相手を地面に叩きつけて足で踏みつけた。
物凄い勢いで突き倒した為、それなりの物音と共にクラス中の視線が私を見つめる。
目の前にいる小バエは、私を前にしてとても怯えているようで、涙を堪えられず嗚咽を零している。
「ニンゲンって、なんでこうも良くならないものか。」
感情を感じられない冷たい声で話しかけた。
「それは少なからずお前がいるから。お前が世界を汚染しているからだ。」
「私は今すぐにでもお前を始末できる。それをやらないのは、私の今の環境のお陰だ。残念なことに私は今、お前を楽に殺せる物を所有していない。少なからずはとても痛い思いをするだろうな。」
「でもまぁ、仕方ないか。私を相手にペラペラと戯言を言うもんだから。」
突き飛ばされたアイ以外の4人は、全員その場の怖さに動けずにいた。クラス全員がこれは只事ではないと察したが、動けないのは私の殺気のせいである。
ガキでも今の私を刺激すれば、人を殺す勢いがあると察知したのであろう。
「愛に暴力辞めて!!こんな事になったのは全部、あんたのせいでしょ!!!」
……1人を除いて。
ペラペラペラペラと、私に言う姿はもう興味のない小バエが喋りかけるどうしようもない気分の悪さ。
「それに、アンタが警察うんぬん言ったんでしょうが!人殺したらあんたこそ少年院に入れられるし、殺せないくせして殺すなんて__」
そして響き渡る金属音。クラスの誰かが「きゃっ」と静かに悲鳴をあげた。
私は教卓の上にある花瓶の破片を手に取った。
「殺せない?殺す気もない?意味のわからないことを言うな。私はいつだって本気だ。
現に今、お前たちを刺すことの出来る凶器というものが出来上がったわけだ。」
「死ぬまでとても苦痛と感じるだろうが…。それは仕方がないな。私の気分を損なう発言をいとも簡単に発するわけだ。」
「仕方ない。」と言うように言ってやった。
いつしかの時のように、手からは割れた破片の鋭利部分で皮膚が切れ血が手首に伝った。
今も踏みつけている虫けらの頬には私の血なのか勢いよく割った花瓶のせいで散った破片に傷つけられたのか分からぬが、真っ赤な血がついていた。
傍にいるニンゲンも、まさか私がここまでするとは思わなかったのであろう。散った破片を見て、怯え、命の危機を感じたからか息を必死に整えていた。
今ではそれらを全て壊してしまいたい衝動が抑えられない。
「相澤さん!!!」
そんな重苦しい空気は勇気ある1名によって終わりを告げた。
声のするほうを向けば、それは担任であり、応援で駆けつけた他の先生もその場にいた。どうやら、職員室へ走り込み助けを呼びかけたのだろう。
私は手に持っていた刃物を取られ、他の先生は踏みつけられていたアイの保護をした。
「……。」
「っ」
先生に連れられる中、いつの間に居たのであろう。ユウと目が合った。
その目は、とても恐怖に溢れており……。考えるのが嫌になった。
(………私の本質は直っていない。)
それを実感した。私は変わっているつもりであった。変わっていると過信していた。
現に今、一人の友人と言える存在を失ったのだから。
私は”相澤”なんてものでは無い。一人のニンゲン”キャラ”なのだ。
(なんで、こんな……!)
どうしようもなく、苦しくなった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。