あまりにも自然な言い方で。
まるで、散歩にでも送り出すみたいに。
胸の奥が、きゅっと鳴る。
言いかけた言葉は。
やわらかく、遮られる。
シャルナークは、笑ってる。
いつもの顔。
でも、目の奥だけが静かだ。
冗談みたいに言う。
けれど、その声には迷いがない。
ほんの少しだけ肩をすくめて、
私の背中をぽん、と押す。
優しいのに、切実な力。
前へ、進ませるために。
振り返ったときには、もう私を見ていない。
視線は、まっすぐダイアへ。
甘さが消える。
空気が、変わる。
軽い口調。
遊びの延長みたいな声。
ダイアは、瞬きひとつしない。
温度のない声。
揺れのない忠誠。
即答。
間もなく。
あっさりと。
当然のことみたいに。
ダイアの目が、わずかに細くなる。
静かな確認。
シャルナークは、笑う。
その笑顔の奥に、鋭い光が宿る。
ダイアの声は、淡々としている。
シャルナークは、肩をすくめる。
夜の空気が軋む。
念が、じわりと広がっていく。
目に見えない圧が、肌を刺す。
私は一歩、後ろへ下がる。
二人の間には、入れない。
入ってはいけない。
そのとき。
シャルナークが、ほんの一瞬だけ振り向く。
声が、柔らかい。
戦う前の声じゃない。
笑う。
いつもの、何でもない顔で。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。