第89話

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2026/03/02 22:34 更新







 あまりにも自然な言い方で。 





 まるで、散歩にでも送り出すみたいに。 









シャルナーク.
 団長のとこ、行きたいんでしょ? 







 胸の奥が、きゅっと鳴る。 









あなた.
 でも__ 







 言いかけた言葉は。 









シャルナーク.
 オレに遠慮しないで 







 やわらかく、遮られる。 





 シャルナークは、笑ってる。 


 いつもの顔。 





 でも、目の奥だけが静かだ。 









シャルナーク.
 今ここで止めてもさ 
シャルナーク.
 たぶんあなた、 
 オレのこと一生恨むよ? 







 冗談みたいに言う。 


 けれど、その声には迷いがない。 









シャルナーク.
 それは、ちょっと嫌だなぁ 







 ほんの少しだけ肩をすくめて、 
 私の背中をぽん、と押す。 


 優しいのに、切実な力。 





 前へ、進ませるために。 









シャルナーク.
 ダイアはオレが相手する 







 振り返ったときには、もう私を見ていない。 


 視線は、まっすぐダイアへ。 





 甘さが消える。 


 空気が、変わる。 









シャルナーク.
 第二ラウンドってことでいい? 







 軽い口調。 


 遊びの延長みたいな声。 





 ダイアは、瞬きひとつしない。 









ダイア.
 貴方が退けば済む話なんですけど 







 温度のない声。 


 揺れのない忠誠。 









シャルナーク.
 退かないよ 







 即答。 


 間もなく。 









シャルナーク.
 あなたは 
 オレの優先順位、一番だから 







 あっさりと。 


 当然のことみたいに。 





 ダイアの目が、わずかに細くなる。 









ダイア.
 団長よりもですか? 







 静かな確認。 









シャルナーク.
 オレにとってはね 







 シャルナークは、笑う。 


 その笑顔の奥に、鋭い光が宿る。 









ダイア.
 貴方は感情で動く 







 ダイアの声は、淡々としている。 









ダイア.
 私は、団長のために動ける 
シャルナーク.
 うん、知ってる 







 シャルナークは、肩をすくめる。 









シャルナーク.
 だから厄介なんだよ 







 夜の空気が軋む。 





 念が、じわりと広がっていく。 


 目に見えない圧が、肌を刺す。 





 私は一歩、後ろへ下がる。 





 二人の間には、入れない。 


 入ってはいけない。 





 そのとき。 


 シャルナークが、ほんの一瞬だけ振り向く。 









シャルナーク.
 あなた 







 声が、柔らかい。 


 戦う前の声じゃない。 









シャルナーク.
 ちゃんと会ってきな 







 笑う。 


 いつもの、何でもない顔で。 









シャルナーク.
 オレ、負けないから 



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