ー アーシェ視点 ー
最近、目線が痛い。
僕とは目を合わせないけど僕の、後ろ姿を見てヒソヒソ話してくる女子が増えてきた。
それだけだったらいいのに、授業中でも目線や声が絶えない。
集中したくても出来ないから心底悩んだ。
いや逆になんで僕がこんな目に?
パンジーやマルフォイならまだ分かるけど僕との差ありすぎない?
パンジーとの間にはとても亀裂が入っていた。
話しかけようとしてもシカトされて、同じ寮の同学年の女子からも避けられている。
でも仕方ないんだ、こんな運命だと初めから予想出来ていて、それでもいいと言ったのは僕だから。
いつの間にか僕は廊下をフラフラと歩いていた。
窓から見える光景はとても静か。
うっかりそのことを忘れていた。
ろくに授業にも出ていないから先輩たちからの視線が集まるのも近いだろう。
急に体がふらつく。
無理もない、ココ最近ろくに眠れていない。
分霊箱をハリーたちよりも早く回収して手元に収めないといけないからだ。
あの人の期待に応えるのと、僕の計画を成し遂げるための大事なもの。
でもいっその事、全てハリーたちに壊してもらえれば僕の仕事も楽になるのかな。
僕はふと、ひとつの窓の、前で立ち止まった。
ーマルフォイ視点ー
あの日から何日かたったが、パンジーの完璧?なガードでアーシェに話しかけられないままでいた。
休憩時間話しかけに行こうとしたら腕を掴んでそれを阻止してくる。
「おはよう」の挨拶さえもパンジーは許さなくなった。
手紙を書いて送っても一向に返事は来ない。
日に日に目の下のクマが酷くなるアーシェを、僕は見続けるしか無かった。
僕はそう言ってパンジーを振りほどいて一目散に走った。
アーシェの居場所なんて分からない。
でも今はパンジーを撒くことが大事だ。
後ろからパンジーの声が聞こえた。
本当にパンジーを愛しているならば、僕は立ち止まっていただろう。
パンジーには申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら振り向かずに走った。
人気の少ない廊下で、肩で息をしながら落ち着かせた。
おってくる足音はわずかだが聞こえてくるがここには来ないだろう。
そう思いながらふと窓の方に目が入った。
そこには見慣れた後ろ姿の人物が今にも窓から飛び降りそうになっていた。
すんでのところでアーシェの飛び降りを阻止することができた。
足を滑らせて背中を打ってしまったけど心臓がバクバクと脈打ってそれどころではない。
心配のせいか怒りが込み上がる。
体を揺さぶってそうアーシェに言っても、アーシェはびくともしない。
自分自身でも何が起こっているのかわかっていないようだった。
次の言葉が出ようとした途端、アーシェの顔が目に入り、久しぶりに正面で見た。
本当に何をしたかったのかわからないという表情をしており、混乱気味の顔をしていた。
ゆっくりと立ち上がるアーシェを僕は引き留めた。
パンジーを振り切ってまで会えたんだ。
ここで言わないでいついうんだ。
きっともう言えるチャンスはない。そう思ってダメもとで言ってみた。
そういう顔は笑顔だがどこか引き攣っている。
あの時の笑顔がまるで嘘かのようだ。
そう言って僕は無理矢理アーシェを連れて次の授業へと向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。