sideきょも
朝目を覚ますと北斗からのLINEがあった
『音楽室で待ってる』だって
今日はどうせ冬休みも明けて学校だし、いつもと変わんないや
変わるのは、歌えないことくらい
憂鬱な気持ちで学校へと足を運んだ
学校へ行く途中なのに駅の前で北斗にあった
電車乗れないんだからわざわざきてくれたんだよね?
学校へ向かう途中、俺も北斗も喋ろうとはしなかった
代わりに北斗の瞳は潤んでいて、俺のカバンは握りしめた部分にシワがついていた
楽しくないっていうか、辛くなるが正しいかな
こんなこと誰にも言わないけどね
空は少し曇っているけれど北斗には綺麗に見えるみたい
不思議だよね、ほんと
ほんの一瞬だけ、
このまま落ちてふたりで死ねば幸せなんじゃないかとか思っちゃった
北斗を巻き込もうとしてる時点で最低だけど
どうやら北斗も同じこと考えてたみたい
ただ、俺は死にたいとかじゃなくて
楽になりたいだけ
普通に友達作って普通に勉強して普通になりたかった
普通に人と関わりたかった
普通ができないから、できるような人生にするためにリセットしたいだけ
そう言って北斗が差し出してきたのはワイヤレスイヤホンの右耳用だった
耳にはめると、音楽が流れ出した
最初は、『音色』
『グランドエスケープ』も『ヨルシカ』も『マスカラ』も
2人で歌った曲が次々と流れていく
歌いたい、ただそう思った
声が、出ない
だめだ、本当にだめなんだ
北斗も音楽できなくなっちゃったってこと?
最後に流れてきたのは、『ふたり』
出会ったきっかけも、うつ病の北斗を助けられたのもこの曲だったよね
この曲を歌いたい、北斗と
でもできない、
下を向いた拍子にいつも使っているマイクが屋上から落ちた
北斗のほうを向くと、
焦って下に降りて取りに行こうとしてる
北斗の楽譜も風に煽られて地面に落ちていた
取りに行かないと、そう思った
ーガシャン
フェンスに捕まって降りようとしたそのとき
いきなり樹に抱き寄せられてフェンスから転がり落ちる
北斗もこーちに降ろされてた
おれらの、音色
そうだよ
何死のうとしてんの、おれ
楽譜取る、マイク取るって口実作って死のうとしてただけじゃん
ばかだなぁ、ほんと笑
北斗が割れ物に触るように慎重に、そっと抱きしめてきた時
水風船が爆発したみたいに涙が溢れて止まらなくなった
ふたりで抱きしめあって散々泣いてると
最初は樹が
次はジェシーが
こーちが、慎太郎が
俺たちを抱きしめて温もりで満たしていく
俺って生きてるんだね、


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。