海に着き、堤防の上に座り、海側に足をぶらっと降ろす
歩いているうちにもイライラは止まらなかったが、やっと物に当たらずには居られそうだ
夏なためセミがミンミンと鳴き、どこか蒸し暑い。
だが夜なため、ある程度良い気温にはなっているし、潮風が当たって気持ち良い。
スマホで兄がオススメしてくれた曲を選択し、イヤホンを耳に突っ込む
その後はただただ、ユラユラと揺らぎ月を反射させている海面を見つめていた
湊だったらあの後、私に泣きすがりながら謝罪をしてきてくれた事だろう。
いや、そもそも湊はあんな心無いことを私に言わなかったはずだ。
それどころかなんなんだあいつは。
刀也、とお父さんは言ってたっけ?
心無いことばっか言って。本当にムカつく
親も心配するだろうしね。
あぁそうだ。湊ならそう言ってニヤッとあどけるように笑い、笑い話にしてくれたに違いない。
きっとそうだ。
きっと。
眠っている娘を複雑な表情で母親は見ていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!