第4話

最終選別
55
2025/12/19 16:24 更新
4話です
あなた
ここが、試験会場…。
山の中を進んでいくと、美しい藤の花の咲いたところに来た。

鱗滝さんの山みたいに空気が薄いこともなく、いつも通りの動きができそうだ。

階段を登り、古い鳥居をくぐると、20人くらいの人たちが集まっていた。刀を持っているからこの人たちも最終選別を受けにきたのだろう。
黒髪、白髪の少女
皆様、今宵は鬼殺隊最終選別にお集まりくださってありがとうございます。



そう言った2人の少女は最終選別の説明をしてくれた。

あなた
7日間…。
7日間生き残る。食べ物は何とかなるらしいが、そんなに長い時間集中していることは難しい…。

安全な場所を見つけることが大事そうだ。



いや、それで本当にいいの…?
私はあの人みたいな強い剣士になりたい。あの人だったら隠れて過ごすなんてことしないはずだ。

あなた
よし…!
7日間でできるだけ多くの鬼を倒す。

私ならできる。
今までの稽古を無駄にしない。


おい、こんなとこに女がいるじゃねーか。
あなた
……!
考え事をしていると、鬼が出てきた。

あの日、私を襲ってきた鬼と少し似ていた…。


あなた
うっ…。
あの日のことを思い出して、体が震える。

私は何もできなかった…。あの人がいなかったら私は死んでいた。

やっぱり、私には…。



いやっ!やるしかない。
お母様も、おじいちゃんも、鱗滝さんも、こんな私を認めてくれた。

その期待を無駄にはできないっ!


おい、何か言ってみろよ。
まあいい、こっちから行くぜ!
鬼が襲ってくる。鋭い爪を出して…。

あなた
炎の呼吸…弐ノ型 昇り炎天っ!!
くるっと円を描くように刀を振る。
はっ、速いっ!!
避けれねぇ…!
そのまま、鬼の首はストンと落ち、塵となって消えた。

あなた
で、できた…。
私が鬼を倒せた。


ずっと出来ないと思っていたことが、出来るようになっていた。
稽古は、無駄じゃなかった。



ダメだ、感動してる場合じゃない。
もっとたくさんの鬼の首を斬らないと。


西に向かって走り出す。
さっきよりも体が軽くなっている気がした。





〈2日後〉


あなた
はあっ、はあっ…
あれからずっと鬼を倒して走り回っている。
ただし、複数から攻撃されると危険なので、単独行動している鬼を見つけ、できるだけ素早く静かに斬ることを意識した。

そうなると時間もかかるし、集中力もつかう。

2日たって、身体にも精神的にも限界が来ていた。


おいっ!まてよっ!!!
ちょこまかと動きやがって!

くそっ、この鬼全然撒けない。

一旦隠れて休憩しようと思っていたのに…!


ひゅっと私の腕に鬼からの攻撃があたる。




あなた
いっ…!
腕を確認すると、鋭い棒状のものが腕を貫いていて、血が流れている。

こういうのって抜かないほうがいいんだっけ…。

腕を抑えたままだと、走りが遅くなる。
このままじゃすぐに追いつかれる。


へへっ、もらったっ!!
そう言って鬼が飛びかかってくる。

あなた
っ…!
ほ、炎の呼吸 壱ノ型、不知火…!
鬼の腕を斬る。
片腕では首は切れないだろう。
どうしたものか…。
何か、この鬼を倒す、いや最悪逃げて時間を稼ぐためには…

謎の少女
花の呼吸 肆ノ型、紅花衣っ!
突然、鬼の後ろから人が現れ、鬼の首をめがけて攻撃した。

っ、なんだとっ…!
鬼は攻撃する前に首を切られてしまった。

鬼の首を斬ったのは私と同じくらいの背丈の、長い黒髪を1つに結び、薄桃色の羽織を着た少女だった。


謎の少女
あなた、大丈夫?
あなた
は、はいっ!
ありがとう、助かりました。
謎の少女
無事で良かった。
もしかして、この辺りの鬼を倒していたのはあなた?
鬼の数が思ったよりも少なくて。
あなた
そんなに多くは倒してないけど、試験が始まってからはずっとこの辺りにいるかも…です。
謎の少女
ふふっ、敬語なんて使わなくて大丈夫。きっと年も近いと思うし。
それより、あなた怪我してるじゃない!ついてきて、簡単な治療ならできるから。
そう言うと少女は東の方へ走り出す。
鬼がいる可能性を考えて、急いでいるのだろう。

私も彼女についていく。





10分ほど走って、随分東の方まで来た。
暗い夜道を歩くと目的地についたようだ。

謎の少女
ここよ、少し暗いけど見つかりにくいと思う。
彼女が入っていくのは暗い洞窟だった。
確かに安全そうだ。

謎の少女
さぁ、腕を見せて。
言われたとおりに腕をだす。
突き刺さったものは鬼が倒された時に消えたようだ。赤色の血がドクドクと流れていて、見ると痛みが増してくる。


