mg side
高校に入学した初日。
俺は隣の席の女の子を好きになった。
喋ってもないのに、早すぎるって?
そんなの、自分が1番思ってる。
俺は今まで、「一目惚れ」という言葉を聞く度に、そんなこと実際にあるのか、と疑問を抱いていた。
でも、今、俺は隣の子に一目惚れしたんだ。
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入学式が終わって、俺は早めに教室の自分の席について待機していた。
少し経つと周りがザワザワし始め、人が増えてきた。
この人たちが1年間同じクラスメイトなんだな、あの子サッカー部っぽいな、この子読書が好きそう、だとか、見た目の印象でクラスメイトがどんな子なのか、1人頭の中で想像していた。
そんな時、1人の女の子が教室の前の扉から入ってきたんだ。
大人しくて、クールな雰囲気だけど、どこか可愛らしい印象も感じられる。
正直に言って、今までに会ったとこのない程の、どタイプの女の子だった。
最初はただ、「すごく可愛い」という気持ちだけで彼女を目で追っていた。
だけど、少しずつ後ろに向かって歩いてきて、1番後ろの俺の左の空いた席の横で、彼女は立ち止まった。
その時一瞬だけ彼女と目が合い、俺は慌てて視線を晒そうとした。
だけど彼女が、俺を見て微笑んで、
そう言って、席に座った。
俺はその5秒もない一瞬の出来事で、彼女を好きになった。
顔に熱が集まる感覚がして、心臓がドクドクして、今の自分の表情は変じゃなかったか気になって、、、。
この感覚も、感情も、全てが初めてだった。
彼女の名前が知りたい。
そう思って少しだけ目線を自分の左に向けた。
制服についている名札に目をやると、
ユン・あなた
俺はまだ少しだけドクドクしている胸に手を当て、1人頭の中で彼女の名前を呼んだ。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!