへっと笑いながら、ゼイユの元へ走っていき、手を差し出した。
あなた
ありがとうございました
でも、ゼイユは手を取らない。
拳を握り、プルプルと震わせている。
ゼイユ
くやしい…あたしが負けるなんてありえないのに!!
なので私が無理繰りゼイユの手を取ってやった。
ごめんね、強引なの!
あなた
でも強かったです!!ポケモンのタイプ考えて組んでますよね!しかも可愛いポケモン多かったですね!好きなんですか!?
ゼイユ
え、えっと…?
あなた
ゼイユさんは美人だし強くて素敵です!!ぜひともお友達に…!!!
やばい、口が止まらず、べた褒めムーブ&アプローチが発動してしまった。
ボタンに「それやめろ」って言われたばかりなのに。

でも、嘘はついてない。むしろ本音しかない。
それほどまでにゼイユは好きキャラなのだ。
ゼイユ
……あ…あんた…
顔を伏せ、プルプルと肩を震わせるゼイユ。
あれ、やっぱりやっちまった?
あなた
あ、え、えっと…
戸惑っていると、ゼイユはなんとも言えない表情でこちらを見据えて言った。
ゼイユ
ちょっと素直すぎない?
おん…言われてしまった。ちょっと引いてるようにも見える。
お友達作戦は失敗に終わった。

すると、後ろから誰かが私達の元へ駆け寄ってくるのが見えた。
???
こりゃー!何やっとる!
全員
!!!
声の持ち主は初老の男性。きっと管理人さんだ。
ゼイユ
チッ、めんどくさいのが来た。行くよスグ
スグリ
えっと、えっと…
その男性を見るなり私の手をスルリと抜け走り出すゼイユ。
スグリはそんなゼイユと私を交互に見て戸惑っている。
あなた
(あぁ、いってしまう!)
スグリくん!だよね?
スグリ
あ…う、うん…
とびきりの笑顔で、私は手のひらをスグリに見せて振った。
あなた
またねっ
スグリ
!!……うん…!
嬉しそうに走っていくスグリ。
可愛すぎて死ぬかと思った。
あなた
(私の推し…最っっ高…っ!!)
管理人
いやー、どうもどうも。アカデミーの生徒さんですよね?
私はひとしきりうっとりした後、
2人が走り去ったタイミングで話しかけてきた男性の方へ振り向いた。
あなた
こんにちは!
管理人
あたしは村でいろんな施設を管理している管理人でして、みなさんのお世話をさせていただきます。
あなた
よろしくお願いします
管理人
ところであんたさん、さっきあの姉弟から変なことされませんでしたか?
あなた
いえ、ちょこっと遊んでもらっていただけです
ニコッと笑って見せた。嘘ではない。
私が遊んでもらったのだ。
管理人
そうですかい?それならいいんですが…
あなた
あ、それよりも…アカデミーの生徒全員到着したのですが、具合の悪い生徒が出てきてしまって…今バス停で休ませているんです
管理人
なんと!生徒さんが!?すぐにお薬持っておむかえにいきますんで!
あなた
お願いしてもいいでしょうか?
管理人
ええもちろん。あんたさんは先にそこの公民館で待っててください
あなた
あ、はい!ありがとうございます!
管理人さんは薬を持ち、バタバタとバス停の方へ走っていった。
私はその背中を見送ったあと、バトルで少しだけほぐれた身体をさらに伸ばした。

そして、頭の中で今後のスケジュールを練り始める。
あなた
(オリエンテーリングは明日から…ストーリー通りに行けばスグリと一緒に行動だし…ゲームじゃないから色んなとこ立ち寄るのは難しいかな…あーでもポケモン捕まえたいし…)
そして結論が出た。
あなた
よし!今夜だな!
今夜私は、キタカミの里を回ることにした。
(さてさてどうやって抜け出しましょうか)

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