謎の少女
少し痛むかもしれないわ。
できるだけ丁寧にやるけど…。
彼女の治療は驚くほど丁寧で、素早かった。
あっという間に私の腕には消毒がされ、包帯が巻かれていた。

謎の少女
とりあえずはこんなもんね。
帰ったら縫ったりしたほうがいいけど。
あなた
ありがとう。
治療もできるなんてすごいね。
百瀬綾羽
簡単なものだけね。
私の名前は百瀬綾羽ももせあやは、17歳。
よろしくね
あなた
私は、あなた。
私も17歳。
助けてくれてありがとう。よろしくね。
百瀬綾羽
あぁ、それと紹介したい人がいるの。
ついてきて。
さらに奥へ進んでいった。

少し、血の匂いがする…。
そこには至るところに包帯を巻かれ、眠っている少女がいた。
痛みに顔を歪めていて、巻かれた包帯は血がにじんでいる。

百瀬綾羽
この子は藍葉蘭あいばらん
私と同じ蝶屋敷から来た。年齢はひとつ年下よ。
あなた
どうして、こんなことに…?
百瀬綾羽
もちろん、鬼に襲われたの。
私も彼女も緊張して動けなかった。
安心して、鬼は倒したから。
そう言った綾羽の顔はとても暗くて、そのことを思い出しているのだと思った。

百瀬綾羽
この子と絶対に生きて帰りたいの。
私には、この子しかいないから…。
彼女は悲しそうに蘭を見つめる。

あなた
その…彼女はあと5日間生き残れるの?
百瀬綾羽
わからない。ただ危ない状況なのは変わらないと思う。
薬がないと…。
あなた
薬?薬があるの?
百瀬綾羽
えぇ、しのぶ様から貰った止血の薬があったの…。
でも戦いの最中に落としてしまって、探していたら貴方をみつけたってわけ。
あなた
な、なんかごめん…。
百瀬綾羽
いや、どうせこの夜の暗さじゃ見つからないだろうし、焦っていただけよ。
百瀬綾羽
逆にあなたのおかげで冷静になれたわ。
あなた
それならよかったけど。
話しているうちに朝が近づいてきた。


あなた
あ、あのさ!
薬を探すの、私に手伝わせてくれない?
百瀬綾羽
え?
あなた
鬼を倒してくれたし、傷の手当てもしてくれた。
私も何かお礼をしたいの。
百瀬綾羽
ええ、手伝ってくれるのは嬉しいのだけど…。
薬を落とした場所は洞窟の中なのよ。
日が昇っていても暗いから鬼が何体もいるはずよ。
あなた
もちろん危険なのは分かってる。
でも私はあなたに命を救われたの。あなたと、あなたの親友のために命を賭けたい。
百瀬綾羽
……。
ありがとう、あなたの下の名前。そんなこと言ってくれると思わなかった。
百瀬綾羽
協力してほしい。
私とこの子のために。
あなた
もちろん。






1時間ほど計画を立てて、鬼のいる洞窟に向かう。 

話によると休める場所を探していた2人はその洞窟に入ったが、奥には鬼がいて、蘭は攻撃を受けてしまった。

蘭が庇ってくれたおかげで綾羽は怪我をしなかったらしい。

話したことはないけれど、凄くいい子なんだろうな。



百瀬綾羽
着いたよ、ここが入り口。
洞窟は緊張もあってか物凄く暗く見えた。

綾羽がマッチで火をつけ、枝に火を灯し歩く。

色々持っているんだなと感心してしまう。


洞窟には2人の足音が重く響く。
炎が作った2つの影が並んでいる。


いつ鬼が出てもおかしくない。
その緊張感が辺りを包み込む。




百瀬綾羽
あ、あった。これが薬だっ!
緊張とは裏腹に簡単に見つかったようだ。

あなた
良かった。
さぁ、急いでかえろ…
「帰ろう」と言いかけた私は殺気を感じた。

あなた
あやはっ!
避けてっ!!!
百瀬綾羽
っ!!

綾羽の方に向かって鬼が飛びかかる。

綾羽の持っていた木の枝が落ち、火が消えた。



綾羽が無事かは暗くて分からない。でもまずは鬼を倒さないと。

あなた
炎の呼吸、壱ノ型 不知火っ!
暗闇の中で鬼の気配を感じとり、刀を振る。 

ぐあっ…!
どうやら当たってくれたようだ。
しかし、首を斬るまでにはいかなかった。

あなた
っ…!
キーンッと鬼の爪が私の刀とぶつかる嫌な音が響く。
殺気を感じ取り攻撃を捉える。



ダメだっ、暗闇じゃ倒せない。
もっと集中して…。

炎の呼吸は熱い想いを刀に込める。暗闇では不安が勝ってしまうのか、本当の力が出ない。

どうすればっ…!



あなた
あっ…!
私はおじいちゃんとの会話を思いだす。

そして鱗滝さんから言われた言葉も。
私には力がある、こんなところで躓いていられない。


あなた
水の呼吸…陸ノ型、ねじれ渦っ。


鬼の首を切り裂いた。

水の呼吸は炎の呼吸と全く違うため、最終選別は炎の呼吸だけで戦おうと思っていたの。
しかし、この状況で咄嗟に出した技は水の呼吸だった。



鱗滝さんのところに言って良かった…。


そんな事を思っている場合じゃない。
早く綾羽をっ…。
油断したなっ、


綾羽を探そうと思い立ち上がったとき背後から鬼の声がした。

百瀬綾羽
花の呼吸、壱ノ型、委蛇斬りっ!


鬼を倒してくれたのは綾羽だった。

私も刀を構えていたが、鬼の攻撃のほうが速かっただろう。

また、助けられてしまった。
あなた
綾羽っ、無事で良かった…ってその傷っ!

綾羽は頭から血を流していた。
その血が目に入るのか、片目を瞑っている。
百瀬綾羽
見た目ほど大した傷じゃないわ。
それより、ありがとう。あなたの下の名前がいなかった、危ないところだった。
あなた
こっちこそ、また助けてもらっちゃったよね。
ありがとう。
暗闇の中2人で笑った。

これが友達ってやつなのかな。
命がけの試験中にこんな事を思うなんて考えもしなかった。

百瀬綾羽
それじゃあ、急いで帰ろうか。
蘭が心配だ。
あなた
うん。急ごう。










急いで元の場所に戻り、蘭の手当をした。
幸いこれ以上悪化することはないそうだ。




藍葉蘭
綾羽、あなたの下の名前さん、本当にありがとね。
あなた
さんなんて付けなくていいよ。
あなたの下の名前って呼んで。
藍葉蘭
ふふっ、ありがとうあなたの下の名前。
6日目には蘭は体は起こせないが話せるほどになっていた。




そして、最終選別は終了した。

生き残ったのは私たちを含めて6人ほど。
例年に比べると多い方らしい。




百瀬綾羽
あなたの下の名前、本当にありがとう。あなたが居なかったら私も蘭も危なかったと思う。
あなた
私もだよ。綾羽が居なかったら危なかったし、蘭の薬の知識は勉強になった。
藍葉蘭
ふふっ、それならよかった。
何もしないで最終選別合格なんて、なんだかいい気分じゃないけどね。
百瀬綾羽
蘭は私を守ってくれた。私は蘭のおかげで頑張れたんだから、そんな事言ったら怒るわよ。
藍葉蘭
綾羽ったらすぐ怒るんだからっ。
綾羽に背負われながら蘭は楽しそうに話していた。

百瀬綾羽
あーっ、でも疲れたわ。
早く布団に入りたい…、その前にしのぶ様に伝えないと。
2人とも生き残ったって…。
本当にそのとおりだ。
いつも稽古しているからと言ってこの7日間は今までで1番体力と集中力を使った。
早く布団に飛び込んで3日くらいは爆睡したい。



始めに説明をしてくれた少女が来て、石を1つ選ぶように言われた。
これが刀になるらしい。

正直、疲れが溜まって真剣に選べた気がしない。



軽く説明を受け解散となった。


2人に別れを告げて2人とは反対の道へ進む。

百瀬綾羽
ねぇっ!
後ろから綾羽が私を呼び止めた。
百瀬綾羽
今度家に来てよ。
しのぶ様にあなたのことを紹介したい。
あなた
いいの?綾羽がそう言うならもちろん行くけど…。
あなた
わたし、綾羽に何もお礼できてない。
綾羽に何をしたらいいか、わからないよ。


こんな私が差し出せるものは少ない。

綾羽や蘭みたいに知識もない。


百瀬綾羽
そんなの求めてないわ。
私たち友達、いや親友でしょ。
あなた
え…?
『親友』。綾羽もそんな事を思っていてくれたなんて…。

驚いて声が出ない。
百瀬綾羽
もしかして、あなたの下の名前話そう思ってないの?
あなた
そんなことないっ!
私も…親友になれたらいいなって、ずっと思ってた。
百瀬綾羽
なら決まりね。
詳しい日程は手紙で知らせるわ。
じゃあね。
それだけ伝えるとあっさり帰ってしまった。

夕焼け色の空に私だけが取り残される。

あなた
しん…ゆう。



自分で言うと改めて信じられないことだなと思う。
今まで友達と呼べる人はいたけれど、親友と言うほどではなかった。

どこかで私なんかと親友になってくれるわけないと思っていたのかもしれない。

そんな私の想いをかき消すように2人は真っ直ぐに私を見て言ってくれた。


私もその想いに応えたい。




そう決意した帰り道は疲れが少し減った気がした。


あなた
早く、伝えないと。


鬼を倒せたこと、炎の呼吸を使えたこと、最終選別に合格できたこと。




それに、親友ができたことも。






















一旦ここまでです。

ずいぶんと時間が空いてしまって申し訳ないです…。
その分少し長めでした。

もう少しで長期休みなので更新頻度も上げていきたいところですね。

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